小説

深読み・斜め読み/イーザウ文学解体マガジン

ドイツのベストセラーファンタジー作家ラルフ・イーザウ。



日本では『ネシャン・サーガ』(あすなろ書房)、『暁の円卓』(長崎出版)などが



有名ですが、彼の作品世界は、これからもはてしなく広がっていきます。



イーザウのはてしない宇宙を遊泳する道しるべとして、このメールマガジンをご愛読



ください。

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深読み・斜め読み/イーザウ文学解体マガジンvol.16

2008/09/19


来週は秋分の日がやってきますね。秋分は春分と同様に昼夜の長さが
等しくなる日ですが、こうした言葉は太陽の動きに合わせて季節を知
る目安となる二十四節気として知られています。実は、イーザウはこ
の要素まで小説に取り入れているのですね。詳しくは本文をお読みく
ださい。(ドイツ文学者・翻訳家 酒寄進一)
 
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ラルフ・イーザウ公認サイト
秘密の図書館〜イーザウのはてしない宇宙
http://isau.jp
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  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
    
    1 イーザウの新たなキャラクターたち 『ミラート年代記』1
      エルギルとトウィクス
 
    2 おすすめコラム
      ミラート事典について
      
  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
 

――── 1 ラルフ・イーザウ大解説  ───────────────
                                   
   イーザウの新たなキャラクターたち 『ミラート年代記』1
   エルギルとトウィクス
    
―───────────────────────────────―――
 
『ミラート年代記』には「ミラート事典」と命名された設定資料集があ
る。まずそこからふたりの項目を一部引用しよう。
「トアルント大王とヴァーニア王妃の息子。ミラート暦5983年2月2日生
まれ。古の力をもち、ひとつに体にふたつの人格をもつ。外見の特徴。
金髪。緑の瞳。すらっとしていて背が高い。言い伝えによると、右利き
でも左利きでもなく、両手が器用に使えたという。左のふくらはぎに、
7歳のときにつけた傷跡があり、他に左肩と右手首に外傷がある。ミラー
ト暦6000年の春分の日にソートラント王となる」
この引用で、ぼくが注目するのは「右利きでも左利きでもなく、両手と
も器用に使えた」という言い伝えと、ふたりがソートラント王に即位す
るのが、ミラート暦6000年の春分の日というあたりだろうか。
すでにこのメルマガでも書いたことだが、2003年に発表した『見えざる
ピラミッド』『銀の感覚』で「均衡」「調和」「寛容」というキーワー
ドが作品世界に強く押しだされるようになった。「両手とも器用」「春
分=昼夜等分の時」という裏設定にも、そうした思想が込められている
といえるだろう。
また戴冠の時が「ミラート暦6000年」というのも、深い意味をもってい
る。イーザウの作品世界を紹介した『ラルフ・イーザウの宇宙』に収録
されているインタビューで、この「6000年」の意味についてイーザウに
たずねたところ、これは『聖書』から借りた世界観で、「現代につなが
る文化を持った人間、言い換えれば自由な意志を持った人間という意味
では、聖書の年代がうまく当てはまると思っているのです」(91頁)と
語っている。
「自由な意志」という言葉はじつはそのまま『ミラート年代記』の重要
なキーワードでもある。次回はそのあたりにスポットライトを当てて、
もうすこしエルギルとトウィクスのことを考えてみたいと思う。

●『ミラート年代記』についてはこちら
http://isau.jp/new/mirad.html

●『ラルフ・イーザウの宇宙』についてはこちら
http://isau.jp/nagasaki/no2.html


―──― 2 おすすめコラム ────────────────────
                                  
    ミラート事典について

――───────────────────────────────――
 
イーザウが作成した設定資料集は本にして80頁に及び、人名、地名、事
項がすべてアルファベット順に配列されている。
記号や略号の読み方などを記した「利用者の留意点」や「編者の注」ま
で書きこまれていて、あきらかに第三者の目に触れることを前提にした
作りになっている。
なお「編者の注」の冒頭にはこう書かれている。
「わたしたちの世界で『ミラート年代記』の存在が知られているのは、
なんといってもオラムの功績である。しかし現在、わたしたちが手にす
ることができるのは、第21巻から第23巻までの3巻に限られている。
(中略)この三つの巻はミラート暦5983年から6002年までの出来事を記
録している。本書「ミラート事典」はミラート史に関心をもつ人のため
の入門書ではなく、年代記を補完するために作成された。したがって、
この事典は年代記でのちのち語られる出来事にも言及しているため、事
前に目を通すと、年代記のおもしろさが損なわれる危険がある」
ふざけているというか、マニアックというか、この「事典」自体が二次
創作の趣をもっているのだ。第21巻から第23巻までの3巻というのはいう
までもなく、『ミラート年代記』三部作をさしている。


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【ラルフ・イーザウ】
1956年ベルリン生まれ。コンピュータ・プログラミングの仕事のかた
わらファンタジー小説を書きはじめ、作品がミヒャエル・エンデの目
にとまり、作家デビュー。1997年、『盗まれた記憶の博物館』(あす
なろ書房)で、ドイツ児童書界で権威あるブックステフーダー雄牛賞
を受賞。
おもな著書に『ネシャン・サーガ』シリーズ(あすなろ書房)、
『暁の円卓』『ラルフ・イーザウの宇宙』(長崎出版)、
『ファンタージエン 秘密の図書館』(ソフトバンククリエイティ
ブ)などがある。
 
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ラルフ・イーザウの公式サイト(独・英・日)
http://www.isau.de/
ラルフ・イーザウ公認サイト「イーザウの宇宙」
http://members.jcom.home.ne.jp/grand-blue/
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【酒寄進一(さかより・しんいち)】
1958年生まれ。上智大学、ケルン大学、ミュンスター大学に学び、新
潟大学講師を経て、現在、和光大学表現学部教授。児童文学を中心に、
現代ドイツ文学の研究紹介をおこなっている。おもな訳書にラルフ・
イーザウの諸作品、
『ベルリン』三部作(理論社)、『黒い兄弟』(あすなろ書房)、
『影の縫製機』『三文オペラ』(長崎出版)などがある。
 
●酒寄研究室
http://www.wako.ac.jp/~michael/wiki/index.php?FrontPage
 

◇◆◇編集後記
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この原稿を書く直前、ビッグニュースが舞い込みました。『ネシャン・
サーガ』以来、あすなろ書房から出版されているイーザウ作品(そして
『ラルフ・イーザウの宇宙』も)のために表紙画、挿画を描いている佐
竹美保さんの個展「佐竹美保展―作家ラルフ・イーザウからの連画―」
の開催が決まりました。(▼開催日時 2008年11月3日(月)〜8日(土)
▼開催場所スパンアートギャラリー 中央区銀座2-2-18 tel03-5524-30
60)ぜひ観にきてください。(酒寄進一)

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創刊日:2008-06-04  
最終発行日:  
発行周期:しばらく休刊  
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