小説

深読み・斜め読み/イーザウ文学解体マガジン

ドイツのベストセラーファンタジー作家ラルフ・イーザウ。



日本では『ネシャン・サーガ』(あすなろ書房)、『暁の円卓』(長崎出版)などが



有名ですが、彼の作品世界は、これからもはてしなく広がっていきます。



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深読み・斜め読み/イーザウ文学解体マガジンvol.3

2008/06/20

今号のメインテーマは「光と闇」。力を得た者がどちらに与するか、多くのファンタ
ジー作品の主人公たちはその選択に大いに悩まされますが、その答えを導き出す過程
が物語をより味わい深いものにするのです。
来月、刊行される『ミラート年代記』『銀の感覚』でも、このテーマは深く関わって
きます。ご期待下さい。(ドイツ文学者・翻訳家 酒寄進一)
 
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ラルフ・イーザウ公認サイト
秘密の図書館〜イーザウのはてしない宇宙
http://isau.jp
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    1 ラルフ・イーザウ大解説
       進化=深化する作家ラルフ・イーザウ その3
               〜『ネシャン・サーガ』から『ミラート年代記』へ〜
 
    2 おすすめコラム
      聖書から紐解くラルフ・イーザウ 
      〜ヨナタン〜
      
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――── 1 ラルフ・イーザウ大解説  ───────────────
                                   
   進化=深化する作家ラルフ・イーザウ その3           
    〜『ネシャン・サーガ』から『ミラート年代記』へ〜        
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前回は胸ときめく出会いについて書いたが、もうひとつ冒険につきものなのが、
危険な戦いの相手だ。闇の国テマナーの将軍ゼトアがその代表格といえる。杖
ハシェベトを英知の庭にとどけようとするヨナタンは、妖術を使うゼトアに何
度も煮え湯を飲まされる。
ゼトアとの戦いで、ヨナタンの最大の武器になるのは「全き愛」だ。「全き愛」
がなんであるかは、『ネシャン・サーガ』の核心部分なので、ここで明かすわ
けにはいかないが、ヒントをあげるとしたら、第六代裁き司ゴエルのこんな言
葉だろう。
「目と耳は信じやすい。自分の内側をよく見つめるのだ。自分の感覚に従え。
(中略)闇の中に光を見いだしさえすれば、そなたはかけがえのない援助者を
見いだすことになるはず」
『ネシャン・サーガ』は基本的に光と闇の戦いだが、闇の中にも光が見いだせ
るという視点を加えることでひとひねりしている。さて、ゼトアの心の闇にも
光はあるのだろうか?
それからこの逆で、光にも闇はあるのだろうか?
答えはきっとゲドールの暗黒塔で繰り広げられるヨナタンとバール=ハッザト
の戦いに見いだせるだろう。
ところで「闇の中の光」と「光の中の闇」は、『ミラート年代記』でもバリ
エーションを変えて、ふたたび描かれる。仇であるウィカンデルの番人と洞窟
の闇の中で出会った主人公エルギルとトウィクスの戦いぶりを、ゲドールの暗
黒塔でのヨナタンの戦いぶりと読み比べるとなかなかおもしろいものがある。
 
 
●『ミラート年代記1』無料立ち読みはこちら
http://isau.jp/library1/
●『ネシャン・サーガ』についてはこちら
http://isau.jp/asunaro/no1.html

 

―──― 2 おすすめコラム ────────────────────
                                  
   聖書から紐解くラルフ・イーザウ                       
    〜ヨナタン〜                
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ヨナタン

『ネシャン・サーガ』は「ネシャン」と「地球」で物語が同時進行する。日本
語版ではそれぞれの主人公をヨナタン、ジョナサンと表記した。原作では
Yonathan、Jonathan。ドイツ語ではどちらも「ヨナタン」と読めるしかけになっ
ている。しかし、Jonathanはスコットランドの少年という設定だったので、日
本語版では現地の発音にならってジョナサンとした。
ヨナタン/ジョナサンは聖書に登場する名前だ。
『旧約聖書』サムエル記上に登場するヨナタンはサウル王の長子で、のちにイ
スラエルの王となる羊飼いの少年ダビデと深い友情をはぐくんだことで知られ
ている。このエピソードは友情物語としては『旧約聖書』のなかで屈指のもの
だ。
ダビデといえば、敵の大男ゴリアテを投石で倒したことで有名だ。だがその結
果、英雄となったダビデはサウル王にねたまれることになる。その危機を救っ
たのがヨナタンだ。のちにサウル王とヨナタンはペリシテとの戦いで戦死する。
その死を悼んだダビデは哀歌のなかでこう歌っている。
「私の兄弟ヨナタンよ。あなたは私を大いに喜ばせ、あなたの私への愛は、女
の愛にもまさってすばらしかった」
このように強い絆として歌われた二人の友愛は、そのままヨミ、ギンバール、
フェリンたち、旅の仲間たちとの友愛と重なるだろう。

 
●『ネシャン・サーガ』についてはこちら
http://isau.jp/asunaro/no1.html 


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【ラルフ・イーザウ】
1956年ベルリン生まれ。コンピュータ・プログラミングの仕事のかた
わらファンタジー小説を書きはじめ、作品がミヒャエル・エンデの目
にとまり、作家デビュー。1997年、『盗まれた記憶の博物館』(あす
なろ書房)で、ドイツ児童書界で権威あるブックステフーダー雄牛賞
を受賞。
おもな著書に『ネシャン・サーガ』シリーズ(あすなろ書房)、
『暁の円卓』『ラルフ・イーザウの宇宙』(長崎出版)、
『ファンタージエン 秘密の図書館』(ソフトバンククリエイティ
ブ)などがある。
 
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ラルフ・イーザウの公式サイト(独・英・日)
http://www.isau.de/
ラルフ・イーザウ公認サイト「イーザウの宇宙」
http://members.jcom.home.ne.jp/grand-blue/
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【酒寄進一(さかより・しんいち)】
1958年生まれ。上智大学、ケルン大学、ミュンスター大学に学び、新
潟大学講師を経て、現在、和光大学表現学部教授。児童文学を中心に、
現代ドイツ文学の研究紹介をおこなっている。おもな訳書にラルフ・
イーザウの諸作品、
『ベルリン』三部作(理論社)、『黒い兄弟』(あすなろ書房)、
『影の縫製機』『三文オペラ』(長崎出版)などがある。
 
●酒寄研究室
http://www.wako.ac.jp/~michael/wiki/index.php?FrontPage
 

◇◆◇編集後記
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3回にわたって『ネシャン・サーガ』と『ミラート年代記』のつながりを書いて
きました。今回は、ヨナタンの聖書における伏線にもはじめて触れました。ヨナ
タンはダビデと深いつながりがあったのです。ダビデを英語名にするとデービッ
ド。次回はデービッドが主人公の物語『暁の円卓』に触れたいと思います。
(酒寄進一)

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創刊日:2008-06-04  
最終発行日:  
発行周期:しばらく休刊  
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