国際情勢

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

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軍事ジャーナル【11月16日号】在韓米軍撤退のシナリオ

2017/11/16

 言うまでもなく、現在米国でトランプ政権を揺るがしているロシアンゲート事件とは、1970年代のウォータゲート事件に因んだ命名だが、米国内外の政治状況も当時に酷似するのには驚く他はない。

 1960年代、米国の民主党ジョンソン政権は南ベトナムを北ベトナム共産主義政権の脅威から守るため、50万人もの米兵を南ベトナムに駐留させ、侵入してくる北ベトナム軍と戦闘させていた。
 いわゆるベトナム戦争であるが、米兵の戦死者は5万人を数え米国内では反戦運動が渦巻いた。1968年、ベトナム戦争の終結を公約に大統領に選出された共和党のニクソンは、北ベトナムを支援する中国と交渉した。
 更に北ベトナムから「南ベトナムを侵略しない」との確約を取り付けて、米軍を南ベトナムから全面撤退させた。もし北ベトナムが侵略を再開すれば「米軍は南ベトナムに再び派遣される」という約束で南ベトナムも納得したのである。

 だが、そのニクソンはウォータゲート事件という国内政治スキャンダルで辞任に追い込まれ、その政治的混乱を狙ったかのように北ベトナム軍は南ベトナムに侵攻した。中国は北ベトナムを支援し一方、米国は大統領交代の政治的空白で米軍を派遣できなかった。
 かくして南ベトナムは北ベトナムに武力併合された訳だが、南ベトナムから脱出した難民は90万人に及び東南アジアは大混乱に陥った。

 さて賢明なる読者は、当時と今の米国内外の政治状況が酷似している事にお気付きだろう。朝鮮半島はかつてのベトナムと同様に南北に分断され、南を米国が北を中国が支援している。米国は中国と交渉して北朝鮮の核開発を停止させようとしている。
 先月末、訪韓したマチス米国防長官に韓国の宋国防相は米韓両軍の戦時作戦統制権の韓国への移管を申し入れた。米軍が他国の作戦指揮下に入る事は考えられないから、これは事実上、米軍の韓国からの撤退を意味する。両国は来年、この事項を検討する事で合意した。
 要するに来年以降、在韓米軍は撤退する公算が高いのである。同時に来年の米国の中間選挙で共和党が敗北すれば、米議会でトランプ大統領が弾劾される事は確実である。

 つまりベトナム戦争の時と同様に、米軍が撤退し大統領が辞任に追い込まれ、米国に政治的空白が生じたときに中国の支援を受けた北朝鮮が何をするかは、火を見るよりも明らかであろう。

明日夜、チャンネル桜、新宿生中継、「金曜日は眠らナイト」に生出演する。
ご都合の宜しい方は是非おいで下さい。
http://www.ch-sakura.jp/1609.html

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  • 名無しさん2017/11/16

    更に北ベトナムから「南ベトナムを侵略しない」との確約を取り付けて、米軍を南ベトナムから全面撤退させた。もし北ベトナムが侵略を再開すれば「米軍は南ベトナムに再び派遣される」という約束で南ベトナムも納得したのである。



     だが、そのニクソンはウォータゲート事件という国内政治スキャンダルで辞任に追い込まれ、その政治的混乱を狙ったかのように北ベトナム軍は南ベトナムに侵攻した。中国は北ベトナムを支援し一方、米国は大統領交代の政治的空白で米軍を派遣できなかった。←ウォーターゲートのことは知っていますが、北ベトナムとの密約のことはしりませんでした。しかし、中国はいつもいつも、信用できない国だということがよくわかりました。情報ありがとうございます。