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[54] 本はゆっくり読めばいい

2011/06/15

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      アクアタック研究室  mail magazine - 54  2011/6/15
             
                【 本はゆっくり読めばいい 】

                  ライフスタイル ◇ エッセイ
               
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何人かで居酒屋に行った時のことです。
刺身の盛り合わせを頼んだのですが、
話が進み、刺身も残り少なくなった頃、つまの陰からアワビが出てきました。

大切なものは、目に見えないのですね。


                           ☆    ☆    ☆


★ ―― 速読 “文化”

世の中、「速読、速読」。
まるで営業マンの売上競争のように、
「何冊読んだか」 「何分で読んだか」 がクローズアップされます。

たしかに、それも必要です。
弁護士さんが事件の資料に目を通すとか、
新聞記者がデータを揃(そろ)えるとか …
こんなときに精読なんかしていられません。

でも、
「速読するひとの方がエライ」 みたいになってはいないでしょうか?
これが “文化” のような顔つきで闊歩(かっぽ)しているのを見ると、
いや〜な感じがします。


★ ―― 作家さんは読むのがおそい?

一方、作家の平野啓一郎さんは、
『本の読み方 スローリーディングの実践』 という本を書いています。
この本によると、平野さんは速読が苦手らしい。
何度も挑戦したのだけれど、ダメだったそうです。

これを知って安堵(あんど)しました。
私も速読ができないからです。
文章の流れ方や句読点の位置が気になって、
ちっとも先へ進めないのです。
といって、それを気にせずいいかげんに読むと、頭に入りません。

平野さんは芥川賞作家ですが、
こういう人が本をゆっくり読んでいる、というのでほっとしたのです。

そういえば、大江健三郎さんも、ゆっくり読まれるようですね。
「本を読むときは真剣勝負。お酒も飲まずに …」
なんておっしゃってましたから。
また、再読も大事にされているのだとか。


「あなたは月に何冊読みますか?」
こんな質問、よく聞きますよね。

でも、アホらしいと思いませんか?
哲学書10冊と絵本10冊を比べても仕方ないし、
同じ本を10回読み返したっていいわけだし …

数を競ってどうするのでしょう?
「今月、詩集を100冊読んだ。 中原中也なんて、3分で読んだよ。」
って自慢げに言う人がいたら、
便所のスリッパで引っぱたいてやりたいでしょ。


★ ―― 行間の世界

「行間を読む」 という言葉がありますね。
こういうことがもっと大事にされなければ、と思います。
それでこそ文化的。
本はゆっくり読めばいい。
1冊読むのに1年かかったっていい。

少々の極論を許していただけるならば、
文字は、行間を浮かび上がらせるための仕掛け。
文字面(づら)そのものは “単なる情報” にすぎません。
文字次第で行間も変わるため、
それもけっして疎(おろそ)かにはできませんが、
書いた人の想いや味わいは、
行間にこそ息づいているのではないでしょうか。

行間は目に見えません。
でも、そこになにもないわけではありません。
むしろ、そこにこそ世界が広がっています。
文字のその奥に目を向けると、なにかうっすら見えてきませんか?
(ケーキを見てパティシエを想像するような感じかな …)


わたしたちは、“見えないもの” にもっと目を向けなければいけないと思います。
といっても、天使やUFOを探し回ることではありません。
それは、自分自身を見ることにほかなりません。
行間は鏡。そこには、作者を通して自分が見えるのです。


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  • aquatack2011/06/18

    マーシャさま

    まだ読んではいないのですが、『陰翳礼賛』は時々頭に浮かびます。いまの世の中、明るくしすぎかもしれませんね。節電が叫ばれるこの機会に、喫茶店もデパートも陰翳を工夫してみるといいのではないでしょうか。「陰翳プロデューサー」なんて職業が生まれたりして …

  • マーシャです2011/06/17

    再びおじゃまします。

    「間」を大事にする日本文化ということを書いてあった本のこと、

    急に思い出しました。谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」とかでした。

    むかしむかしに読んで、たいして読書家でもない私ですが、

    「間」とか「曖昧」とか「わび・さび」について書かれていて

    とても印象深く残っています。

    あまりにも生活が合理化されてドライになってしまうと、ココロまで

    乾いてきてしまいそうですね。

  • aquatack2011/06/17

    マーシャさま

    “ご来店”お待ち申しておりました。いつもながら、味わい深いコメントをありがとうございます。

    拝読して、「外国の人には行間って発想があるのだろうか?」と思い至り、調べてみました。「read between the lines」というらしいですね。でも、「行間を読む」そのまんまの感じ。日本の表現をそのまま置き換えたのでしょうか?

    それはともかく、行間を読まない、というのがKYや○○モンスターを生んでいるのかな? という気がしなくもないです。

  • エミフロのマーシャです2011/06/16

    ごもっともだと思います。

    速読できることがとても有能なことのような昨今ですが、それではロボットのようで人間味に欠ける気がしていました。

    早く読むことは時には必要ですし、脳トレにはなるかもしれませんが、行間を読むゆとりなど生まれないですね。

    行間を読みとれる能力こそがヒトであり、日本人であり、その人の人間性であるように思います。その行間から果てしなく想像力も働かせることができますよね。

    日本人は昔から、「間」を大切にして、日本家屋なども障子を取り入れることで外気や湿気などを程よく調和させる・・ようなことを何かで読んだ気がします。「曖昧さ」を大切にする民族ですよね。

    目で見えないところを感じ取る、見えないところにこそ本質が隠れているようですね。