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[73] “まぬけ” はどこかなつかしい

2012/08/17

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      アクアタック研究室  mail magazine - 73  2012/8/17
             
                  【 “まぬけ” はどこかなつかしい 】

                   社会 ◇ 現場レポート + エッセイ
               
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◎〜 おばちゃんとおじちゃんの喫茶店 〜◎

入院中の母を見舞った帰り、
食事をするため、妻Yと駅前の喫茶店へ寄ることにしました。
(カフェではありません。“喫茶店” です)

メニューのケースを覗(のぞ)くと、
スパゲティあり、ビールあり、甘味ありのなかに、
『途中下車の旅』 でしょうか、○の海さんのサイン入りカップも鎮座しています。

店内は、外に向いた一面が、床から天井までガラス張り。
青空を背にして、棚になったガラスの内側には植物がずらっと並びます。
さらには、客席のそこここにも所狭しと植物たちがいて、
水遣りを想像しただけで気が遠くなりそう。

このとき、お客は2組ほど。
店のスタッフはといえば、
ウェイトレスにおばちゃんひとり、厨房におじちゃんひとりです。

私は和風ピラフとコーヒーを頼み、
妻Yは、“本日のサービス!” のオムライスとソーダを頼みました。
飲み物は、食事のあとから、とお願いしてあります。

・・・・・

ところが、30分ほど待つのに、一向に動きがありません。
「ちょっと遅いね」 と話していると、
「飲み物を先にお持ちしていいですか?」 とおばちゃん。
不吉な予感がしましたが、飲み物は、やはり後からにしました。

しばらくすると、
私たちより一足早く注文したお隣の席に、みつ豆が届きます。
しかし、そのお隣さんが食べ終わって帰った後も、
こちらのテーブルは シーーーン としたまま。
(ご飯を炊くところから始めているのかな?)

やがて、おばちゃんがスプーンとフォークを持ってやってきて、
紙ナプキンの上に並べるのですが、
これがまた、客から見て斜め。おばちゃんはまったく気にせず。

そのうち、それぞれにサラダが届き、
ややあって、和風ピラフがひとりでやってきました。
待った分、味わおうと、ゆっくり食べます。
… が、最後のひとすくいが口に消えても、
まだオムライスの姿は目に入りません。

・・・・・

やっと、オムライス登場です。
それにしても、これ以上シンプルにならないくらいシンプル。
味はよかったのですが、
「どこに、これだけの時間と手間を掛けたのやら …?」
しかも、“本日のサービス!” を謳(うた)っていながら、なぜか最後。

オムライスを食べ終わると、
おばちゃんが妻Yにアイスティーを持ってきました。
(頼んだのはソーダなんだけど …)
そう思いつつも、また作らせるのは悪いと、それでいいことにします。

すると、少しして、厨房のおじちゃんの声。
「あれ?  このソーダどうするんだ?」

どうやら、ソーダと間違えてアイスティーを作ったわけではなさそうです。
ということは、ここにあるのは誰かのもの。
実際、あとから見ると、
少し前に座ったお兄ちゃんのところに、カレーとアイスティーがありました。
注文主はこのお兄ちゃんで、おじちゃんがまた作り直したのに違いありません。
(こちらのカレーは早かった。絶対、我々の注文でご飯が炊けていたからだ!)

最後に、私のコーヒーが到着し、
やや間があって、デザートがひとつやって来ます。
「1,000円を越えるピラフのセットにはお付けしとります♪」
でも、「遅くなったお詫びに、デザートをもうひとつ」 という発想は、
おじちゃんにもおばちゃんにも皆目なさそうです。


待った時間に比べれば、食べた時間は一瞬でしたが、
ガラス張りの外に目をやると、入店時の青空はどこへやら、
日はとっぷりと暮れて、街の灯さえ燈(とも)っていました。

出口でお勘定をする際も、おばちゃんはごく普通。
「遅くなりまして …」 は出そうにありません。
飴を2つくれましたが、これはいつものオマケのようです。
「ごちそうさま」だけは伝えて店を出たのですが …


◎〜 でも、どこかなつかしい 〜◎

そんな次第で、
無駄だらけ、間が抜けている、気がきかない ――
さんざんなひと時でした。

でも、なぜか、さほど腹が立ちません。
というより、この空気、どこかなつかしい …
なんだか、ひなびた峠の茶屋で過ごしたかのようです。

それには、
お年寄りだから疲れていたのかもしれない、
という情状酌量もあったでしょう。
現に、2か所ほどのテーブルでは、空いた食器がまだ置いたままです。
ですが、それだけではないのです。


思い返してみてください。
昔は、こんな “まぬけ” があちこちにありませんでしたか?
誰の所有だかわからない空き地があって、
子供たちが勝手に入り込んで遊んでいたり、
「この人、どうやって稼いで食べてるんだろ?」 
と首を傾(かし)げてしまうような、得体の知れないおじさんがいたり。
あるいは、値札の金額がテキトーなお店とか …

このような “まぬけ” な風景には、心惹かれる “なつかしさ” があります。
といっても、昔をなつかしむだけの懐古ではなく、
「(人に)なつく」 の意味も含めた “なつかしさ” で、
むしろ、とても大事なことのような気がします。

思い出しました?


“むだ”  “すきま”  “まぬけ”  ――
こういったものには、しばしば 「無価値」 の烙印が押されます。
でも、それはちょっと(随分?)もったいない。
“空き地” は、そんな代物(しろもの)ではないはずだからです。
それどころか、不思議な水を湛(たた)えた井戸のようにさえ見えます。

この水を枯らせないでほしいですね。
“まぬけ” には、なにかがあるのです。


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