国際情勢

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

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軍事ジャーナル【12月19日号】モランボン楽団

2015/12/19

 北朝鮮の美女集団「モランボン楽団」が中国での公演を直前になって突然中止し、帰国してしまった。10日に「金正恩第一書記が「水素爆弾を保有した」と発言した」旨、報ぜられ、これに対して中国が不快感を表明したため、公演中止となったと言うのが、マスコミの解説である。
 水素爆弾は核爆弾の中では最大の破壊力を有するから、もし北朝鮮がそれを保有したら、国際的に大問題となる筈であり、中国が不快感を表明するぐらいで済む話ではない。つまり国際社会は中国を含めて金正恩の発言を全く信用していないのだ。
 これで、もし本当に金正恩が怒って楽団を引き上げたとすれば、ウソがばれて逆切れしているオオカミ少年ということになる。芸能ネタとしては面白いが、国際情勢の分析としては甘すぎるだろう。
 そもそも北朝鮮がモランボン楽団を中国に送ったのは、関係改善のためだ。この国が関係改善を企むときは、相手がどの国であれ目的は常に一つしかない。経済支援である。要するに金が欲しいのだ。金正恩は美女たちを中国に送り、金を要求して断られたので引き上げたのだ。

 中国は貿易統計上、北朝鮮に原油を輸出していないことになっているが、実際には供給しており、しかも無償である。つまり中朝関係が最悪といわれる時期にあっても、中国は北朝鮮を支援しており、それは今も続いている。
 10月10日の北朝鮮の軍事パレードに中国高官が参列し、中朝関係は俄かに改善の兆しが見えた。関係改善であるから、北朝鮮は中国に支援の上乗せを要求したであろうし、中国もそれを承知の上で関係改善に乗り出した筈である。
 その流れでモランボン中国公演が決まった訳だ。ならば中国がここに来て追加支援を拒否した理由は、当初の予想を上回る法外な金額を要求されたとしか考えようがない。では何故、北朝鮮はこの時期に法外な要求を中国にしたのか?

 北朝鮮は5月に、潜水艦から発射する弾道ミサイルいわゆるSLBMの実験に成功したと写真付きで発表した。この写真は合成で、従って実験は失敗だったことになるが、北朝鮮がSLBMの開発をしている事実が明らかになった。
 11月28日に韓国メディアが「同日、北がSLBMの実験を行ったが失敗した」と報じた。これを受けて12月8日に、米国は北朝鮮に対する金融制裁を発表した。10日の水爆発言は、これに対する反発であろう。
 だが同時期に米国のニュースサイトが「人工衛星の写真の解析の結果、11月28日の実験失敗で潜水艦に深刻な被害があったことが明らかになった」旨、報道した。早い話が潜水艦ごと爆発したのだ。

 おそらく金正恩は開発を継続するため、潜水艦1隻を購入できる代金を中国に要求したのだろう。日本円にして1000億円ぐらいであろうか。あるいは中国が開発している最新鋭の潜水艦を現物支給するように求めたのかも知れない。
 いずれにしても中国が断った事だけは、はっきりしている。美女の公演だけでは高過ぎると判断したのであろう。

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創刊日:2011-06-24  
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  • 名無しさん2015/12/21

    現場のトラブルが原因だったという様な解説がありますが、取って付けたよう説明で納得できません。やはり先生がおっしゃるような本質的な対立が背景にあったのだと思います。

  • たてもの2015/12/21

    本当にすごい情報ですね。

  • 名無しさん2015/12/20

    相変わらずキナ臭いですね、とても興味深く拝見しました。有難う御座います(´・(ェ)・`)

  • 名無しさん2015/12/20

    有難うございます。阿部春子

  • 名無しさん2015/12/20

    米国には中共がビクビクしながら盾突き、中共には北朝鮮が甘噛みしながら盾突くだが、我が国が盾突くときはお互いガチンコである。自衛隊員を弄んでは行けない、それで政治解決せざるを得ずとするなら、政治家も命を自ら断つことを覚悟すべし。

  • 名無しさん2015/12/19

    早い話が潜水艦ごと爆発したのだ。金正恩は開発を継続するため、潜水艦1隻を購入できる代金を中国に要求したのだろう。日本円にして1000億円ぐらいであろうか。あるいは中国が開発している最新鋭の潜水艦を現物支給するように求めたのかも知れない。

    ←すごい情報です。鍛治先生、眼が覚めました。