国際情勢

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

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軍事ジャーナル【12月1日号】北朝鮮の恫喝は誰に?

2019/12/01

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 北朝鮮外務省が安倍総理を名指しして「安倍は本物の弾道ミサイルが何なのか遠からず、極めて間近で見ることもあり得る」との談話を発表した。これを日本に対する恫喝と見るのは、軍事の素人と言うべきだろう。
 「兵は詭道なり」とは孫子の兵法の言葉だが、要するに軍事の8割は情報戦争であり、つまり騙し合いなのだ。だから、この談話が安倍総理を名指ししたということは、安倍総理以外の誰かに向けられたメッセージと取るのが軍事の常識である。
 米朝交渉の行き詰まりから、トランプに向けられたものとも取れるが、それにしては恫喝の度合いが激しすぎる。この談話には、北朝鮮の切迫感、焦燥感が滲み出ている。北朝鮮に今、切迫している事態とは何であろうか?

 談話が出たのは11月30日だが丁度2年前の2017年11月29日に北朝鮮はICBMと見られる火星15号を発射して世界中を驚かせた。そして、その年の12月22日に、国連安保理は対北制裁決議を、中露を含む全会一致で可決した。
 この決議の中に、「国外で働く北朝鮮労働者を2年以内に送還せよ」との趣旨の条文がある。国外で働く北朝鮮の労働者は、約10万人、年間数百億円の外貨を北朝鮮に送金していると見られる。
 この外貨が北朝鮮の核兵器開発の資金源と見られることから、資金源を断つ狙いだが、この出稼ぎが最も多く働いているのが中国である。今でも遼寧省などの工場では北朝鮮の労働者が集団で働いており、朝鮮料理店では美女たちが舞踊を披露して外貨獲得に貢献している。

 つまり、決議では2年以内に送還しなければならないのに、中国では送還している様子が見られない。だが中国政府は決議を履行するとしているから、今年の12月22日までに、彼らを送還しなければならないのである。
 北朝鮮の切迫した事情とは、まさにこれであり、この恫喝は中国の習近平主席に向けられたものに他ならない。北朝鮮としては無理難題を突き付けているつもりはないだろう。中国が見て見ぬ振りをして、何もしなければいいのである。

 6月20日に習近平が中国主席としては14年ぶりに訪朝したが、おそらく、この時、金正恩委員長は送還を見合わせるように申し入れたであろう。7月の下旬から北朝鮮は頻繁に短距離弾を日本海に撃ち込んでいる。
 米国に届かない短距離弾をトランプは黙認しているが、これ以上、射程の長いミサイルを発射させないように中国に圧力を掛けるから、北の発射は米国を通じて中国に対する圧力となる。

 おかげで中国は、北朝鮮労働者の摘発、送還が出来なくなり、遂に期限の12月を目前にして、決議通り送還を実現すると表明したところで、北は2発、日本海に発射して、あたかも日本向けのメッセージであるかの様に装って、より射程の長いミサイルの発射を示唆した。
 今後の焦点は、中国が果たして国連決議通りに北朝鮮労働者を送還できるかである。できなければ香港問題、ウィグル問題、台湾問題に加えてあらたな国際非難を背負い込むことになろう。

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創刊日:2011-06-24  
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