国際情勢

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

航空自衛隊出身の軍事ジャーナリストが内外の軍事情勢を多角的に分析する。メルマ!ガ オブ ザイヤー2011受賞

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軍事ジャーナル【2月14日号】トランプの失敗

2017/02/14

 フロリダの大邸宅での豪華な夕食会の最中、秘書が日本の総理に何事かを告げ、側近たちが慌ただしく日米首脳に書類を示し、やがて両首脳は席を立って記者会見に臨んだ。まるで映画の一場面かとも思われる情景が現出した。
 パーティの会場で機密を話したのは危機管理上、問題だとする批判が米政界に出たが、それほど事態が切迫していたということであろう。まさに2日間に渡る日米首脳会談は劇的な幕切れを迎えたのである。
 記者会見でトランプ大統領の表情が冴えなかったのにお気づきの方も多かっただろうが、彼は内心何を思っていたのか?「会談は失敗だった。」そう思っていたに違いない。ただしその「会談」とは日米首脳会談ではない。3日前に行われた米中電話会談である。

 9日にトランプ大統領は中国の習近平主席と電話で会談し、中国の「一つの中国」の原則を尊重すると明言した。その見返りとして中国は北朝鮮の弾道弾開発を抑え込むと約束したことは間違いない。
 だがその約束は3日と持たなかった。安倍総理との10日のホワイトハウスの会談でも、中国を含む日米韓中4か国で北朝鮮を抑え込めると確言していただけに、トランプ大統領は赤っ恥を掻かされた訳である。表情が冴えないのも宜なるかな。
 ただし、習近平が約束をしながら何もしなかったとは考えられない。おそらく電話会談の翌日、すなわち10日、安倍総理とトランプ大統領が最初の共同記者会見を終えて夫人らと共にエアフォースワンに乗ってフロリダに向かっている頃、金正恩に連絡をしただろう。
 米国時間で11日に北朝鮮が発射した「北極星2号」は新型の中距離弾道弾とされているが、要するにムスダン改良型である。ムスダンもその改良型も中国製であるから、習近平は金正恩に中国に返却するように迫ったに違いない。もともと無償供与で代金を払っていないのである。

 これにブチ切れた金正恩が弾道弾を発射させたと見るのが正解だろう。北朝鮮北西部から発射された弾道弾は朝鮮半島を跨いで東に500km飛んで日本海に落下したが、日本の領海を侵してはいない。
 だが発射地点から半径500kmをコンパスで地図に記入してみよ。東側の大部分は中国領である。しかも南西500kmにあるのが青島であり、そこには中国が初めて保有した空母、そして現在保有する唯一の空母「遼寧」が停泊している!

 中国が発射後1日間、沈黙を保ったのもこれで頷けよう。返却要求をこの間に取り下げ、13日に声明で「米朝の対話を促す」とあっさり米中電話合意を反故にした。金正恩に怯えた習近平がトランプとの約束を破り、騙されたトランプは安倍総理に擦り寄る。
 米メディアの中には安倍総理をおべっか使いとする者もいるらしいが、現実は左に非ず。トランプ大統領は安倍総理の外交指南を受け入れることになろう。

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創刊日:2011-06-24  
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  • izumo2017/02/15

    中国にとって今の仮想敵国の順位は米国、その次が北朝鮮。

    2番目に日本やロシア、インドが来ていない現実を如実に現していますね。



    トランプ大統領はオバマ前大統領がやった轍を踏んでしまったようです。

    北朝鮮の暴走は中国には止めることができない。

    これを事実として受け止めるしかないようです。

  • 鍛冶2017/02/14

    訂正:東側→西側

  • 名無しさん2017/02/14

    中国が発射後1日間、沈黙を保ったのもこれで頷けよう。返却要求をこの間に取り下げ、13日に声明で「米朝の対話を促す」とあっさり米中電話合意を反故にした。金正恩に怯えた習近平がトランプとの約束を破り、騙されたトランプは安倍総理に擦り寄る。←鍛治先生、この分析ははじめてききます。ありがとうございます。さすが、鍛治先生です!