国際情勢

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

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軍事ジャーナル【6月15日号】フランスに新潮流

2017/06/15

 日曜日にフランスの下院選挙の第1回投票が行われ、マクロン大統領の新党である共和国前進が32%を得票し、18日の第2回投票で過半数の議席を獲得するのは確実な情勢である。
 共和国前進は、5月の大統領選に立候補したマクロンが選挙の4月に立ち上げた新党であり、3か月前には影も形もなかった。それがいきなり下院を制して政権与党になる。しかもこの政党は従来の保守派や左翼から幅広く人材を集めており、今までの左右の対立概念を超越している。
 人によっては、日本の民主党政権を思い浮かべるかも知れない。確かに日本の民主党にも保守もいれば左翼もいて、それまでの保革対決の構図から脱したかのような清新なイメージを一時的に振り撒いていた。
 それが旧態依然たる9条護憲主義をさらけ出して崩壊してしまったのは記憶に新しい。フランスのこの新党も同じ轍を踏むのではないか?そんな疑念を抱く向きもあろう。だが心配ご無用。フランスに9条護憲主義者はいない。

 トランプのアメリカ第1主義が批判されているが、フランスでは保守も左翼もフランス第1主義で、フランスの国威発揚を誰も否定しない。軍事、外交においては基本的に一致しているのである。
 さてそのマクロン新大統領だが、5月25日のNATO首脳会議のベルギーでトランプと初会談。そのときトランプがマクロンの手を握ってなかなか放そうとしなかったのが話題となったが、トランプ政権も米国における従来の共和、民主の枠外の第3の勢力の支持で成立している。第3勢力による新潮流のマクロンに共感したのは頷けよう。
 マクロンは翌26日に、G7サミットの開かれたイタリア、シチリー島で安倍総理とも会談しているが、彼の外交戦略が垣間見えたのは、29日にベルサイユ宮殿でのロシアのプーチン大統領との会談であろう。

 ここでウクライナとシリアを巡る問題について意見交換したが、両地域とも仏露が歴史的に深く関わっている。例えばウクライナのクリミア半島はクリミア戦争で1855年、英仏連合軍が占領している。
 クリミア戦争はロシアの敗北で終わったが、英仏は講和条約を締結して、クリミア半島をロシアに返還している。つまり元々ロシア領であることを認めていた。現在、ロシアがウクライナからクリミアを奪ったことが問題となっているが、この経緯を見れば、フランスはロシアのクリミア併合を認める可能性がある訳である。
 シリアは20世紀前半フランスの植民地であり、冷戦終了後、フランスはアサド政権を認めているばかりか中東和平の手段として積極的に活用していた。つまりウクライナとシリアは欧露の対立軸をなすが、仏露間では妥協の余地が十分にある。

 歴史的に見れば、仏露は幾度も同盟関係にあった。必ずドイツが台頭している時期であり、ドイツの脅威に対抗するため、仏露でドイツの東西両面を挟み撃ちにする地政学的戦略に基づいている。
 現在、EU内でドイツの一人勝ちの状況を打開するために、マクロンが仏露接近を画策しているとも言えよう。またこの戦略はロシアとの連携を模索するトランプ政権にとっても追い風になる訳で、トランプがマクロンの手を握って放さないというのも、単なるパーフォンマンスではない。
 マスコミはトランプ政権の出現を従来通りの左右対立の枠でしか捉えて来なかった。だからフランスで右でも左でもない政権が成立すると、どう報じていいのか分からなくなるのだ。
 真相は右でも左でもない第3の潮流が米国に出現し、それが欧州にも出現したと言う事である。

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創刊日:2011-06-24  
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  • とはちぇふすきい2017/06/15

    今からミストラルをロシアに売るわけにもいかないでしょう。

    ドイツを睨んで仏露協商復活!第1次大戦前に逆戻り?

  • 名無しさん2017/06/15

    情報ありがとうございます!次期大統領選挙では、ルペンさんにがんばってもらいたいです。