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知覚外ディメンション:番外地

不思議な話投稿サイト「知覚外ディメンション」管理人による、不思議な話のメールマガジンです。

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創刊日:2009-10-11  
最終発行日:2010-01-19  
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【知覚外ディメンション:番外地】 第五回

2010/01/19

おはようございます。知覚外ディメンション管理人です。

今回は、妖怪と思われるモノのお話です。

どうぞ。

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◆朱の盆

 石川君は小学生の頃、山の方に住む友達の家に良く遊びに行った。

 石川君の地元は海と山に挟まれた場所にあり、彼の家は海に近い場所にあった。

 彼にとって、山に住む友達の家のまわりは、探検をするには最高の場所で、週に二回は
遊びに行っていた。そうしてその帰りは、必ず日がほとんど落ちてからになっていた。

 彼が家に帰るためには、少し長い道のりを歩いて帰らなければならない。
 だが、あまり遅く帰ると母親に叱られてしまう。

 だから彼はいつも近道をした。

 その近道とは、百メートルほどの高さの丘を一つ越える道である。
 ただその丘は、丘全体が墓地になっている場所だった。

 腕白だった彼にとっても、そこを通り抜けることはそれほど気持ちが良いものではなかっ
たが、あまり怖いとは思わなかった。墓地よりも母親に叱られることの方が怖かったのだ。

 ある日、いつもと同じようにうす暗い墓地の丘を、月明かりを頼りに通り抜けていると
あるものが眼に入った。

 それは、小さな白い人影だった。

 その人影は、ひらりひらりと墓の礎石の角を身軽に飛び越えながら、一つの墓の周りを
回っていた。

 こんな時間に何をしているんだろう? 躰の大きさから、自分と同じ小学四、五年生くらい
の男の子らしい。

 もう帰らなきゃいけない時間なのに。そう思いながらも、石川君は横目でその子を見ながら
先を急いだ。

 しばらく歩いて道が下り坂になった頃には、その子供の姿も見えなくなっていた。

 そうして、墓地の出口に近づいた頃、道の真ん中に、先ほどの白い服を着た子供が立ってい
た。俯いているのと、辺りが暗いため、その子の顔は良く見えなかった。

(いつの間に先に行ったんだろう? 道の横を通って先回りしたのかな?)

 その子は、石川君がほんの側まで行っても、俯いて立っているだけだった。
 髪が、長い。

 (おかしな子だな。ちょっと、気味が悪い)

 そう思いながら、彼が横を通り過ぎようとしたとき、不意に、腕を握られた。

 彼の腕を握ったのは、冷たい手のひらだった。

 秋口ではあったが、まだ残暑が厳しい季節であったにもかかわらず、その子の手のひら
は氷のように冷たかった。

 とっさに彼は、
「離せよ!」
と叫んだが、男の子は手を離さずに、ぐいっと彼の腕を引き寄せると、顔をぐっと近づけて
来た。

「うわっ!!」

 石川君の顔を覗き込んだ男の子の顔は、真っ赤に染まっていた。その真っ赤な顔の中で、
黒目のちいさい、皿のような眼だけが、ぎらぎらと輝いている。

「イッショニ、アソボウ」

 その子はそう、口にした。その耳まで裂けた真っ黒な口の中では、蛇のように長く細い舌
がちろちろと踊っていた。

「は、離せ! バケモン!」
 
 石川君はそう叫ぶと、その男の子の腰に強烈な蹴りをくれると、無理やりに腕を引っぺ
がした。

 ソレの手を引き剥がした場所に、焼けるような痛みがはしった。

 だが、彼はかまわず家まで必死に走って逃げた。
 決して後ろを振り返ることはなかった。

 家に帰って、我に返って腕を見ると、何かに引き裂かれたような傷が数本できており、
血が滴っていた。

 母親に分けを話し、半信半疑の彼女に手当てをしてもらっていると、側で聞いていた祖母が、
「それは朱の盆という妖怪じゃないか」
と言ったという。

 石川君の話はそこで終わった。

 伝承に残っている朱の盆は赤い顔や裂けた口、ぎらぎらと光る眼、長い髪は石川君の見たも
のと同じだが、頭に角があり、身の丈六尺(一.八メートル)もあるというものや、女の姿に
化けていることもあると言われている。
 
 石川君の見たものとは、かなり違うようであるが、妖怪というものは、地方や時代によって
化ける姿や現れ方が違うものなのかも知れない。
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いかがでしたでしょうか。

皆さんも何かお話があれば、サイトの方で投稿してくださいね。

宜しくお願いしますm(_ _)m

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