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「海つばめ」ダイジェスト

労働の解放をめざす労働者党機関紙「海つばめ」の掲載記事を紹介します。
政治・経済・社会問題について、マルクス主義の立場から分析、労働運動や社会主義革命への闘いを提起します。

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河野談話に立ち戻れ/『海つばめ』ダイジェスト1月13日号

2018/01/13

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河野談話に立ち戻れ
それこそ「最終的かつ不可逆的」解決
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 日米韓の3ヶ国の連携で『北』に――ひいては中国に――当たるという安倍政権の外交防衛政策の一つの根幹が揺らいでいる。もともと動揺しやすい連携であったが、『革新系の』文在寅大統領が就任したことにより、今や日韓の間で、従軍慰安婦問題(15年戦争当時、日本の天皇制軍部が植民地であった韓国の若い女性を日本軍隊の性奴隷として動員した問題)や、対北朝鮮問題で立場の違いが鮮明となり、表面化してきたからである。この2つの問題は別の問題に見えて、内的に深く関係している、というのは、対北朝鮮といっても、日本と韓国では根本的に違う契機を持っているからである。

 韓国と北朝鮮はそもそも同一の国民であり、またそれを自覚し、『南北統一』を望み、意識しているという点で、北朝鮮との関係で日本と本質的に異なっている。そして歴史的、『地勢的』関係からも、韓国もしくは朝鮮国民と中国との関係や意識もまた、日本のそれと同じではない。

 対北朝鮮に対して、トランプや安倍とは違って『宥和』路線や『話し合い』路線に必ずしも反対ではない文在寅は、北朝鮮の平昌冬季五輪参加問題をきっかけに北朝鮮との『対話路線』を進め、深めようとしているが、安倍政権は「五輪は平和の祭典だから、こうした変化を評価したい」と平静を装いつつも、心中は穏やかないどころか怒りで煮えくりかえっている。

 それは『慰安婦』問題で文在寅政権が、前朴槿恵政権が安倍政権と結んだ15年の「日韓合意」を事実上反古にし、棚上げしようとする意思を明らかにしたことに対する、強い反発にも現れている。

 安倍はすでにこの問題が浮上した昨年の夏、15年の「日韓合意は1ミリも動かさない」と強硬な発言を行い、これを受けて、河野外相――安倍から「発想力、突破力を持ってやれ」と鼓舞激励され、今や安倍の使い走り(パシリ小僧)にまで自らを卑しめた、『河野一族』の恥さらし、「親の心子知らずの」鬼っ子。この男は、父河野洋平の存在や、かつて「河野談話」で慰安婦募集の「強制性」を認めた父の業績を「負の遺産」と感じるような俗物である――も、「日韓合意は国と国との約束だ。政権が変わったとはいえ、責任を持って実施するのが国際的かつ普遍的な原則だ」と一歩も譲らない構えである。

 15年戦争中の朝鮮人もと徴用工問題――彼らもまた強制的に、あるいは半ば強制的に、あるいは事実上だまされて日本の企業や工場や鉱山に「労働力」として動員され、連れてこられたのだが――も再燃しているが、安倍政権はこの問題でも、1965年の日韓国交回復時の「日韓請求権協定」で「解決済み」として済まそうとしている。

 慰安婦問題や徴用工問題はずっとのちの1990年代ごろから明らかにされ、問題になってきた問題であり、1965年当時には全く考慮されていない、新しい『歴史認識』に関する係争問題である。

 1990年代、日韓のこうした新しい問題に対し、そうした動きに対する反発を動機ともテコともして登場し、結集した安倍一派は、国家主義や『日本ファースト主義』や国粋主義を振りまき、慰安婦や徴用工の事実を否定したが――歴史的事実を否定ることは誰にもできない――、まさにそうした厚顔無恥な動きや「歴史認識」が韓国側の激しい怒りや憎しみを生み出し、助長したし、せざるを得なかった。

 つまりこれらの問題に対する日本の態度への、韓国民の90年代以降の強い反発をもたらした責任は、あげて安倍一派に――したがってまた安倍政権にこそ――あると言って少しも言い過ぎではない。

 安倍や河野は盛んに、15年の合意には、「最終的かつ不可逆的に解決」と記されていると強調するが、この大げさな言葉は、空虚な15年合意に対してではなく、せめて1993年の「河野談話」に対してこそ用いられるべきである。

 誤解のないように言っておくが、我々は安倍や朴槿恵などの卑しい反動政治家はもちろん、文在寅や民主党=民進党(鳩山や菅や野田や、さらには枝野等々)などの『革新系の』政治家も全く信用しないのだから――志位らの独善的、ドグマ的、そしてデマゴーグ的『革新』については言うまでもない――、彼らの間で結ばれたようないかなる「合意」や約束ごとなども全く関係ないし、またそんなものを信用しない。

 河野談話は、発表当時から一貫して、日本においても韓国内でも、『革新』陣営の中でさえ高く評価され、少なくとも『慰安婦問題』――慰安婦とは、戦地の日本軍の性欲を満足させるために動員され、事実上性奴隷の地位に貶められた、当時日本の殖民地であり、自由な意思表示も言動も奪われていた韓国の若い女性たちに対して用いられる、ブルジョアたちの『お上品な』表現である――についての妥当な評価として承認され、両国のわだかまりを一掃する出発点になるべきものであった。

 そしてこの談話によって、『従軍慰安婦』問題が処理されてきたなら、現在日韓で対立し、争われているような問題の99%は存在しなかっただろうから、そして日韓両国民の――労働者・働く者ものについてはいうまでもないが――接近、相互的な信頼や友愛や、相互交通や交流等々は一層発展し、深化していただろうから、現在のような『従軍慰安婦』問題で相互に約束を破ったとか、破らないとか、インチキ「合意」は有効だとかそうでないとかで対立し、争い、政府などが先頭に立って感情的な口論をもっぱらにし、国民をお互いに嫌悪するように差し向けるような状態――それこそが安倍政権の狙いなのだろうが――を招いている責任は、基本的に安倍とその政権にこそある。

 安倍政権も、河野談話を「継承する」と国会で発言し、誓ったではないか、と誰か言うのか。

 それは本当のことであろうか。我々は河野談話に対して、安倍政権とそれを支える安倍一派のとってきた態度について検証して見る必要がある。幸い、手元に安倍が「河野談話を継承する」と国家で発言したときの新聞記事がある。14年10月4日の朝日新聞の短い記事である。

 当時、安倍は河野談話と、その後の発言を切り離し、「河野談話プラス、その時の河野長官の記者会見における発言により、強制連行というイメージが世界に流布された」、河野談話はそれ自体いいが、しかしその後の記者会見では慰安婦の動員には公的な強制力が働いたかに言っているなどと言いはやし、口先では河野談話は「継承する」といいつつ、全体として河野談話を認めることはできないかの『巧妙な』すり替えとごまかしのへ理屈を述べている。

 そしてこんな幼稚な観念がこの数年間、安倍と安倍政権が立ってきた、慰安婦問題に対する立場であったが、韓国国民から見れば偽善と欺瞞そのものの態度でしかなかったのである。

 しかし日本の軍隊が韓国の国内で――他の女性らを遠く戦地にまで連行したり、戦地で性奉仕を強要する場所に閉じ込めた段階では、日本軍の関与は自明だが――、若い女性をかり集める段階では、日本の軍隊や、日本の支配下にあった韓国の官憲等々の直接的で強制的な動員は明白な証拠は見付からず、そうした契機が必ずしも主要な役割を果たしたとは言えないという『談話』を発表した河野は、その直後の記者会見で、仮に強制的動員が支配的ではなかったとしても、日本の軍事独裁権力が万能であった、当時の植民地下の朝鮮で、韓国の若い女性に性奴隷として動員するに当たって、事実上強制的、あるいは半強制的なやり方が当然あり得たことは否定できないと付言しているだけである。

 朝鮮が日本の『植民地』――日本によって国民が軍政の下、奴隷もしくは半奴隷の地位に貶められることと同義である――であったのは事実だから、全く合理的な見解である。事実、こうした付言でいわれていることも真実であって、多くの証言によっても明らかにされている。

 そもそも河野談話を「継承する」と国会で発言しつつ、その後の記者会見での河野発言を持ち出して、事実上、河野談話を否定し、棚上げし、慰安婦問題の根底にしてこなかった安倍政権こそ、この問題についての一切の韓国民の怒りや反発や日韓の間の多くのいさかいやゴタゴタに――そしてもし、北朝鮮に対処するために、日韓の接近や協同が極めて重要だというなら、それを困難にしている現実に――、責任を負わなくてはならないのである。

 安倍一派や安倍政権は、反省するふりをしつつ、実際には開き直り、事実上、従軍慰安婦などという事実は存在しなかった、そんなものが存在したというのは、歴史的事実と真実について発言しているのではなく、『故意に』日本を貶めようとする悪しき意図――彼らの言うところの『反日主義』といった、ばかげた幽霊――による策動である、と叫ぶのである。

 とするなら、韓国民が非難し、反発する『日本』とは、労働者・働く者の日本ではなく、単に安倍一派と安倍政権の日本にすぎない。安倍政権の5年間に慰安婦問題が韓国内で大きな問題となり、日本に対する怒りや反感や反発が国民的な規模で広がり、慰安婦像設立が韓国内に、そして世界中に広がったのも、その原因は、上げて安倍一派と安倍政権にあったと言って少しも言い過ぎではない。

 安倍や河野は慰安婦問題がこじれる原因は安倍政権にあるのではなく、韓国の政府――というより国民――に、韓国国民に根強い「反日主義」にあるかに言いはやし、15年の珍奇な「合意」の『誠実な』、そして『着実な』実行を言いはやしている。まるで韓国民の「反日主義」(つまり反安倍政権の強烈な意思)が、どこからともなく、単に日本を貶めようという韓国民の悪意ある意思や意図から生まれているか言いはやすのだが、そんなものがどこから生まれているのか、生まれなくてはならないかについて、どんな合理性のある説明もできないのである。

 最後にいわなくてはならないのは、日本のリベラルマスコミといわれる朝日や毎日などの無定見と頽廃の深化である。

 彼らは15年の「合意」を絶対化し、「合意の意義を見失うな」などと叫んでいる。安倍の卑しさだけが目立っている、15年「合意」によっても、日韓の政府によっても、『慰安婦』問題一つさえ解決できないことがますます鮮明になっている、このときにである。

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