小説

ヒツジとオオカミ

昔々ある小さな村にヒツジが1匹暮らしていました。 ヒツジには名は、ありません。 それは誰も、ヒツジを呼ばないから名は必要なかったのです。 ヒツジは来る日も来る日も1匹で、緑に囲まれた家で生活していました。 別にヒツジは寂しいなんて、思ってはいません。 別に寂しくなんかは…

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創刊日:2009-01-12  
最終発行日:2009-02-09  
発行周期:不定期  
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ヒツジとオオカミ

2009/02/09



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おはようございます!
いつも、当メルマガを読んでいただき、ありがとうございます。
大学受験も終わり、時間はいくらでもあるはずなのに、
なかなか、思ったように時間を使うことが出来ず、
まだ続きを配信できない次第です。
大変申し訳なく思います。

さて、今日の『ヒツジとオオカミ』は、今まで配信したものを
まとめたものです。
サイトに載せる時に、書き直ししたりしているので、
過去に配信したものとだいぶ変わっていると思います。
過去に配信したものを読めてなかったり、書き直ししたものを
読めていない方もいると思うので、配信します。

あと、PNがいくつかあり、面倒だったため、御富から富 鬼凛に
全部統一しました。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

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Sheep and Wolf
-Introductory chapter- 


昔々ある小さな村にヒツジが1匹暮らしていました。

ヒツジには名は、ありません。
それは誰もヒツジのことを呼ばないから、
名は必要なかったのです。
ヒツジは来る日も来る日も1匹で、
緑に囲まれた家で生活していました。

別にヒツジは寂しいなんて、思ってはいません。
別に寂しくなんかは…ーー




ある晴れた日の午後、村はずれの赤い屋根の家から気味悪い声が聞こえてきた。

「おい、今日もあの呻き声が聞こえるな」

「今日は悪いことが起こるぞ…早く帰ろう」

偶然にもこの家の前を歩いていた二人の少年。そそくさと、この家から離れて行った。

この家には村の子供たちの遊び場へと続くたった一本の道に面して建っている。そのため、この家の前を通る者は、少なくはなかった。だが、誰も通りたくて通っているわけではない。その逆なのだ。

村人たちはこの家に誰かが住んでいるなんて思ってもいない。誰も住んでいないはずの家から時折聞こえる呻き声。それも、オオカミのような声。そのうち、村へときて、食べられるのではないか。家の前を通る子供たちが、とって食われてしまうのではないかと村人たちは、この家を恐れていた。そして村人から“オオカミ屋敷”と呼ばれ、腫れ物のような扱いをしていた。

だが、そんな大層な考えとは裏腹に、この家には一人…いや、一匹の生き物が暮らしているのである。

-Chapter 1- 


「お前の弁明、聞いてやらんこともない」

腕を組み、深々と椅子に腰掛ける少年は言う。
少年の足元で床に手を付き力なく頭を垂らす性別不詳人物は、唇を噛み締め悔しげな表情を浮かべている。その表情は椅子に腰掛ける少年には見えてはいない。
少年は長い脚をわざとらしく組み、此れ見よがしに鼻で笑う。
そして、目の前で垂れる頭をつま先で小突き、

「ほら、さっさと弁明しろよ」

と、言う。

「…」
「…弁明のチャンスを与えてやっているのに、お前はそのチャンスさえも無駄にするのか?」

口の両端を吊り上げて、白い歯を見せる。
少年へ向けられる視線。殺意がひしひしと篭った視線。その視線に気が付いていないのか、それとも、無視をしているのかは分からないが、少年は全く関心を示すこともなく、目の前の現実を笑っていた。

「……いつか、お前喰ってやる」

年齢不詳人物は、少女のような顔からは想像の出来ないどすの利いた声で言う。
少年の顔から笑顔は瞬時に変わる。

"飼い主に牙を向ける飼い犬"

少年は自分に向けられた言葉に苛立ちを隠せずにいる。

「レオ、お前自分の立場がわかっているのか?」
「黙れ…リック。お前は僕の何だ。親でもないお前がそんなに威張り散らすな」

四つん這いになっていたレオは立ち上がり椅子の背に凭れ掛かっているリックに言う。
リックは、顔を歪めレオの胸倉を掴み立ち上がる。そのせいで、大きな音を立てて椅子が倒れた。
レオは驚いたように一瞬肩を竦ませ、丸くなった瞳で自分よりも背の高いリックの顔を見て、苦しげな声を上げ苦しげな表情を浮かべる。
レオの足は床から離れ、宙にぶら下がっていた。

「お前は、どうしてもこの俺に、この俺様に喰われたいみたいだな」

苦しげな表情をしたレオの顔を楽しそうに見て、唇の下から白い歯を覗かせ不適な笑い声を上げた。
胸倉を掴むリックの手の甲に爪を立てたレオは、声を絞り出して言う。

「お、お前に…く、喰われるぐらいなら…僕が、っ」
「まだ言うかこの餓鬼は」
「は、離…せ、この…へ…ろ…ッ」

"変態野郎"と言いたかったのだろう。だが、レオの体は更に高く持ち上がり言い切ることができなかった。
体重の軽いレオを持ち上げることはリックにとってはとても容易なことで、どんなにレオが抵抗しようと脚をばたつかせても、彼にとっては抵抗にもならない。が、唯一の抵抗になっていることがあった。リックの顔は時折感じる痛みに反応していた。
光が当たり、手の甲にある無数の引っかき傷と、抉られたような傷から出る血が黒く光る。
リックは自分の手の甲を見て唇を舐めた。

「離して欲しかったら…理由を言え」

レオの体がまた少し高く上がり苦しげな声が漏れ、それと同時にまた一つ手の甲に傷が増える。
きっと…彼は周りを見ることのできない人間なのだろう。
と、レオは思った。どんなに自分が苦しげな声を漏らそうが、苦しげな表情を浮かべようが、こうやって、彼の手を力いっぱい傷つけても、彼は気にも留めない。意思表示であるとも気が付かない。だから、きっと彼は、とレオはリックを哀れみ、嘲笑った。

「どうする、レオ…言うか、言わないか、どっちだ」

リックは選択を迫るが、どんなに待っても思い描いていた返事はなく、聞こえてくるのは苦しげな呻き声。
レオは朦朧としている意識の中で、体を突き刺すような視線に更なる身の危険を敏感に感じていた。だが、どうすることも出来ず。

「おい、レオ」

遠くなる意識。

「お前は、死にたいのか?」

リックの顔に不吉な影が落ち、不細工な顔が更に不細工になる。
レオには皮肉なことにかすむ視界の中でリックの不細工な顔だけは鮮明に見えた。そして、その顔を見たレオはまた、彼を哀れみ嘲笑う。

レオは胸倉を掴む手に始めは抵抗をしていたが、もう諦めたのかリックの手に重なっていた手がすべるように落ち、宙にゆっくりと弧を描く。描く弧はだんだんと小さくなり、暫くするとその動きを止め、時折、リックがレオの体を揺するとまた動くぐらいになっていた。

レオは遠のく意識の中で見えたリックの不細工な顔に微笑した。
何か、怒鳴っていたが、よく、聞こえなかった。



どうして、リックはあんな不細工な顔をしていたのだろう。
と、朦朧とする意識のなか考えても、レオには思い当たる節はなかった。そうなる原因すら、見当がつかないでいた。

「…リ…ック?」

急に体を引っ張られ、意識が戻ったレオ。
真っ暗だった視界に光が差し込みリックの不細工な顔が目に入り、レオの口元が緩む。

「くふ…不細工な、顔」

つい口走ってしまった言葉にしまったといわんばかりの表情を浮かべ、口を押さえた。
リックは困ったようにはにかみ、レオの頭に手を置き心配そうに、
「大丈夫か?」
と、言う。

レオは思いもしなかった行動と言動に驚きを隠せないでいた。少し重い体をゆっくり起こし、リックの手を取り大丈夫だと言い、それから優しいリックは気持ちが悪いと付け加えようとしたが、いつもとは違うリックの表情に、ぐっと飲み込んで言わなかった。いや、言えなかったと、いう表現の方が的確であろう。

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