国際情勢

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

航空自衛隊出身の軍事ジャーナリストが内外の軍事情勢を多角的に分析する。メルマ!ガ オブ ザイヤー2011受賞

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軍事ジャーナル【4月5日号】ファイナル・カウント・ダウン

2017/04/05

 本日、北朝鮮が弾道弾1発を日本海に発射した。明日から始まる米中首脳会談を牽制したとの見方がもっぱらだが、果たしてそうか?
 今回発射されたのは、北極星2号とかKN-15とか様々に呼ばれているが、要するに中国製の弾道弾である。中国製の弾道弾には暗証チップが組み込まれており、暗証コードがなければ発射出来ない。
 つまり北朝鮮は中国の許可のもとで発射した訳だ。もっと言えば中国が北朝鮮に撃たせたとも言える。「北朝鮮が米中首脳会談を牽制した」との見方と大きく異なる構図が、かくして明らかになる。では何故、中国は北朝鮮に撃たせたのか?

 トランプ大統領は二日付の英紙のインタビュー記事で「中国は北朝鮮問題で我々を助けるのかどうか決めなくてはならない」と発言した。6日の習近平との会談を前に先制のジャブを繰り出した訳だが、中国側は沈黙してしまった。
 それはそうだろう。3月中旬、ティラーソン国務長官は訪中に際して「北朝鮮に対して武力攻撃を含むあらゆる選択肢を検討する」旨、表明していたのである。トランプが中国に求めているのは、対北武力攻撃への協力であるのは明らかだ。
 中国としては、会談前に公然と持ち出された要求に、答えようもなかったが、これに苛立ったのが北朝鮮であることは言うまでもない。何しろ、「会談で中国が米国の武力攻撃に協力すると約束する」可能性を中国が否定しないのだ。

 この苛立つ金正恩を宥める窮余の一策が今回の発射だ。中国が北朝鮮に発射を許可することは、北朝鮮にとって「中国は米国に協力しない」という意志表示に他ならない。
 「北朝鮮の暴走を中国は止められる筈」としてきた米国に対しては、「中国にその能力がない」事を暗に示したことになる。まさに窮余の一策ながら、一石二鳥の効果を狙ったものと言えよう。
 
 だが狙いが達成されたかどうかは予断を許さない。英紙とのインタビューで、トランプは「中国が協力しない場合は、米国が単独で行動する」とも言っている。1950年代の朝鮮戦争のとき、中国は北朝鮮側に立って参戦して、介入した。米国が攻撃した場合に中国が介入するかどうかは、この会談で主要な議題となろう。
 もし、中国が介入しないと約束した場合、北朝鮮に残された時間は限られたものになる。5月9日の韓国大統領選で、左翼が選出される公算は極めて高く、そうなれば在韓米軍の行動は不可能になる。つまり米国は5月9日までに行動を開始することになろう。

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創刊日:2011-06-24  
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発行周期:不定期(原則:週1回)  
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  • 三郎2017/04/05

    瞠目すべき分析に、いつも敬服しております。

  • 名無しさん2017/04/05

    5月9日の韓国大統領選で、左翼が選出される公算は極めて高く、そうなれば在韓米軍の行動は不可能になる。つまり米国は5月9日までに行動を開始することになろう。←きわめて重要な情報、ありがとうございます。産経新聞でさえ、Xデイについての記載はないですね。鍛冶先生、本当に感謝です。