生活の知恵

見慣れた世界に “小窓” を開けて …

♪目にする景色がほんのり変わるメールマガジン。
4月29日最新号は 【 [155] 『題なし』が台なしに … 】

全て表示する >

[155] 『題なし』 が台なしに …

2018/04/29

▽▲ =================================================== ▲▽

          アクアタック研究室 /片岡 章
          mail magazine Essay - 155  2018/4/29

          【 『題なし』 が台なしに … 】

▲▽ =================================================== ▽▲


今回は少し毒を盛ってみました。
といっても、心地好くしびれる程度の毒です。
安心してお召し上がりください。

テーマは 『題名のない音楽会』。
50年続く長寿番組で、ギネスにも認定されていますが、
みなさんは、ご覧になって、どんな感想をお持ちですか?

昔から見ておられる方と、最近見はじめた方とでは、
印象が違うでしょうね。


               ☆    ☆    ☆


◎ 声楽家 vs ピアニスト vs 作曲家/アタマの違い

40年ほど前になりますが、
作曲家 端山貢明(はやま こうめい)さんのセミナーに通っていたことがあります。

端山貢明↓
http://www.music-tel.com/ez2/c/J_comp2/h/hayama.html

そのなかで、端山さんがこんなことを言っておられました。
「ここに声楽家の人はいませんよね?」 と前置きして、

    声楽家は アタマの使い方が一番シンプル
    つぎがピアニスト
    作曲家は最も高度

別に誰がエライという話ではないのですが、
確かに、この違いはありそうです。

主にクラシックですが、
声楽家は、ひたすら、歌という “1本の線(メロディー)” を追求します。
なので、視線が一方向。
童謡でも歌謡曲でもオペラ調で歌ってしまう、ということがよくありますが、
その一例ではないでしょうか。

つぎにピアニスト(演奏家)。
こちらは、最大で10個の音を同時に弾き分けなければなりません。
強い音、弱い音、長めの音、短めの音 …
それも、あのスピードで。
“何本もの線” を一瞬に制御することが求められます。

では、作曲家は?
オーケストラは、数十人が様々な音を一斉に奏(かな)でます。
そのため、楽譜は何十段にもなります。
それをアタマのなかで構築しなければなりません。

また、作曲家には、
新しい価値を創り出そうとする体質があります。
とくに現代になると、
和音、音階、演奏法はいうまでもなく、
独自の楽譜さえ考案しますし、
時には、音楽の概念そのものを覆(くつがえ)します。

このように、作曲家は、
“多面的に発想し練り上げる” アタマになります。


◎ というわけで 『題名のない音楽会』 のはなし

    “一本の線” の声楽家
    “何本もの線” の 演奏家(ピアニスト)
    “多面的な発想” の作曲家

なぜこんな話から始めたのかといいますと、
これが 『題名のない音楽会』 の歴史とリンクするからです。

順序を逆にして、

    作曲家 → 演奏家 → 声楽家

としてみます。
どうリンクするのか、わかりましたか?

ではヒント ―― 【司会者】


つまり、50年の間に、
司会者が 作曲家 → 演奏家 → 声楽家 と移り変わっているのです。

最初は黛敏郎(作曲家)、
黛さんが亡くなると、羽田健太郎、佐渡裕、五嶋龍(演奏家)、
そして現在は石丸幹二(声楽家)。

これが番組内容の変遷(へんせん)を象徴しています。


◎ 黛さんの時代

黛さんは、
プロレスでおなじみの、あの 『スポーツ行進曲』 や、
映画音楽、石原裕次郎の歌 …
そういった音楽を作りましたし、ジャズもしました。

ですが、本来は、様々な実験を試みた前衛作曲家のひとりです。
梵鐘(ぼんしょう)の音響をスペクトル解析して
オーケストラに適用した 『涅槃(ねはん)交響曲』、
電子音楽、図形楽譜 などなど。

黛敏郎↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%9B%E6%95%8F%E9%83%8E

ですから、発想は多岐にわたります。
独断的でもありましたが、
遊びや洞察もあって、番組はバラエティーに富んでいました。

たとえば ――

・ 美空ひばりさんや和田アキ子さんにオペラを歌わせる
・ 国会議員を集めて紅白歌合戦
・ 三島由紀夫特集
・ ピンクレディーの曲や Puffy の歌詞を考察する
・ シューベルトをこきおろす

ほかにこんなのも。

・ 小沢昭一 浪曲 『ベートーベン人生劇場〈残侠編〉』
   ヤクザ仕立てのゲーテとベートーベンが温泉で出会います。

        (三味線)ベベンベン♪
        なぁ ベェの字よ
        なんです?  ゲーテ兄ぃ

・ 古館伊知郎 オーケストラ演奏のアドリブ実況中継
   (雰囲気を再現するため、前半は創作)

        さーあ始まりました、各奏者一斉にスタート!
        先頭を切るのはバイオリン!
        おーっと、ホルン奏者が手を突っ込んだぁーーっ!
        これは反則であります!

        (ホルンの “あさがお” に手を入れるのは通常の奏法。
          反則ではありません)


◎ 演奏家・声楽家の時代

一方、司会者が演奏家になると、

    みんなで楽しく演奏しましょう♪ 聞きましょう♪

になっていきます。
これは演奏家の発想でしょうね。

そしていま、声楽家の時代を迎えて、
番組はついに 『題名のある普通の音楽会』 になってしまいました。

もちろん、
司会者ひとりで企画しているわけではありませんから、
これを司会者のせいにするのは酷です。
ですが、
制作者の意図が司会者選びに表れているのは確かでしょう。


◎ 『題なし』 は “ヘソ曲がり” が命

初代の黛さんは、
「私はただの司会者ではない」
と公言していました。
音楽の新しいビジョンを見せてやる、
という気概があったのではないでしょうか。
『題名のない …』 という “題名” も、きっとその意思表示です。

そこには、
60〜70年代という激動の時代背景もあったと思います。
政治だけでなく、美術も演劇もそうでした。

まあ、その点は、今の時代にそぐわないでしょう。
前衛の時代ではありません。
でも、今は今なりに、することがあるはずです。

音楽に限っても ――

・ 《ダウンロード時代の著作権》 問題

    音楽家にとっては死活問題。
    岡崎体育さんをゲストに呼んでもいいかも。

・ 《團伊玖磨 『ぞうさん』 と 『ラジオ体操』 だけ》 問題

    女優 團遙香さんがゲストのとき、
    必ず 「祖父は作曲家の團伊玖磨(いくま)」 と紹介されるのですが、
    代表作とされるのは 『ぞうさん』 と 『ラジオ体操』 だけ。
    教科書に載っていたオペラ 『夕鶴』 や6つの交響曲もあるのに。
    日本の音楽文化って貧相。

・ 《音大生の99%は曲の分析ができない》 問題

    ドイツで知られている作曲家 中村洋子さんは、こういっています。
    「日本の音大生の99%は、
      和声学など基本的な理論が理解できていない」
    「それができないと、まともな演奏は不可能」
    だから、
    「日本からは、歴史に残る大ピアニストが出現していない」

    ↓中村洋子 ブログ 「音楽の大福帳」
    https://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko


とにかく、いまの 『題名のない …』 は、
古典から現代まで取り上げる 『日曜美術館』 にも
『ららら・クラシック』 にも負けています。
守備範囲が狭いし、掘り下げも浅い。

『題名のない』 の看板を掲げるのなら、
もっとヘソを曲がりでなければなりません。
画家ダリに倣(なら)っていえば、“正しく曲がったヘソ” です。
コンプライアンス(遵守)の時代ではありますが、
それなりに、黛さんのような毒気があってもいいのではないでしょうか。


◎ 日本人のアタマは眠ってる

『題なし』 にかぎらず、いまの放送には、
最大公約数で薄めたような番組が散見されます。

カラオケ・バトルの居並ぶゲストも、
「天使の声ですねぇ」 「空気が変わりましたぁ」 など
歯の浮くような褒(ほ)め言葉ばかり。
歯周病の末期くらい浮いてます。
少しは、身になるアドバイスもしてみては?

ニュースやワイドショーも、上からの圧力なのか、
ほんとに大事なことから目を逸(そ)らさせるような
どうでもいいネタを延々とやっています。
自分のアタマで考えない人たちが鵜呑(うの)みにする ――
そこを狙っているのでしょうか。

まるで、静かな 《一億火の玉》。
右と左の違いがあるだけで、結局、
国を挙げて戦争に突入していったのとおなじパターンに
陥(おちい)ってはいませんか?

なので、メディアは、
様々な人が様々な観点から発言するものでなければなりません。
いまのテレビは(新聞も)それに逆行しています。

日本人の多くは、おそらく声楽家タイプ。
「音楽 とは 歌(1本の線) のこと」 が日本人のアタマです。
だから、日本人は多様性が苦手。一色に染まりやすい。
御上(おかみ)= いまはマスコミ に盲従しやすい。

ほんとに余計なお世話なんですが、
『題名のない音楽会』 には、
そこに一石を投じる “知的なやんちゃ” であり続けてほしいのです。


================================================================
お読みくださっている皆様、ありがとうございます。
当メルマガ、切り口は毎回変わりますが、底辺には一貫した流れがあります。
そのあたりを ほんのり♪ とでも感じ取っていただければありがたいです。

◎ 発行人 : アクアタック研究室/片岡 章  http://www.aquatack.com
◆ 登録・解約・コメント一覧 : http://www.melma.com/backnumber_179959/
◆ バックナンバー一覧 : http://www.aquatack.com/home/writings_list.html
================================================================

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2009-04-07  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
Score!: 97 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。