経営

"成果給”・・・新戦略の核心か?ガン細胞か?

 日本の給与制度を席巻しつつある“成果給"!
 グローバリズムの下、導入不可避とされるこの制度の功罪を、報道される各社の人事問題等を題材に徹底検証してみたい。

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No.121 新冷戦時代の幕開けは回避?***指導者の「軒並み劣化」に悩む国際情勢***

2019/07/10


 先月末わが国では初めて開催した大阪 G 20 サミットは、当面の米中紛争
などを巡る " 解決無き修羅場” が懸念されたが、案に相違し " 良識が支配 ” 
する運営に一貫して成功。気候変動を論議したパリ条約締結時の成果にも比
肩しうる国際的合意:「自由貿易と国際ルール尊重」を改めて確認する成果
を達成した。
 背景は、先ずトランプ政権発足以来短期間に「アメリカ ファースト」を
標榜する攻撃的外交政策の展開で米・鮮、米・中、中東(対イラン・トルコ)
南米(ベネズエラ)などと軒並みに一触即発レベルの緊張関係が続発。経済
面にも影響が波及する例が多く世界的な景気後退懸念が強まり、米国を除く
参加国共通の危機意識を醸成していたタイミングだったこと。
 第二に、上述のパリ条約や加・墨両国経済を揺さぶるNAFTAからの脱退、
成立寸前のTPP(環太平洋経済連携協定) 参加見送りなど、国際的努力の成果
に背を向ける米国の姿勢に批判が重なり、このG20の最中にも対中国、対イ
ランなどへの政策手直し発表を余儀なくされる状況であった事実だ。
 トランプ大統領自身が、昨年は就任直後に出席して不評を買ったスイス・
ダヴォスの各界トップが集う会議を、今年は欠席するなど、国際世論の強い
批判を意識し修正のベスト・タイミングを窺っていた節もある。
 第三には、かような雲行きから議長国・日本が参加国の大半の意向を汲み、
極めて率直に「良識の勝利」と呼ぶべき総括声明を纏め上げ、トランプ氏を
して『議長国として素晴らしい機能を発揮した』と称賛せしめた事実だ。
 まんざらお世辞ではなく、況や親友の安倍首相の見せた「造反」への皮肉
でもあるまい。多分この時点で、既に38度線を越えた『北』のトップとの会
談の目途が付いて、上機嫌だったのでは?
 兎も角、最大の親米政権の立場にあるものの「筋を通した」振舞いが参加
国の対日信頼度に貢献したことは確実だ。声明文をまとめた事務方のご苦労
も偲びつつ、筆者も賛辞を呈したい。
 一方、今回の会合が世界的な発言力シフトを反映した事実も見逃せない。
明らかだったのはEUとその諸国の存在感の後退だ。印象に残る発言も殆ど
なく淋しい限り。反面インド、インドネシア、ベトナム、ブラジル、豪州や
中東のイラン、トルコ、アフリカ勢はすこぶる元気で、今後の経済発展の担
い手のムードと自信を感じさせた。
 
 だが関係する諸国に共通するのは、新たな難局に直面する有力政治家達の
『質的低下』だ。つまり将来への展望力の貧困さが原因の?説得力の欠如” 
が何より致命的。往年の名士達に比べ「頭脳水準が劣化」の一語に尽きる。
 もう一つ、筆者も長期間外国企業の人々とリスクや為替相場に絡んで時に
争い時に協力する日々があった。数少い印象に残る事例に共通するのは、利
害が異なり熾烈な駆け引きがあっても、成否と無関係に「相手の人柄に敬意
を覚えた場合」だ。
 現在の国際政治の混乱の背景には、人格や信義という『人間味』を表す語
彙が死語になった現実があるのではないか?と危惧している。
   些か味の強すぎる前菜はこの程度にして、最近、俄かに緊迫の度を加える
国際情勢を展望するコース・メニューに入ろう。

     1.      存在感急落の米国外交ー朝令暮改と恫喝戦法の破綻

 失礼は承知だが、トランプ大統領の政治家としての器量は、ルーズベルト
やトルーマンなど「無難な」賢者の先達が多かったユダヤ系には珍しく一寸
お粗末だ。最近の外交手腕からも容易に推察できようが、前任者のような秀
才でなくとも、自らの構想力の持合わせがなければ輩下の優れた識者の見解
の活用で補える筈。だが識別・理解力不足と妙なプライドが妨げるらしい。
往年の同僚のような他国の首脳の傾聴を誘う見解どころか、「厄病神」視さ
れる軽はずみな発言を、それも連発中である。
 最近もペルシャ湾での偵察用無人機の撃墜を理由にイランへの反撃(空爆)
を命じ、攻撃実施10分前に取消したと得々と自慢する辺り、最早「狂人が刃
物を弄ぶ」図だ。尤も中止命令の背景は、ロシア筋から得た警告(イランが
既に対イスラエル用に最新鋭・高性能のロシア製対空ミサイルを配備し、米
攻撃機の被害が甚大の惧れあり)らしい。ロシアと昵懇で何よりだったが、
米軍も短期で事態の収束は、明らかに困難だ。
 大統領は依然イランへの威嚇を反復中だが、底が割れては効果ゼロ。開戦
となれば中東は大混乱でオイル・ショックの再燃必至。世界経済は「トラン
プ不況」とのダブル・パンチで確実に冬眠期に入る。当面専らイランの核で
大騒ぎだが、イスラエルの核には『沈黙』する理由を釈明できねば、世界の
世論は納得しまい。
 さらに滑稽なのは、最近米国が提案中の『パレスチナ支援500億ドル資金
構想」だ。元々自腹を切るつもりはなく「反イラン陣営諸国の懐」−特にサ
ウジ・アラビア−を期待していた節がある。だがトランプ政権登場以来、エ
ルサレムをイスラエルの首都と認定し米大使館を移転、パレスチナ住民から
強奪した土地のイスラエル帰属容認など、オスロ合意で成立したイ・パ双方
の和平案を率先して覆す米国に対し、パレスチナ側は「和平の仲介者とは認
めず」と強硬だ。6/25-26バーレーンで開催の資金拠出目的の会議にパレス
チナは不参加。結局「出資は政治問題解決後」で頓挫した。「渇しても盗泉
の水」如きは?むまい。パレスチナ側にも意地があろう。
 中東で支払った多額の戦費と戦死者の教訓が全く窺えぬ「傾国のアメリカ
ファースト」は、未だ暫く続きそうだ。 
                    
 だが翻って己れを省ると、スケールは小さいがわが国も例外ではない。現
政権の選挙対策の犠牲となり、今頃やっと国際的にも注目・問題化し始めた
巨額の財政累積赤字と正気の沙汰とも思えぬ「マイナス金利」の維持に拘泥
する゛奇妙な金融政策” の行方が問題だ。
 中央銀行が率先して国内の銀行に?長期の逆鞘 ” を強制し、壊滅的破綻へ
先導するなど、『万邦無比』の見上げた「度胸」とその「狂信に近い信念へ
の傾倒」ぶりには呆れる他ない。6年余を空費した軽量内閣と、往年と異な
り政策批判機能を忘却した無気力な財界の所産だが、メディアもボケ過ぎだ。
 そろそろ事態の抜本修正に動かねば、拡大するトランプ不況や極東を取り
巻く地勢学的情勢の急変は到底乗り切れまい。
   日米関係も、貿易不均衡に沖縄も絡んで波瀾含みだ。最近のトランプ氏は
懐かしいMSA(現・日米安全保障条約)の棚上げ−つまり一方的な米側のみの
日本防衛義務の放棄−まで匂わせ始めた。目的(貿易収支の均衡回復)のた
めには手段を選ばずだが、沖縄基地の返還を「土地の収奪」として日本側に
金銭補償を求める意向には驚いた(朝日朝刊6/26 P.1)。算盤勘定が合わぬ
なら、沖縄から撤収すれば済む話に思えるが、既得権放棄は埒外らしい。或
いは米兵が血を流して占領した土地・沖縄への思い入れの発露なのか?
 こんなことを大統領が言い出すようでは、米国も大変らしいが、トランプ
さま"ベッタリ” の安倍総理の顔が見たいものだ。
 彼の宿願の改憲で自衛隊を「格上げ」しても、人口減の最中に『海外派兵
で戦死復活が確実』の入隊志望者が増える筈がない。下手をすると米軍との
協働出兵で、今度はイラン派遣の惧れもゼロではない雲行きだが、憲法違反
の疑いが残る先般のイラク出兵で、戦死者こそ皆無だったが無事に帰国した
兵士の自殺者が28名に達した原因の究明が先だろう。
 わが民族は海外で敵・味方双方の若者を殺し過ぎた歴史がある。終戦から
未だ100年も経たぬが、戦争体験が無い世代の「国際協力論」は自らは戦死
のリスクがない連中の「机上の空論」だ。筆者は10歳で米機の空爆を体験、
爆風で両耳を痛めたが、実戦はゲームではない。真っ当な政治家なら「日・
中不戦条約」の締結か「極東アジア不戦地域宣言」の実現に努力すべきだ。
 兎も角諸般の情勢は、戦後74年を経て改めてわが国に今後アジアの一員
として如何に生きるべきか "誤たぬ" 選択を迫り始めたようである。
 
   2. 上手の手から?漏れた水?に悩む中国ー香港問題の波紋

   6月18日香港では、雨傘デモ(2014)以来の2百万人を動員した空前の規模
(主催者側発表・総人口は745万)の反政府抗議ー逃亡者(刑事犯容疑者)を
本土へ移送する" 新たな措置 ” を認める「条例改訂」に反対ーが、珍しく成
果を上げた。想定外の激しい抵抗に、香港トップ・特別行政府長官は、この
措置の " 事実上の棚上げ ” 公表を余儀なくされたのだ。
 彼女の政治生命も" 事実上”これで終わろうが、この構想の「共犯」の筈の
北京の面子失墜を糊塗するためか、この措置の「再検討」と任期一杯の留任
を、住民に及ぼした迷惑への『陳謝』と共に?涙ぐみつつ ” 声明している。
 香港では開闢以来初の女性行政長官ならではの「お涙頂戴」ドラマだが、
このポストの任免は北京の専権−つまり民意の反映なく選ばれた−である以
上、辞任の自由も無い筈。「無念の涙」か「己れ自身への憐憫」の情の発露
か、何れにせよこの措置の棚上げに留まらず完全撤回まで求める群衆には、
無縁の落涙だ。
 今回の騒動の背景には、最近まで大童だった本土での汚職徹底排除の奏功
で自信を得た北京が、国全体で一段と強化し始めた「綱紀規制」に併せて、
香港・台湾対策でも強行策ぶりが露骨に顕著となった新たな動きがある。
 今回の新措置導入も北京が諒解し強く支援していた経緯があり、明らかに
『本土への一本化』政策推進の一環だ。従ってその「初の注目すべき蹉跌」
の栄誉?を担う訳だが、後遺症は小さくあるまい。万事に慎重な北京だが、
この件では些か「急いては事を仕損じる」理(ことわり) を軽んじた恨みが
ある。
 元来香港は、英国が史上恥ずべき阿片戦争に乗じて、無力化状態の清朝と
締結した永久租借権交渉(南京条約1842)で英領植民地となり繁栄。太平洋
戦争勃発の直後に日本が占領し終戦で解放されたが、英国による中国の承認
 (1950) の後もジョンブル特有の粘りで『既得権維持』を突っ張る同国に手
を焼いた。現在Brexit での対EU交渉でも躍起となって「無関税特権維持」
を狙うシブトサは当時を彷彿させるが、爾後35年を要した中・英共同声明
 (1985) で、漸く1997 年の返還決定に漕ぎ着けた経緯がある。
 中国にすれば国家の威信に係わる問題だが、当時返還の条件に政治体制の
現状維持が条件とされ難航、早期解決のため已む無く?んだ「一国二制度」
を続け、爾来22年目の今年が、北京にとっては " 痺れ" を切らせた挙句?の
『一本化』実現計画だった。
 無論、現在本土での規制が及ばぬ反北京派の拠点・香港で、今後は「反体
制」の名目で容疑者に仕立て上げて本土移送で対応できる、事実上香港から
「司法権の独立」を奪い、「反北京の動きを封殺」するのが本来の狙いだ。
 今後、北京ベッタリに忠勤を励み過ぎて、地元の微妙な空気を読み誤った
行政長官の去就を巡り、住民の出方がさらに注目されるが、北京も収拾策に
苦慮しよう。当面は東京サミットの直前で緊張化する米・中関係の雰囲気を
北京の弱みと見抜いて活用した住民側の読み勝ちだが、今後の『台湾解放』
政策にも影響必至。近くに迫った台湾の総統選挙で最初の反応が出る筈だ。
 さらに最近、「一帯一路」政策への参加による債務激増に警戒心が深まる
東南アジアやオセアニア諸国のスタンスにも、微妙に影響しそうである。
   尤も北京の姿勢は変わらず、機会を捉えて更に弾圧を強めるだろう。
 
 注目されるのは東京サミットで来日中の北京幹部が、「香港問題は中国の
゛内政問題” だ。サミットでの採り上げは拒否する」と敏感に反応した一方、
シンガポール首相はTPP(環太平洋経済連携協定)への中国の参加を歓迎しつ
つも、「南シナ海の紛争回避のための『行動規範』は国際法に基づき拘束力
を持つべき」と主張し、「やんわり」とだが、従来の中国の姿勢に注文を付
けた事実だ(日経朝刊 6/25.P.1 & 8)。
 中国は台湾の他にも、この特色ある「華人国家」への対応という難問を抱
えている。両国の間に存在するベトナムは、嘗て越境・侵入した中国の人民
解放軍を、ベトナム戦争で米軍を撃破した体験を生かし完膚無きまでに叩き
撃退した精鋭を擁するだけに、台湾海峡程甘くはない。ベトナムは南シナ海
問題でも、今や中国の膨張主義への歯止めの拠点として機能しよう。
 要警戒なのは、中国が今回の日中首脳会談でも、既定の膨張主義の修正の
意図は全く示さず、会期中も再三の中止警告を無視し尖閣周辺への海底探測
船(ガス田の調査か?)の出没頻度を却って増加させている事実だ。これは
領有権保有主張の事実上のデモ行為で、鄧小平時代に一度棚上げにした問題
だが、取り下げた訳ではないようだ。沖縄の基地問題と並んで日中関係改善
に刺さった棘であることを、双方が銘記すべきである。
 香港の将来については「一帯一路」政策の背景に『中国元』の「国際決済
通貨化」構想も目的の一つに潜在するならば、戦前の銀本位制度下でNYや
ロンドンと並ぶ存在であった「上海」の復活が当然となり、政治問題が燻ぶ
る香港の「金融市場としての存在価値」が漸次後退する可能性もある。北京
の規制が強まれば、その機能はシンガポールへ移るだろう。
 5G問題での米国側の焦りが証明しているが、北京が賢明で対外規制を徹
底緩和すれば、中国経済の成長予測や外貨準備(既に3兆ドルを超え世界一)、
14億の市場規模から「人民元」が漸次台頭、頽勢が続く米国経済下で政治色
が抜けぬ米ドルと並び、凌駕する地位を得る日も、そう遠くないだろう。

   3. 転機を迎える米・鮮問題−影響度を増す北京の存在感

 2月のハノイでの首脳会談の決裂以来、頓挫中だった北朝鮮問題が、片や
大統領再選運動での材料を、他方は経済窮乏化で規制緩和の実現を、夫々緊
急に要する地合いから、突如大阪サミット後の「平門店会談」が実現した。
 米国大統領が未承認国家を訪れるのは「初の壮挙」だろうが、会談の結果
は相変わらず「内容的に零」。兎も角漸く「中味特定」のための協議再開と、
双方夫々の専任チームでの協議遂行で一致したが、目下進展度はゼロのため、
実質上協議はゼロからスタートということだ。トランプ再選に間に会うか?
 この間に『北』はロシア・中国との『詰』は実施済みで、今更「核の温存」
主張は困難の筈。だが国連規制の棚上げと資源開発投資などの獲得との引換
えで「核とミサイルの全廃」まで踏み切る覚悟が出来ているとも思えない。
 結局落とし処は「国連決議に基く規制措置の緩和」とIAEA(国際原子力機
関)による査察付きの「北の完全脱核プロセス実行」の段階的な同時履行だ
ろう。イランの場合と異なり中・露・日を含む 6 カ 国の『北の核兵器廃棄』
決議が存在するため、北が「他の選択肢を要求する」余地はない。
 だが最大の障害は、専門家も指摘する、トランプ氏の「地球規模の戦略」
所持への疑問と、北とイランの扱いで露見した『二重基準と言うより、基準
がない』と酷評される「矛盾に満ちた行動」だ ( 朝日朝刊 7/10  P.13 耕論
「電撃会談 政治ショーか」佐橋 亮  東大準教授―国際政治学)。
 さらに非核「平和国家」に転身後の金政権の温存保障問題は、南北統一も
絡んで戦後世界が初めて直面する難問だ。権力維持のため親中派過ぎた身内
の粛清や兄弟の暗殺など非情な一族のため、クーデターの懸念もある(父親
の正日氏は訪中の帰路国境を越えた鴨緑江駅頭で列車の大爆発に遭遇した)。
 中国は既に先般の首脳訪露でロシアとも方針を協議済みらしく、この問題
も絡めた対米交渉で一挙に目途を付ける腹だろう。朝鮮半島問題では、南も
北も、共に経済上、中国依存が避けられぬ体質を無視出来まい。

 一方、トランプ氏は金総書記を突如褒め上げ始めたが、解決が長引き交渉
失敗の烙印を押されて再選に致命傷となるのを惧れるあまり、どうやら経済
制裁の国連決議も反故にし兼ねぬ勢いだ。朝令暮改や態度豹変は彼の十八番
だが、今後交渉の実質的主導権は北京が握りそうで、習氏の独壇場となろう。
 最近北朝鮮当局筋から「対米交渉は直接、自力で十分。韓国の介在は全く
不要で却って迷惑だ。ご自分の問題に専念されては?」と、兄弟喧嘩とも思
えぬ冷酷無残の?お達し?があった。これでは韓国大統領も浮かばれまい。
 結局、朝鮮半島では肝腎の時に小細工を弄し、難問を捌き得る器量の人物
に欠けるようで、南北ともに中国の衛星国に留まる途を歩むのが宿命らしい。
 いろんな事情はあるが、わが国も自前の問題で手一杯なのか拱手傍観する
のみで、些かの協力もなしえぬ文字通り「頼りない隣人」だ。われわれにも
南北分裂の原罪を含め、一半の責任はあるだろう。
 二大社会主義国家を抱える東アジアは、地政学上も世界で最も『共存共栄』
体制の実現が期待される地域なのだが、与件の厳しさも無類である。
  
    4.  秋風と共に幕引きか?UKの?栄華”

 Brexitをめぐる国内政治が呆れるほどの混迷を続ける一方、国際問題では
『大英帝国』癖がすこぶる健在だ。まずイラン問題では、自国を含む主要国
がイランと結んだ「核開発規制協定」を、単独で破棄して紛糾の種を播いた
米国のイラン制裁強化実施には沈黙を続け、その一方他の協定参加各国(仏
・独・露・中)がイランの反発を抑えるための制裁緩和策に苦慮する最中、
地中海でシリアへ原油を運ぶイランのタンカーを「EUの?対シリア制裁 ” 
合意」破りとして拿捕。ひたすら対米支援に「忠誠心」を発揮中だ。
 半世紀を越える滞欧経験で欧洲を知悉するわが畏友根岸隆夫氏が「英国は
ヨーロッパに非ず。アトランティック・ネーションである。」と喝破したの
は将に至当。独立戦争前の多数のアイルランド移民に由来する郷愁なのか?
 
 元々中東は近世以降、英・仏中心の植民政策の被害者だが、現在の混乱の
発端は、第二次大戦後英国が権益温存を意図しつつ決定した「アラブ人居住
地域への新国家・イスラエル建設容認」の線引きにある(1948)。
 だがエジプトの運河国有化宣言で始まったスエズ動乱(1957・第二次中東
戦争)でフランスに誘われて越境、エジプトを攻撃して 以降、イスラエルの
周辺地域侵攻( シナイ半島・ガザ地区・ゴラン高原・第三次中東戦争)を軸と
する領地拡大行動が顕著で、石油と共に紛争の主役となっている。
 シェール・オイル&ガスの開発で自国のエネルギー問題を解消した米国が
今なお中東に容喙しイランを叩く理由は、「中東唯一の核保有国イスラエル」
の実現と自国の軍需産業のビジネス・チャンス維持以外に見当たるまい。
 更に最近の香港の「条例改訂」を巡る大規模デモで、7/4ハント英外相が
中国の『返還交渉条件』違反を批判して曰く「香港の『高度の自治』を明記
した1984年の中・英共同宣言は法的拘束力があり、50 年間は有効。中国が
他国に国際的な法的義務の遵守を望むように、英国も中国に遵守を望む。」
 中国の駐英大使は「香港は最早英国の植民地でない。口出し無用。」と反
論。英・外務省は中国大使を呼び出し、発言は容認出来ぬと厳重抗議した。
 筆者は英米公法の知識に乏しいが「宣言」に違反処理を想定した準拠法の
規定をすることはまずあるまい。とすれば交渉を行った「行為地」の法で、
多分香港かロンドンだ。中国不利?今年の国際法学会は賑わしくなりそうだ。
 
 さて肝腎のBrexitだが、最近漸くEU離脱の可否を再度問う国民投票を支
持する声が高まり始めている。無理もない。脱退を決めた前回の国民投票後
2 年の間に、四輪業界有力企業の大半が撤退・移転を決定、金融界のシティ
脱出件数も漸増気配で、経済のみならず社会の根幹をも揺さぶる想定外の勢
いだ。英国の輸出依存度(対GDP) は目下16.1%、輸入は 21.3%とEU加盟
国の中でイタリヤと最下位を競うが、EU依存度は輸出入それぞれ53.4%、
52.3%と高く、脱退の結果生じる関税負担のみで物価の上昇誘発が懸念され、
失業率悪化も重なり、消費へのブレーキは不可避だろう。
 さらに些か奇妙だが、ポンドの軟化は必至で当然物価の大半に影響する筈
だが、議論は不問扱いだ。怖くて触れぬのかもしれぬが、現在のポンド相場
の水準は、EUメンバーゆえに享受し得うる「強含みのユーロの反射効果」
に支えられているのは確実で、離脱後はこのメリットが剥げ落ちる。
 経済成長率も相当長期間、低迷が予想され、既に萌芽現象がみられる対英
投資の逃避が続けば、ポンド相場の大幅下落もあり得よう。昔日の復活だ。 
 理屈の上では再度の国民投票での「残留決定」以外に妙案はない筈だが、
英国の特殊性は国内の 4つの地域で夫々独自の自治政権が存在、各地域内で
歴史的に深い宗教問題を抱えるなど、戦争でもなければ「挙国一致体制」が
実現困難な精神的インフラが支配することだろう。資本主義の本山で英知に
富む国民の『理性的処断』を祈るや切である。
 蛇足だがわが国を始め『御人好し』のTPP諸国は、徒らに侠気を発揮して
「ジリ貧濃厚の欧洲の老大国」の加盟を容認し、問題(後日の域内でのコモ
ン・ウエルス−旧英領植民地グループ−再生)を抱えるような愚は絶対避け
るべきだろう。
 (時事俳句)
         中国が直面する「領土拡張」政策蹉跌の気配
             面子賭け 暁闇に入るや 初夏の風    汨羅
(HPへの読者登録で無料・自動配信。既刊分はHP「成果給ブログ」欄で
閲覧可能)


 

 

              

 

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