国際情勢

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

航空自衛隊出身の軍事ジャーナリストが内外の軍事情勢を多角的に分析する。メルマ!ガ オブ ザイヤー2011受賞

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軍事ジャーナル【1月4日号】台湾と北朝鮮

2017/01/04

 新年早々、トルコでテロがあり中近東は相変わらずの紛争状態だが、その1月1日、北朝鮮の金正恩が出した声明こそ今後4年間のトランプ外交を占う上で重要な予兆である。金正恩は米本土に到達するミサイル(ICBM)の試射準備が最終段階に達したと述べたのだ。
 実際に米本土を核攻撃できるだけの能力を北朝鮮が有しているかどうかは怪しいものだが、北朝鮮周辺を核攻撃できるのは確かで、そこには在韓米軍も在日米軍もいる。つまり米軍が北朝鮮の核の脅威に晒されているのは間違いのない事実である。
 トランプは、北朝鮮を抑制すべき中国が役割を果たしていないとして中国を非難しているが、その中国自身が北朝鮮の核の脅威に晒されており、北京が北の核の射程内に入った以上、今後、対北支援を増やしこそすれ、減らすことなど出来はしない。現に豆満江に新たな橋が建設されつつある。

 米国の当面の対応策は、韓国に迎撃ミサイルTHAADを導入させ、ミサイル防衛を強化することだが、THAADの配備は早くても今年7月であり、それまでに朴槿恵が大統領を辞任し、左翼の大統領が選出されれば、配備は中止になるだろう。
 そうなれば米国の対応策は極めて限られてくる。かつて米国はICBMを保有した中国を突然承認した。1970年代の事で、いわゆるニクソンショックとして、日本を含め世界中に衝撃が走った。
 当時の中国は、今の北朝鮮と同様孤立した貧乏国で米国と対立していたから、誰もこれを予測できなかったのである。だが当時の米国共和党の大統領のニクソンは、冷徹な現実主義者であり、米国の国益を最優先に考えての戦略的判断だった。
 その伝で行けば、米国は北朝鮮を承認するしかない訳である。もちろん、これは世界に衝撃を与える政策である。しかし、日本にとっても世界にとっても必ずしも悪い事ばかりではない。

 例えば台湾問題だ。ニクソンが中国を承認したのは、ソ連を牽制するためであった。もしトランプが、米国が北朝鮮を承認するとすれば、中国を牽制するという目的になる。南シナ海と東シナ海における中国の海洋進出を牽制し、同時に中国の韓国接近を牽制しなければならない。
 これを実現するためには、中国海空軍を南シナ海、東シナ海、そして黄海に封じ込める体制を整えなければならない。いわゆる海峡封鎖であるが、これらの海域の中で最も封鎖が困難なのがバシー海峡と宮古海峡である。ともに海峡幅が極めて広いのである。
 そしてこの二つの海峡に挟まれているのが台湾である。つまり両海峡を封鎖するためには台湾の協力が不可欠である。ならばトランプは台湾を承認するだろう。おそらく中国はこの事態に既に気付いていよう。年末、空母遼寧が両海峡を通過して見せたのはその証左である。
 もう一つ、日本にとっていい事とは、拉致問題である。米国の北朝鮮承認は当然、拉致されている米国人の解放が前提となり、同時に日本、韓国その他の拉致被害者の解放につながるだろう。

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創刊日:2011-06-24  
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  • 慎太郎2017/01/06

    拉致問題解決は結構なことだが、日朝国交樹立になるのは如何なものか?

  • 名無しさん2017/01/04

    米国の北朝鮮承認は当然、拉致されている米国人の解放が前提となり、同時に日本、韓国その他の拉致被害者の解放につながるだろう。←鍛冶先生、すごい分析です。拍手です。