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[75] “なんでもアリ” の文学全集

2012/09/20

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      アクアタック研究室  mail magazine - 75  2012/9/20
             
                 【 “なんでもアリ” の文学全集 】

                      カルチャー ◇ エッセイ
               
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何年か前、用があって東京都町田市の市役所へ行ったときのことです。
「ご自由にお持ちください」 のコーナーがあって、
古本が何冊か置いてありました。
見ると、懐かしい本があります ―― 『少年少女 世界の名作文学』。
子供時代に読んだ本です。
出版は小学館で、毎月1冊ずつ、全50巻が送られてくる方式になっていました。
いま50代くらいの方なら、ひょっとして手に取っているかも。


                           ☆    ☆    ☆


◎ “なんでもアリ” の文学全集

『世界の名作文学』 なんて、よくある類(たぐい)でしょ、
と思われるかもしれません。
ところが、これが結構大胆にしてユニークな代物(しろもの)なのです。

淡いクリーム色のケースに収められていて、
厚い表紙には一巻ごとに世界の名画があり、その解説もついています。
監修の筆頭は川端康成。

といっても、これはほんの序の口。
タダモノでないのは、収録された作品たちです。

まず、
『ギリシア神話』 『ドン=キホーテ』 『西遊記』 『赤毛のアン』 『坊っちゃん』 …
と定番が入っているのは当然ですし、
新美南吉(にいみ なんきち)の 『牛をつないだつばきの木』 や
小川未明(みめい)の 『赤いろうそくと人魚』 が選ばれているのも、
不思議ではありません。


ですが、そこにちょっとマニアックなものが加わります。

ゴーゴリの 『外套(がいとう)』 をはじめ、
バルザック、モーパッサン、プーシキン、ドストエフスキー など、
子供用にやさしく直してはあるものの、少しオトナの色合いを帯びます。

ジェローム作 『ボートの三人男』 は、ややお笑い系なのですが、
たしか、
「人は、世間の事件より、小さくても自分のことのほうが大事」
といった話が出ていました。
それをいまでも憶えています。
要するに、人間、シリアの内戦よりも自分の水虫の方が大問題なのです。

中国編では、魯迅(ろじん)のほかに郭沫若(かく まつじゃく)がありました。
この人、中国では有名らしいのですが、
私も、この全集がなかったら、いまだに知らずにいたでしょう。

『太閤記』 や 『椿説弓張月(ちんぜいゆみはりづき)』 のような日本古典のなかに、
井原西鶴(さいかく)も参加しています。
もっとも、少年少女向けですから、さすがに、『好色一代男』 はありません。
でも、この全集を機にそちらの道へ進まれた方はいらっしゃるでしょうね。

また、映画になった、
コナン・ドイルの 『失われた世界(ロスト・ワールド)』
クーパーの 『モヒカン族の最後(ラスト・オブ・モヒカン)』
もありましたし、
『山椒魚戦争』 で知られるチェコの作家カレル・チャペックも、短編が出ていました。
労働を意味する “ロボット” は、この人の 『R.U.R』 に登場したのが始まりです。
(紅茶店の ≪カレルチャペック≫ という名前も、このチャペックさんです)

そのほか、詩の分野でも、
ブレイク、バイロン、ボードレール、ワーズワース … と揃(そろ)っていますし、
ペルシャの詩人ルバイヤートまでいます。


◎ あの時代に、よくもこれだけ …

… と、これだけでも盛りだくさんなのですが、本当にユニークなのはここから。
なにがユニークなのかというと、
「これって文学作品?」 と言いたくなるようなモノまでが混じっているのです。
どちらかといえば大衆娯楽小説。
いくつかご紹介します。

『ターザン物語』(E・R・バローズ)

    ターザンはもちろんですが、
    “スペース・オペラ” と呼ばれた、同じバローズの 『火星シリーズ』 も、
    『ジョン・カーター』 として映画になりましたね。

『怪傑ゾロ』(ジョンストン・マッカレー)

    これも、もとは小説でした。
    マッカレーは、ニューヨークのスリの話 『地下鉄サム』 も書いています。

SFも、『海底二万里』 や 『透明人間』 ばかりではありません。
   
『メトロポリス』(ヘルボウ)

    映画好きの方なら、無声映画の代表としてご存知かと思います。
    原作者のヘルボウは、ドイツの女流作家です。

『海底軍艦』(押川春浪/おしかわ しゅんろう)

    明治33年に出版されたSF小説で、冒険小説ブームの先駆けとなりました。
    1963年には東宝で映画化もされていて、主演は高島忠夫さん。
    小説ではどうだったか、忘れましたが、
    映画の海底軍艦(潜水艦)「轟天号」は、
    先端がドリルになっていて、空を飛ぶこともできます。
    プラモデルも発売され、買って作ったのを憶えています。
    映画では、伝説のムウ帝国から送られた工作員が、悪役として現れます。
    作者の押川春浪は、野球などスポーツの振興に力を入れた人でもあります。
    ついでにいいますと、
    当時は2本立ての上映が普通でしたが、調べたところ、
    相方は、クレージーキャッツの 『香港クレージー作戦』 だったようです。
    これも面白かった。

推理小説では、ホームズももちろんありましたが、こんなのも。

『少年科学探偵』(小酒井不木/ふぼく)
 
   推理小説の好きな人でも、
   小酒井不木を知っている人は少ないでしょう。
   こういうレアものが入っていたのも、この全集の特徴です。


            *  *  *  *  *  *  * 


◎ 本も映画も、“なんでもアリ” がオススメ

長くならないよう極力カットしつつも、随分書いてしまいましたが、
あの当時、よくこれだけ多岐にわたる全集を企画したものだと驚きます。
いまでいえば、
シェークスピアやゲーテと並んで 金田一耕助 や 『キャッツ』(T.S.エリオット) があり、
漫画も文学だとして、『ひみつのアッコちゃん』 や 『スパイダーマン』 も収録、
そんなところでしょうか。

この全集、復刊の要望もあるようで、納得です。
私自身、
おかげで、様々な視点から物事を見る眼を養ってもらったような気がします。

人間はどうしても、でき上がった枠組のなかに留まろうとします。
そのため、新しいもの、未経験のものに眉をひそめます。
すると、精彩のない人生が編(あ)まれていきます。
一方、偏った “信念” も生まれ、
ひどい場合は、その “信念” どうしがぶつかって戦争になります。

ひとつの物事に対して色々な見方ができる、というのは、
とても大切なことではないでしょうか。
皆さんにお子さんがおられたら、
ぜひ、このような “なんでもアリ” を勧めていただきたいと思います。
本でも、映画でも、音楽でも、あるいは、科学でも不思議系でも政治でも。

そして、なにが本当かわからなくなったら、しめたもの♪
自力で考えればいいのです。
それをしないと、
自分と異なる意見や見慣れないものを拒否するだけの洗脳人間ができあがります。

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今回ご紹介した全集の一覧はこちらです。
http://nazede.gozaru.jp/meisakubungaku.html
本好きの人でも、知らない作品や作家がいっぱいでしょ!

それから、本の外観を見たい方は、こちらに写真があります。
このサイトを出している人のコメントもありますので、併せてどうぞ。
http://www2.chokai.ne.jp/~assoonas/UC241.HTML


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