経営

"成果給”・・・新戦略の核心か?ガン細胞か?

 日本の給与制度を席巻しつつある“成果給"!
 グローバリズムの下、導入不可避とされるこの制度の功罪を、報道される各社の人事問題等を題材に徹底検証してみたい。

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No.108 戦中末期世代の抵抗(其の二)**自縄自縛の日銀・絶望的な財政再建への苦言**

2017/08/02

 
 No.108            戦中末期世代の抵抗(其の二)      (2017.8.02.)
        ***自縄自縛の日銀・絶望的な財政再建への苦言***
 
 戦後72年、変節したのは保守政治(本ブログ前号)だけではない。経済面で国民
生活に大きく影響する財政・金融政策の変容も、相当極端だ。こちらも時期的には自
・公政権発足後の約4年半だが、政治と同様、国民の利益に奉仕しない疑いが濃い。
 都議会選挙の大敗でどうやら潮目が変わる予感が漂う現時点での、安倍政権の目玉
政策「アベノミクス」の功罪をレビューしてみたい。

             1. 財政再建の棚上げと『脱線ムード』の金融政策
 
 経済政策面での安倍政権の前途多難は、アベノミクスの呼称と共に賑々しくスター
トした時点から、多くの識者により予見されていた。当時のターゲットは、短期的に
は長期デフレ(伸び悩む物価・消費動向)からの脱却実現、中長期的にはリーマン・
ショック対策の尻拭いの「財政再建」だった。
 党内の内紛に加えフクシマの対策に追われ、期待を裏切って3年間ほぼ無策のまま
退陣した民主党政権への反動もあり、予想外に早く政権復帰を果した自民党の政策は
『安倍・再生内閣』の下、国民の「失望ムード」の一掃を図って意欲的だった。
 だが景況回復のテコとなる「公共投資の財源の確保」と懸案の「財政再建の実現」
という二律背反要因を抱え、これを解決する「ウルトラC」を先行き不透明な「景気
回復ー税収増」に賭けていた。この点がまさしく政策構想の抱える『アキレス腱』で
あった。
 一方このネックの解消には、国内面で財政・金融両当局間の「資金供給上の阿吽の
呼吸」、対外面ではドル・円為替相場の「好ましい水準の維持」が不可欠だった。
 この情勢下、任期が到来した白川日銀総裁の後任には、海外を含む実体経済に通暁
し、財政当局との緊密な協力が可能で、政治的バランス感覚に富む人物が求められ、
黒田総裁(元財務官・前アジア開銀総裁)が衆望を担って登場した(Mar. 2013) 。

     i  )      景気浮揚に血迷った? ゼロ金利策の蹉跌

 長期デフレと格闘する経済動向に対処すべく、安倍政権は内・外の著名な、複数の
経済学者を顧問(内閣参与)に起用した。だが何れも成長理論の信奉者だったせいか
前例も乏しく変幻極まりない最近の「実体経済現象」に手を焼いた (例:想定外だっ
た原油価格の急落ー>円高と輸入物価下落に貢献)。結果的に的を射た勧告は乏しく
中には率直に誤りを認め、前言(景気浮揚至上論)を撤回したノーベル経済学賞受賞
者も現れた。
 これらの勧告を比較的重視した黒田・日銀は、新総裁の意欲的性格をも反映した、
やや問題含みだが日銀初の「異次元」の異名を付けた金融緩和策を次々に発動した。
   1.  債券市場での新発長期国債・既発長期国債の大規模な購入(Apr.2013)
   2. ゼロ金利政策(公定歩合のマイナス金利化容認・Jan.29.2016)
   3. 量的資金供給から長・短金利水準操作(イールドカーブ・コントロール)
     重点へ手法転換。金融緩和策は継続  (Sep.21.2016)
   4. 民間企業の社債・株式・ETF(市場指数連動型の投資信託)の購入(同上)  
 いずれの場合も政策内容はユニークだが、周到な背景説明を欠き批判もあった。
とりわけ事前の「市場との対話」が不十分で、関係者の不満は現在も少なくない。
1.は年間の予定購入規模が巨額(80兆円)で、債券市場で現物が不足する状態に陥り、
その結果、長期金利水準を歪め、市場の健全な発展を阻害中との批判が今も強い。
2.はメガ・バンク、地銀を含む各種金融機関の預・貸金利、経営に甚大な影響を及ぼ
し、地銀・信金の合併を誘発中だ  (スイス中銀は一時、短資流入阻止目的で採用)。
3.と4.は共に景気浮揚を図る超金融緩和手段(年間6兆円)だが、1.の続行が問題視さ
れ始めた後の代替策である。4.は1.と異なり、産業政策との整合性(特定企業・
業界への影響)や、1.と同様、市場の需給関係を歪める問題が浮上中だ。
 そもそもの狙いは消費の回復と年率2%の物価上昇(インフレ・ターゲット)による
景気刺激、潤沢な資金の提供と低金利による企業の設備投資の誘発、国の国債費(支
払い金利)の削減効果なども期待した措置だが、学者も含め実体経済に関する認識が
甘すぎた。
   当初約2年間、 所得不振で物価は下降気味、民間投資は景気の先行き不透明のため
「笛吹けど踊らず」で空振り。企業は円安で増益となっても、賃上げには頬冠りで、
専ら自社株買戻しに没頭した。諸制度の発動も意欲的な反面、齎す効果や影響などの
事前の研究や根回しが不足気味で、やや拙速の印象だった。
 問題は、今や日銀の国債保有額が既にGDPに匹敵する規模に及ぶ事実* で、早晩
海外筋から財政ファイナンス(赤字国債の中銀引き受け・不健全財政の象徴)の批判
が起る惧れがある。万一売り浴びせに遭えば、債券価格と円相場双方の急落、さらに
長期金利の急騰が生じ、国内金融機関や日銀自身も巨額の損失を蒙る可能性がある。
( *註:2017.5月末 約500兆円、国債発行総額の40%. 欧米主要国では15%程度。
尚、自民党行政改革推進本部から政府への勧告「日銀の金融政策に関する論考」も、
この点を指摘する。 Apr.19.2017 )
 幸い米国の景気回復ムードのお蔭で、米国の株価上昇に加え為替相場の円安が進み
「偶発的」他力本願で株価が大幅上昇する一方、このような要警戒問題も浮上した。

     ii )       遠ざかった財政再建・絶望的な基礎収支の均衡達成

 容易に改善しない景況に悩み、安倍政権は既定の消費増税 (2017/4予定) の見送り
を決断( 2016/6 )、この決定を契機に、政権と財務省の関係が微妙に変化した。
 黒田総裁は「予定通りの消費増税実施」を支持し、その前提で景気への影響を勘案
した金融緩和策もタイムリーに配慮した。ところが首相官邸はこの緩和策を歓迎しな
がら、顧問団の勧告に従って増税の先送りに踏み切ったため、官邸が裏切った印象が
強く、政権と総裁の出身母体・財務省との間にも『隙間風』が吹き始めた。政府内部
の「経済政策の一体感」の喪失である。
 現在、都議選大敗・政権支持率急落に加え、消費増税見送りでアベノミクスの目玉
だった「財政再建」も頓座が確実で、公約した 2020 年時点の基礎的財政収支(プライ
マリー・バランス) の 均衡達成は、最早絶望的である。政権も再度の財務省との「鞘当
て」は致命的で次の消費増税実施(2019/10)は不可避だが、漸く回復の兆が覗き始めた
景気の後退リスクも増幅する。さすればこの政権お得意の”はぐらかし”  戦法も通じな
い財政赤字累積で、「経済」面での『不良遺産』となる気配が濃厚だ。
 日銀が固執する2%の物価目標の実現時期も、この程” 2019年度「頃」 ”  に先送り
された(Jul.20.2017)。これで6度目で、既に政策目標でなく「努力目標」化しており、
明らかな政策の?動機の錯誤”だ。「拘泥する」以前に「発想の転換」が必要だろう。
 
 最近俄かに注目されている”一罰百戒”的な「超過勤務黙認企業」の取り締まりや、
労働力需給の窮迫に絡む「働き方見直し」ムード・キャンペーンが、「賃上げ」に至って
冷淡だった産業界への、政府筋の手の込んだシッペ返しでは?との見方もある。だが
生産年齢人口の減少予測などは、周知の事実だ。わが国の経済政策のネックは、案外
省庁再編による経済企画庁の格下げ(大物担当大臣の消滅)が齎した、信頼すべき経済
予測中枢の弱体化も手伝った、民間セクターの「景況判断の混迷」にありそうだ。
根拠の乏しいインフレ・ターゲットより先に整備すべき経済インフラがあるのでは?

       2.      政策修正の公算と政権の寿命

    最近米国で「財政ファイナンスは健全」と説く学者が現れたが、過去二回大戦後の
 ハイパー・インフレに悩んだドイツは、憲法で『財政赤字』を規制中で、EUも健全
 財政擁護派だ。日銀も戦後一貫してドイツ連銀の姿勢を模範としてきた経緯がある。
    中央銀行の任務は本来、内・外両面での『通貨価値の安定擁護』の筈だ。目下欧・
米の 中銀の最大の関心事は、リーマン・ショックによる不況回避のため『緊急放出』
した過剰流動性の回収を、景気動向を勘案しつつ如何に巧妙に実現するかである。
 だが「失火」元責任に悩む米連銀も、微妙な景況に確信を持てず困惑。最近、一度
は決意した引き締め実行を土壇場で躊躇う始末だ(7/26)。しかし「出口対策」と言う
ものの、本質は異常事態の『手仕舞い』、つまり正常化策である。リーマン事件後既
に9年、世界的 「放漫金融状態」にも終止符が打たれるのが道理の筈。
 日銀とて例外ではあるまいが、現時点での修正が致命傷ともなりかねない「アベノ
ミクスの旗印」を下ろすに下せず、独走を続ける腹らしい。最近メンバーが交替した
日銀の新しい審議委員二名も、総裁の意向『忖度』派のようだ。

 黒田総裁就任時、財務官の先輩だったミスター円・榊原氏が、「2%のインフレ率
達成は殆ど不可能。無理やりやろうとすると資産バブルになって株価や不動産価格が
必要以上に上昇する。だからやらない方がいいんだが、黒田さんは真面目な人だから
一生懸命やっちゃうと思う」(資料Wikipedia) と的確に予言した。多分「頑固」な人
の方が正しかろうが、首相の「改憲意識」同様、過剰摂取は国を危くする代物だ。
 ともあれ内外の政治・経済情勢が一段と不透明化する現在、安定化の進まぬわが国
経済の基盤上に、懸念されていた株価と地価のバブル化の兆が既に顕在化し始めた。
 
 結局安倍政権の財政・金融政策は、専ら株式市場の活性化に頼った景況感維持に重
点を置き過ぎ、物価目標(年率2%)にも拘り過ぎて「木を見て森を見ず」だった。
 肝腎の政策目標『財政再建』は挫折の一方、新たな火種?国債問題”  を抱え込んだ
のは戴けない。安倍政権は、政治 (改憲)のみならず経済面でも、わが国が戦後の悪性
インフレから学んだ貴重な教訓の『財政モラル』を、些か傷付けた責任を免れまい。
 詳論は避けるが、筆者はアベノミクスの三本の矢の一つ『成長戦略』を支える目玉
政策「岩盤規制の撤廃」での『JA組織への挑戦』などを評価するに吝かではない。
 だがこのような基本方針への対応ではー当否は兎も角隣国の汚職撲滅策でも明らか
な通りー「徹底」と例外の無い「正統的アプローチ」が鉄則だ。トップの体質が浮き
彫りの不透明で没モラルな対応では、国民の『信』も作戦の『果実』も得られまい。
   
 最近内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」に対し「政府は財政健全
化シナリオの『粉飾』を何時まで続けるのか」と題する、まことに時宜を得た労作が
発表された(森信茂樹・中央大学(院)教授 DIAMOND on line jul.26.2017)。
筆者の財政学の素養不足のため100%は理解しきれず識者のコメントを期待したいが、
同教授の主張通りなら、財務省を含めた政府の国民に対する『欺瞞行為』で、政局に
波紋を及ぼすこと必定だろう。
 目下日経紙に連載中の高村・自民党副総裁の「私の履歴書」の中で、戦時中、和平
主義を貫いた異色の内務官僚だった御尊父の至言「内政の失敗は一内閣が倒れれば足
りるが、外交の失敗は一国が滅びる」を拝見(Aug.2 朝刊 P.36)。米国の現状からも
頷ける卓見だが、わが国にとって戦後最難関の対ロシア交渉を控え、緊迫する米・露
関係の中、党派を超えた国家の知性と総力を結集する組閣が待たれる所以である。

  新季題・「豪雨」 と安倍政権   
            心まで   濁流に?む   豪雨かな      汨羅
        
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