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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

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軍事ジャーナル【2月3日号】狂犬マチスの哲学書

2017/02/03

 米国の新国防長官マチスが来日したが、その成果については後日分析する。彼を紹介する記事の中で面白く思ったのは、彼の愛読書だ。「自省録」とある。マルクス・アウレリウス著の自省録は岩波文庫に入っており、実は小生も学生時代に愛読していた。
 マルクス・アウレリウスは古代ローマ帝国の皇帝であり、優れた軍人であると共にギリシャ哲学に精通した哲学者でもあった。ローマ帝国は西暦120年頃、最大の版図を誇り繁栄の頂点を迎えたが、彼が即位した161年頃には戦乱が頻発するようになり、皇帝自ら戦地に兵を率いて戦わなければならなかった。そんな陣中にあって思いを綴ったのが本書である。
 ただし戦争の話は殆どなく、人間の生き方などへの考察や倫理思想などが随筆風に記されている。小生も西洋哲学への目を見開かれたのは本書であったが、禁欲的な姿勢と諦念的な人生観は日本の末世思想とも通ずるものがある。

 マチスは米海兵隊の指揮官として本書を片手に世界各地を転戦したというから、斜陽のアメリカ帝国をかつてのローマ皇帝と同じ思いで見ているに違いない。彼は狂犬とのあだ名の他に「戦う修道士」とも呼ばれているのも頷けよう。
 軍事と哲学とは、如何にも不調和と思われる方もいようが、日本ではともかく西洋では寧ろ調和的だ。そもそも世界最初の哲学者ソクラテスはペロポネソス戦争に兵隊として従軍して、幾度も軍功を立てている。
 退役後、少年たちに哲学を説き、その言説が少年たちを惑わせると告発されて処刑されたのだが、そもそも少年たちがソクラテスの言葉に耳を傾けたのは、彼が歴戦の勇士であったからだ。口先だけの老人の話など今も昔も、誰も聞きはしない。

 哲学にとって人生の究極にある死は主要な関心事であり、軍人は死の恐怖に直面するから、哲学と軍事は死という一点で強く結ばれていると見ることも出来よう。近代哲学の祖と言われるデカルトもフランスの軍人であった。
 米国のマスメディアのトランプ叩きもイランの弾道弾発射を受けて下火になった。トランプ政権の矢継ぎ早の政策が米国の防衛にとって急務であることを米国民は認めているのである。
 斜陽の帝国アメリカをどう立て直すか?日本もアメリカ帝国の版図にある以上、この問いは避けては通れないのである。

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創刊日:2011-06-24  
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  • 名無しさん2017/02/03

    米国のマティス国防長官が比類の読書家(7000冊とか)であることは新聞情報でしりましたが、なんと、愛読書がマルクス・アウレリウス著の自省録であることはしりませんでした。情報ありがとうございます。

  • 名無しさん2017/02/03

    相変わらずいいね!