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"成果給”・・・新戦略の核心か?ガン細胞か?

 日本の給与制度を席巻しつつある“成果給"!
 グローバリズムの下、導入不可避とされるこの制度の功罪を、報道される各社の人事問題等を題材に徹底検証してみたい。

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No.115 『藪の中』に終わった米・朝首脳会談***不可避の対中国政策の根本的再検討***

2018/06/20

  
 平昌五輪以来、世界の耳目を集めてきたシンガポールでの米・朝会談が
一先ず終わった。結果は予想外の方向への展開をみせ、世界中、とりわけ
米国・東アジア各国では、日毎に変貌を告げる関連情報の氾濫に当惑中で
ある。敢えて評価をすれば、総論ー東アジアに残された『冷戦の遺物状態』
に終止符を打つ、政治環境転換へのムード造りーでは十分に及第点だ。
 だが各論−その実効性=実現の可能性ーでは、予て米国側から散々喧伝
されていた前提条件(完全かつ検証可能で不可逆的な半島全域の非核化)
が、突如、時間的制約から?ほぼ完全に棚上げされた内容の共同声明への
署名で会談が終り、非核化のタイム・リミットが不鮮明に留まった。
 その結果、折角の金正日氏による『非核化の誓約』も空証文同然となる
惧れがある。祖父(金日成)以来の三代にわたる「食言の実績」もあり、
彼の胸三寸に肝腎の拘束力が依存するのでは落第点だ。従って政治的解決
としての綜合評価は、『当落線以下』と言う他ない。

 一時間近いトランプ大統領の会談後の記者会見TVを眺める間に筆者の
脳裡をかすめたのは、欧洲の近代史に残る独・ソ間のラッパロ条約(1922)
や、その後のミュンヘン会談(1938)への連想だ。とりわけ後者では英・仏
の首脳を完全に籠絡したヒトラーの活躍が有名だ。油の乗り切った当時の
彼の「雄弁」が発揮した説得力には弱冠36歳の『太子党』流で権力の座を
得た Mr. 金の交渉力では比肩すべくもない筈だが、この3件に共通するの
は、得られた合意に潜む国家の命運を賭した交渉特有の「或る種の機密性」
の匂いである。
 論より証拠。今回の会談の仔細を、終了の翌日国内向けに初めて報じた
「北」の国営通信は、会談の成功に加え、交渉の結果「段階的非核化」や
「見返り条件の同時履行」につき米国側の同意を得た成果を強調している。
席上、金氏が求めたらしい「米・韓合同演習の中止」にも、トランプ氏は
「考慮の用意あり」とのニュアンスで応じた由だ。一体何があったのか?
 これらの成り行き−背景ーについては、会談終了後の記者会見では格別
触れられず、プレス側の質問も、プロらしからぬ踏み込み不足だった。
 兎も角Mr. 金は全世界を相手に「朝鮮半島の非核化」を公約し、見返り
の恩恵「体制維持の保証」の履行は不確かのままだが、米国大統領相手に
?善戦敢闘”、世界が注目する『世紀の会談』を乗り切ったと言えよう。
 だが全体の印象はトランプ大統領の独演会だ。一体、双方がかくも柔軟
な態度に終始した、意外で不可解な動機は何だろう? 中国の反応は鷹揚
だが、格別、事前に承知していた気配もない。
 一体何故トランプ氏は、事実上『痛み分け』に終った顛末を、『核心』
となる背景には触れず、だが丁寧に、再三金氏を讃えつつ長々と説明した
のだろう? 会談開始前の厳しいスタンスと比較し、『サービス振り』が
妙に顕著に過ぎると感じたのは、筆者だけではないだろう。

    1. 戦術豹変ー没・具体性で妥協実現ーの背景 

 第一に浮かぶ疑問は合意の内容のアンバランスだ。上記の「北」の国営
通信の報道にもかかわらず、如何にも不自然な感じである。
 金委員長が「半島の完全な非核化」への尽力を「合意文書で公約」した
一方、常識上、代償条件となり中・露も強い関心がある筈の「在韓米軍の
撤退・THAAD(短距離ミサイル) の撤去」や当面「北」にとり最重要な筈の
「経済制裁の解除」が、全く議題に上らなかったらしい点が意外過ぎる。
 最近問題化した「米・韓両軍の定期演習」については、会談でトランプ
氏から再検討の用意を匂わされたようで、記者会見でも同氏は「今や演習
実施は無意味で、コストも莫大」と切り捨てたが、確約ではない。だが米
・国防省はこの発言を受け、会談4日後、韓国政府の頭越しに、次回演習
(8月)の見送りを決定した。
 いかに長年の期待と課題だったにせよ、具体的には「当面の外交関係の
正常化実現」のみで、最初の会談がこのように極めてスムーズに終了する
とは、双方とも想定外だったろう。成程和平ムードは立派に醸成出来たが、
「北」にとり今の処確実に得られたのは、トランプ氏が初対面の金氏を、
異様に褒め上げたリップ・サービスのみである。
 金氏は「目下唯一」の後ろ盾の中国に、この成り行きを何と説明するの
だろう? 事前の彼の緊急訪中(大連)での協議で、あのシブトイ習近平
氏が、かような内容の合意を気前よく了承していたとは、全く考え難い。
 第二の問題は、合意の内容が双方共に『努力目標ベース』、タイム・ス
ケジュールも不詳で全く具体性に欠ける点だ。非核化に時間を要するのは
当然だろうが、米国側の対応が全て相手方の仕振り如何に依存するのでは
合意の拘束効果に迫力が欠け過ぎる。第一点との利害バランスの調整を図
るための「猶予」措置なのか?
 会談の二日後、米・国防省筋から「大統領の任期中に非核化実現」云々
の発言があたが、合意はない以上「希望条件」に過ぎぬ。そもそもトラン
プ氏の場合、ロシア疑惑絡みで訴追の惧れや再選懸念もある。『大統領の
任期』とは何時を指すのか、「神のみぞ知る」だろう。
 「北」では経済制裁の影響で既に外貨調達不全による資金難や民生面で
の懸念(食糧)が生じ、米国側からの「現体制の維持保証」の早期取得が
喫緊の課題化していた筈だ。かように双方に夫々甘い交渉の展開は、余り
に危機感が乏し過ぎて釈然としない。
 第三の問題は、米政権内部の政策意識の亀裂である。およそ政策と呼ば
れる思索には、対象となる領域(平面)と時間軸が作る立体性が不可欠だ
が、トランプ流の着想は専ら平面的で時間軸的展望が弱く、政策としては
非論理的で情緒に走り過ぎる事実が、今回の会談を契機に明白となった。
  6/14に至り股肱の臣の筈のポンぺオ国務長官が、日・韓との三外相会合
で「完全に非核化したことが確認されるまで、経済制裁の解除はない」と
明言、中国にも赴き、王毅外相にも念押しした。多分、トランプ氏の軟化
振りに、同盟国の不信や憂慮への配慮を余議なくされた「歯止め」策だ。

 上記の事情から考えられるのは、11月の中間選挙対策上、トランプ氏側
に今回の会談を是が非でも成功させる意向が強く、敢えて確実にニュース
効果を高めて終わらせるため意識して妥協(条件緩和)を図った可能性だ。
 つまり最大の懸案の『非核化』さえ確約すれば、「絶対条件」呼ばわり
していた見返りの懸案供与も大幅に緩和し、双方の利益となる「会談の成
功」を印象付ける効果の発揮を最優先する「密約」が、米側主導で事前に
既に調整済みだったのでは? 
 会議のスムーズさと所要時間の予想外の短かさ(大統領の会談後の出発
時間まで既定だった)が、この辺の事情を物語るようだ。
 最近ポピュリズム全盛の趣のある米国社会では、「法の下の平等」を貫
く欧洲主要国(排ガス規制違反のVW以下四輪業界トップを軒並み検挙)
と異なり、ノーベル平和賞当選が訴追回避への免罪符となるのだろうか?

    2.    「北」の路線修正の動機?

 金一族で注目されるのは、二代目の金正日氏が二人の子息(長男・正哲、
次男・正恩)を何れもスイスに留学させている事実だ。通例コミュニスト
ならソ連・中国を選ぶのだろうが、この辺に謎がある。歴史的に朝鮮半島
の諸国は、例外なく絶えず中国王朝からの政治的圧力に苦しんだ。文字通
り「歴史は繰り返す」である。だがスイスでは 独(64%)・仏(20%)・伊
(9%) のほかロマンシュ語の4カ国語が公用語。おまけに北・中部で使用
される主力のドイツ語は放送などは別としてスイス訛りの強いスイス・ド
イツ語だ。車に乗せたヒッチ・ハイクの学生に、筆者はオランダ語か?と
訊ねたほど。凡そ語学習得には適地とは言い難い。では何故か?
 おそらく政権の確立期であった正日氏は自らの治世では無理だが「何時
の日かスイス並みの中立国家としての祖国」の誕生を夢見たのではあるま
いか?だが三代目は何を学んだか?
 スイスの国民性は徹底したエゴイズムだ。ナチ時代にはその脅威の前に、
ドイツから逃亡するユダヤ系市民に相当な額の所持(一説では2万ドル)が
なければ入国を拒み、結果として収容所送りに協力となった話はあまねく
知られる。正恩氏の粛清癖とは、無関係と思いたいが・・・。
 「核武装」を憲法に規定する彼の国で、父親の衣鉢を継いだ『核立国』
から『経済立国』主義への転換を決意したのは、米・中の覇権争いが熾烈
化の兆しを見せ始めた本年初に遡る。「核による脅迫」が空振りと判明し
行き詰って『次の手』に悩んでいだ彼に、漸く「好機が到来」した。冬季
五輪参加への招聘に乗って、韓国政権の仲介で念願の対米直接交渉の途が
開かれた。予想外の展開で、この機を逸すべからずだ。相当な妥協も覚悟
で折り合う他なかったろう。
 過去再三、中国詣を拒んできた彼の本来の体質は、多分「抗米」以上に
「反中・独立」指向だったのでは?その意味で突然の対中全面依存姿勢へ
の方針転換は、想定外だった米国の奇襲の惧れに直面し、選択を余儀なく
された「窮余の一策」だろう。漸く現実の厳しさに目覚めた次第だろうが、
偶々窮況のトランプ氏と利害が一致。同氏に救われた形となった。
 将に天祐と言うべきか? 天も時折手の込んだ悪戯をするようだ。

    3. 激化する米・中戦略対決と半島統一への影響

  昨19日、金正日氏の3度目の訪中が報じられた。取り敢えず会談結果の
報告だろうが、当面成功した「段階的非核化」と打開不成功の「経済制裁
の撤廃」問題への対策協議が主眼だろう。だが今回の会談を巡る動きから
改めて東アジアの政局に及ぼす中国の「隠然たる影響力」が確認された。
 朝鮮動乱時の参戦の経緯は別として、今や朝鮮半島問題は中国抜きでは
解決不能だ。現実に南は経済面で、北は政治面で共に中国の実質的「支配
下」にあり、米・朝会談の結果にしても、中国の了解無くして、実効性は
保証されぬ状況にある。既に中国は米・朝会談直前に経済制裁を緩和した。   
 一方、中国側にとっては当面の半島情勢の緊張緩和や「半島の非核化」
「休戦状態の終結」に加え、最終的に在韓米軍の撤退やTHAAD 撤去実現
による脅威の消滅、さらに時間を要する筈の南・北の統一で長期にわたり
緩衝地域が生じる見込みも大きな利点である。だが潜在的な問題もある。
 現在「一帯一路」構想の推進が最優先の状況下、朝鮮半島問題で新たな
負担を蒙る事態は、対「北」投資を含めて回避したいのが本音だろう。
今後は6カ国協議をフルに活用し、最も効率よく北東アジアの「安全保障
体制」を整備するのが狙い目になろう。東北3省に相当数の朝鮮系の住民
を抱える中国には、「統一後の半島の強大化」は新たな問題の発生をも意
味するからである。 
 いずれにせよ拡大・成長を続ける中国市場への経済依存度から、南北共
に中国への傾斜は不可避であり、早晩米国は朝鮮半島政策の見直しに迫ら
れよう。最近の米国の通商政策の方向が、中国を強く意識した戦略的性格
を帯び、世界規模の波瀾を惹起する惧れがある。米・朝首脳会談での米国
の姿勢にも、既にその萌芽が存在する気配が感じられる。最近の強引に過
ぎる米国の政策に、混乱収拾までの展望が不透明なのは大きな問題だ。
 一方韓国と「北」は、久方振りにお互いの協力とイニシアティブで実現
した会談を契機に、米・朝首脳会談にまで漕ぎ着け、目下南北の統一をも
視野に、明るい将来を展望する状況下にある。だが朝鮮半島の統一問題は
東西ドイツの統一に比べ遥かに厳しい因数が存在する。習近平治下の中国
が進める「版図拡大策」と「国家権力による徹底した民生・企業への統制
政策」だ。当面は慎重だが、米国の存在感後退に伴う朝鮮半島への浸透は
時間の問題で、南北ともにこの「中国イズム」への対処に悩むのは確実。
民族の統一を寿ぐまでに、未だ大量の水が鴨緑江を流れ下ることだろう。 

 扨、急展開する東アジア情勢を尻目に「修身"斎家”治国平天下」と無縁
で山の神が震源の汚職騒ぎに手を焼く有様の政権下、手の打ちようもない
極東の君子国だが、そろそろ本格的な対中戦略へ脳漿を搾る能力と識見を
具えるリーダーの登場が待たれる季節。見送るようでは国の前途は暗い。
        
    半島統一の日の近きを祈りつつ
                 驟雨過ぎ  穴を残せる  蟻地獄     汨羅
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