生活の知恵

見慣れた世界に “小窓” を開けて …

♪目にする景色がほんのり変わるメールマガジン。
4月29日最新号は 【 [155] 『題なし』が台なしに … 】

全て表示する >

[69] 人間はおじゃま虫?

2012/05/26

□ ========================================================= □
      アクアタック研究室  mail magazine - 69  2012/5/26
             
                    【 人間はおじゃま虫? 】

                  深くて壮大な話 ◇ エッセイ
               
□ ========================================================= □


先々回、先回に続き、“まつわる話” の第3弾。
これで一応シメとなります。


                           ☆    ☆    ☆


◆ 人間界には手続きがある

人間社会でめんどくさいことの代表が “手続き”。
事業など起こさずひっそりと暮らしていても、
口座開設、入学手続、確定申告、転居届、印鑑登録、不動産登記、
その他、数えきれないほどの手続きが
ひとりの人間にまつわりついてきます。

この時間をやりたい仕事や趣味に使っていたら、
どれだけのことができたでしょう。

しかし、いくら生活をシンプルにしても、そうはいきません。
少なくとも日本には、戸籍というものがあります。
行方不明にでもならないかぎり、
これだけは逃れる術(すべ)がなく、
さらには、そこからアレコレの手続きも生じます。


◆ 人間界には介護がある

めんどくさい、といってはいけないのですが、
人間界には、介護というやっかいな仕事もあって、
状況によっては、勤めをやめてまで専念することになります。
今回、母を手術してくれた脳外科医の方も、
「癌の父を看取るため、今月でメスを捨てます」 と言っていました。

こんな時、確かに、健康保険が助けてくれます。
しかしそれも、元をたどれば私たちの払う保険料。
結局、その分も働いているわけです。

さらに、保険でも追いつかない分が結構あります。
そこは、家族が働いて稼がなければなりません。

一方、介護される側としても、
意識があってある程度動けるならいいのですが、
呼吸や栄養の管を繋がれて、亡くなるまで、意識もなく寝たきり、
という人が大勢います。
(これが日本の長寿記録に貢献しているという皮肉)

このように、
介護が始まると、本人にも家族にも過酷な日々が訪れます。


◎ 人間はおじゃま虫?

さて、
当然のことながら、動物界には手続きがありません。
食べること、住むこと、
一切が手続きなしです。

また、介護もありません。
キタキツネが実家に帰って親の面倒を看(み)た、
なんて話は聞いたことないですよね。

動物界に限らず、
自然界には、手続きも介護も皆無です。

おかげで、
書類の紙をつくる手間も、原料の木を切る環境破壊もなく、
病人のために国の医療費がパンク寸前になる心配もありません。

自然界のシステムは、すでにバランスよく稼働しています。


なのに、人間が現れ、
自然を乱してまで、わざわざ手続きやら介護やらを持ち込んでいます。
自然界では人間が一番エライ、ということになってますが、
どうも、おじゃま虫っぽい。

一体、人間は何をしに来ているのでしょうか?


◎ 人間は精神界のために生きている

そんな疑問に、
佐藤可士和(かしわ)さんがヒントをくれました。
みなさんご存知だと思いますが、
ユニクロのブランディングなどで知られるクリエイティブディレクターですね。

この方の本 『佐藤可士和の超整理術』 に、
こんな一節があります(164ページ)。

    確かに、僕は直線が好きです。
    ではなぜ、直線に惹かれるのか。
    考えて出た答えは、自然界にない形だから。
    本来、直線というのは、思考のなかにしか存在しない、
    よどみのない概念です。
    コンセプチュアルアートの美しさに惹かれるのと似ているな、
    と思いました。


「手続きや介護の話でしょ。直線がどうしたの?」 (・ε・)


こういうことです。

    人間は、自然界に精神界を加えるために生きている

可士和さんのいう直線は、精神界を象徴するひとつであって、
この世界の住人は、ほかにもたくさんいます。

    完璧な円、三角形、五芒星、正二十面体
    対称(シンメトリー)
    物体が落下するときの方程式
    ・・・・・・・・

こういった住人たちを通して、人間は、
もうひとつの新しい世界を見ようとしているのではないでしょうか。

といっても、デザインや数学に限った話ではありません。
絵画や音楽もそうです。
自然界にはすでに美しい景色や音があります。
なのに、わざわざ、
構図や遠近法を駆使して絵を描いたり、
自然界にはない音階をこしらえて音楽を作ったりします。
これも、
自然界に精神界を加えようとしている、ということなのだと思います。


一方、精神界にはこんな住人もいます。

    個人の欲望や損得を離れて客観的に物事を見る目
    愛情ではなく愛    

直線たちとまったく関係なさそうに見えますが、

    純粋で美しい   客観的   情やどろどろを越えた向こうにある

という点で、やはり彼らも精神界の住人なのです。


「精神界がどんなところなのか、なんとなーくわかりましたぁ〜。
  で、手続きや介護の話は?」 (-ε・)


手続きや介護も、
自然界に精神界をプラスすることなのだと思います。
“手続き” は、直線に象徴される論理的、数学的なお仕事ですし、
“介護” は、自分の損得を離れた、ご奉仕・愛のお仕事です。

動物界には、このどちらもありませんね。
タヌキの不動産屋さんが賃貸契約を結ぶことはありませんし、
ウサギさん一家がお爺ちゃんを看取ることもありません。

その分、面倒のない世界かもしれません。

でも、
きっと、宇宙のなかの精神界は、それでは満足しないのです。
力づくで縄張りを獲得して住んでも、いつまた襲われるかわかりません。
身内が衰えるのを放っておくのでは、魂が救われそうにありません。
そこで、わざわざ人間を送り出したのではないでしょうか。

手続きというシステムを作り、それを洗練させる、
というプロセスを通して、
幾何学図形のように純粋で美しい精神界を実現させたい ――
マザー・テレサが死にゆく人にキリストを見たように、
介護を通して、他者に奉仕する純粋で美しい精神界を実現させたい ――
生命界がそう望み、人間を登場させたような気がします。

人間の精神界はまだヨチヨチ歩きで、
手続きは、所有を巡って損得まみれ、
介護は、「なんでこんなことを?」 という戸惑いだらけです。

しかし、
長い旅路の果てには、
そこから脱皮したきれいな精神界が姿を見せるはずで、
どんな人のなかにも、
そのような想いが微睡(まどろ)んでいるに違いないのです。
そうでなければ、手続きも介護もとっくにやめているはずですから。

        *     *     *

「領土は誰のものでもないよね」
「介護させてもらえるって幸せ。自然に死んでいくのも幸せ」

いつか、そう思える日が来るのではないでしょうか。
生命界には、きっと、そんな夢が眠っているのです。

いまのところ、手続きも介護も、
カニの身をほじくり出すようにメンドクサイだけかもしれません。
でも、それも夢中になれば快感ですし、
あとには美味しい時間が待っています。
ここはとにかく、ほじくり作業に勤(いそ)しんでみましょう。


====================================================================
お読みくださっている皆様、ありがとうございます。
当メルマガ、切り口は毎回変わりますが、底辺には一貫した流れがあります。
そのあたりを ほんのり♪ とでも感じ取っていただければありがたいです。

■ バックナンバー一覧 : http://www.aquatack.com/home/writings_list.html
■ コメント・お返事一覧 : http://www.melma.com/backnumber_179959/

◎ 発行人 : アクアタック研究室/片岡 章
          HOMEPAGE : http://www.aquatack.com
          e-mail : aquatack@msc.biglobe.ne.jp
◎ 登録・解約は、http://www.melma.com/backnumber_179959/
====================================================================

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2009-04-07  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
Score!: 97 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。