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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

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軍事ジャーナル【2月3日号】秘めたる空戦

2018/02/03

 先週、米国に出張の予定だったが、インフルエンザを発症し海外渡航どころか外出も禁止となった。初期対処が幸いしたのか症状は軽く、暖かい部屋で寝込むこともなく、厚着をして安楽椅子に腰掛けて、東京では珍しい雪景色を眺めながら読書三昧の数日を楽しんだ。
 本棚から取り出したのは10年以上も前に購入しながら、手付かずに放って置いた光人社NF文庫の「秘めたる空戦」。第2次世界大戦期の航空戦記である。そして1ページを捲るや75年前の南太平洋における大空の戦いがシネマ・スクリーンに投影されるが如く冬の東京の一室によみがえった。

 日本の陸軍三式戦闘機「飛燕」のパイロットだった松本良男が同郷出身で海軍の戦闘機パイロットであった幾瀬勝彬に、戦後数十年を経て書き送った手記を幾瀬がまとめて出版したものである。
 松本と幾瀬は大正十年(1921)生まれで札幌の中学校の同期である。ともに東京の大学に進学した後、それぞれ陸軍、海軍に入隊し戦闘機パイロットになっている。当時戦闘機パイロットは年少から教育された方が、飛行感覚が容易に身に付くと言われていた。

 これは現在でも同様で、航空自衛隊では高校卒業で入隊する航空学生に比べて大学卒業後、入隊してパイロットになる飛行要員は飛行感覚を習得するのに苦労する。ちなみに私もその一人だった。
 松本にせよ幾瀬にせよ、飛行感覚を苦労して身に付けたに違いなく、飛行感覚の習得の難しさが本書でも語られている。実は航空戦の勝敗はこの感覚の優劣で決まる。これは無人機の時代である現代の空軍でも同様で、無人機を地上から操縦するパイロットは飛行感覚を掴めないために多大なストレスを感ずるという。
 二人は大学に進学しているが、当時の進学率は5%程度であり、50%を超える現代では想像できないだろうが、エリートであり豊かな教養を身に付けていたに違いない。その為、本書の記述はバランス感覚に満ち視野の広がりを感じさせる。文学的秀作と言っていいだろう。

 陸軍三式戦闘機「飛燕」は高性能を誇る名戦闘機であるが、メカニズムが複雑で製造や整備に困難を極めた。飛燕が配備され始めた昭和十八年(1943)は日本有利から米国有利へと戦局が転換する時期であり、この飛行機の転戦の記録は大東亜戦争の戦局の推移を端的に描き出している。名著である。
https://www.amazon.co.jp/秘めたる空戦―三式戦「飛燕」の死闘-光人社NF文庫-松本-良男/dp/4769821360

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創刊日:2011-06-24  
最終発行日:  
発行周期:不定期(原則:週1回)  
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  • 名無しさん2018/02/03

     陸軍三式戦闘機「飛燕」は高性能を誇る名戦闘機であるが、メカニズムが複雑で製造や整備に困難を極めた。飛燕が配備され始めた昭和十八年(1943)は日本有利から米国有利へと戦局が転換する時期であり、この飛行機の転戦の記録は大東亜戦争の戦局の推移を端的に描き出している。名著である。

    https://www.amazon.co.jp/秘めたる空戦―三式戦「飛燕」の死闘-光人社NF文庫-松本-良男/dp/4769821360←鍛冶先生、名著のご紹介ありがとうございます。それと、先生のイラスト図解 戦闘機、愛読書の一つであります。