経営

"成果給”・・・新戦略の核心か?ガン細胞か?

 日本の給与制度を席巻しつつある“成果給"!
 グローバリズムの下、導入不可避とされるこの制度の功罪を、報道される各社の人事問題等を題材に徹底検証してみたい。

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No.105 米・新政権の瀬戸際外交の前途**見直し必至の対米依存戦略

2017/01/03

(以下 前号に続く)
 
  新政権の実力が試される外交面では、急変貌する国際情勢下、即刻具体的
な対応に迫られる。トランプ氏は、既にオバマ政権が実現し、現在実行中の
NAFTA(北米自由貿易協定)の廃棄と、関係国が合意済で議会承認待ちのTPP
(環太平洋戦略的経済支援協定)の見送り方針を発表。基本的な外交方針は、
対中強硬・対露宥和路線に求める意向だ。既に台湾問題で従来の米国の路線
から外れた台湾総統との電話を巡り、中国と一悶着あり、緊張気配である。
 施策の主なものは、先ず合意済事案の実施を強く迫るTPP/NAFTA 関係諸国
への政策変更の釈明と説得。次いでテロ対策が絡む中東・IS問題でのロシア
との協議、さらに海洋進出を含め欧・亜での覇権拡大を狙う中国対策だ。

    4. 難問山積・「混乱と修正」不可避の外交基本政策

 とりわけTPP潰しは重大な信義則違反で、各国に最大の無理難題を主張
した張本人の米国が、一挙に「御破算」を宣言する『前代未聞の変身劇』で
ある。わが国のみならず東南ア・米州全域(カナダ・メキシコ・ペルー・チリ)で,今後対米
不信が一気に高まろう。各国にとっても政権存続に係わる面子問題なのだ。
 既に機能中のNAFTA の破棄は、さらに言語道断。この協定による対米輸出
の関税ゼロ化に期待し、自動車関連業界を中心にメキシコへ進出し活動中の
企業数は、日系だけで1千社に達する由。関税復活となれば、直接被害を蒙
る業界への影響のみならず、メキシコ経済の根幹をも揺さぶろう。
 わが国でも、基地問題を含めた対米不信感の増大など、「同盟の危機」に
波及する重大且つ不測の事態を招く惧れがある。

 中東・ウクライナ問題での対露交渉も、至難の筈。既にEU側は独・仏が
“兵器産業支援を念頭に武力強化に傾く”米国抜きで、露・ウ両国との「四
カ国ベース」での解決姿勢を固めている。『欧州問題で米国のための犠牲に
なる戦火の拡大は、真っ平御免』の姿勢だ。
 従来、対露強硬派の英国がEUで米国の意向の代弁と調停の二役を演じて
きたが、離脱後はEUの米国軽視が強まるのは必至だ。第一歩は米国に比べ
欧州諸国の負担が重過ぎる『対露経済制裁』の撤廃である。トランプ政権に
とって、この問題の『捌き』は外交能力が問われる最初の「試金石」だ。
 失敗すればロシア・EU双方から舐められる破目となるが、既に決定権が
「機を見るに敏」のプーチンに握られている印象だ。オバマ政権が最後に発
動したサイバー介入への制裁に極めて冷静に対応した辺りに、彼の並々なら
ぬ外交手腕が窺える。
  目立たぬが重要な問題は、米国色後退後、中東地域の問題処理に積極的な
ロシアへの「トルコの傾斜」傾向だ。制裁解除による通商関係ー対露輸出・
天然ガスの安定的輸入ーの復元と対IS政策での協力強化の両面で、トルコ
の得る利点は大きい。領域侵犯したロシア機撃墜や駐土ロシア大使射殺事件
にも拘らず、両国の関係は緊密化している。
 クーデター処罰に絡む人権無視と難民処理問題サボタージュで、ドイツと
不協和音が発生し、今やEU加盟が遠のいたトルコは、漸次対露ミサイルの
撤去まで進むだろう。冷戦以降の対露包囲網(NATO)の重要な一角の崩壊だ。
旧ソ連崩壊後EU/NATO への加盟が実現し、ロシアの猛反発を押し切って設置
されたチェコやルーマニアのミサイルも、後に続くのは時間の問題だろう。
(現に12/29 ISを除く当事者間で難航の挙句漕ぎ着けた『シリア内戦の全面
停止』合意も、米国抜きのロシアとトルコの完全な主導で、イランも協力し
成功した。) 
 尤も基本的な懸案は、共和党首脳の「対ロシア厳戒」姿勢だ。サイバー攻
撃への報復でオバマ政権は35名の駐米ロシア外交官の国外退去措置を発表
し、トランプ外交の親ロ姿勢に最後の冷水を浴びせたが、共和党重鎮はこれ
を強く支持すると声明、早くも党内調整が容易でない気配だ。
 
 さらに最近、国連安保理でイスラエルの『ヨルダン川西岸への越境入植』
に対する非難決議を巡り、従来、常任理事国の特権を行使し、常に反対票を
投じて決議成立を葬ってきた米国が、「棄権」して成立させる態度に出た。
 対イスラエル政策の画期的転換だが、ロシアの中東での存在感が拡大する
一方、米国の対イラン姿勢の軟化に反発するサウジに同調したアラブ諸国の
動きを黙過出来ず、「最早これ以上イスラエルの横暴支持は無理」と判断し
たのだろう。
 この背後に、一貫してイスラエルの姿勢に批判的だったオバマ大統領の決
断が働いたのは明らかだ。多分ユダヤ系ドイツ移民のトランプ氏が率いる新
政権の「反アラブ姿勢」への危惧があったのだろう。スタート早々新政権は
難題のイスラエルの処理でも鼎の軽重を問われる事態に直面しそうだ。
 
 だが最近、ウクライナやシリア問題(アレッポからのIS排除)、アフリ
カでの紛争(南イエメン・スーダン・ナイゼリア )でも、有力国の武力介入による解決の
傾向と国連やNATOなど国際的機構の無力ぶりが顕著だ。新政権発足後の米国
外交のスタンスと能力が、改めて注目される所以である。

     5. 決め手は『避けられぬ中国との手打ち』?

 これに比べ対中国外交は、「国際秩序の尊重要求」などいやにトランプ
氏の強硬姿勢が目立つが、早晩その修正は必至で、現実には新たな発展の
余地が大きい。理由は単純。当面、新政権にとり得点がほぼ確実に稼げる
可能性は、中国対策以外に見当らぬためだ。
 第一に利害対立の可能性。オバマ氏は習近平の『太平洋・アジア地域の
分割』構想を退けたが、これは同氏の政権で『アジアへのリバランス』を
唱えた外交戦略の建前上、あくまで単独覇権に固執の他なかった結果だ。
 だが既に米国企業の中国13億市場への依存は無視できぬ規模に達して
おり、中国は着実に米国経済界の『急所』を握り始めている。
 とりわけノウ・ハウが絡む流通サービスと四輪業界の依存度が大きい。
中国は今や世界最大の四輪市場(本年度登録台数予想は2600万台。因みに
米国は約1700万台,日本は497万台)だ。ここでVWに次ぎ第2位を占める
GMは、中国市場を失えば破綻はほぼ確実だ。さすればトランプ新政権は
「国内の高度成長」どころでない破目に陥る。喧嘩は出来ぬ立場なのだ。
 第二は、日本を除くアジアのほぼ全域に存在する潜在的な反米感情だ。
朝鮮とベトナムでの戦乱の後遺症は根深い。分裂国家(朝鮮半島)のほか
インドシナ三国で未だに残る爆撃(時限爆弾・ナパーム爆弾・枯葉剤)の
後遺症状が、対米不信感の払拭を妨げているのが現実だ。米国は跡始末に
も無頓着。オバマ氏の期待ほど、アジア諸国が彼のアジア・シフト政策に
魅せられている訳でないのは、最近のフィリピンやタイ・インドシナ3国
・ミャンマー・韓国の対中接近姿勢からも明らかだ。現実無視の深入りは
回避するのが賢明だろう。
 第三は米国民に見られる伝統的な親中国感情だ。植民主義時代から欧州
諸国や日本と異なり、米国は軍隊の代わりに宣教師を派遣、爾来対中パト
ロン感情が強いようだ。現在ハーバード大に留学した革命後の中国留学生
総数は20万名に及ぶのがその証拠。太平洋戦中も、米国の対シナ支援は
物心両面で随分と手厚いものだった。中国側にも近親感があるようだ。
 第四は対中接近が、中・露提携進展への『楔』効果を齎す可能性を持つ
点だ。社会主義国のリーダーを競う中・露両国の間には、相互に抜き難い
不信感があり、喧伝と異なり約定済の大型案件も進捗度は至って低い。
 米国の基本戦略も、軍部では依然宇宙戦略で先行するロシアへの警戒心
が強く、核削減問題でも終始先送りされ不信感がある。
(洋の東西を問わず「コミュニスト」はオポチュニスト的で虚言が多く、
その「政権」も情勢如何で政策は変幻自在。何れにも「信義を守る」意識
は低い。中国の『政経分離』論や最近の日露交渉でも明らか。筆者が欧亜
で60年余ジックリ観察した結論だ。主因は「対資本主義恐怖心」だろう?
例外が周恩来・ゴルバチョフくらいなのは悲しい。)
 
 このような情勢から判断し対中提携で米国の失うものは、既にアジアで
挽回が困難なほど存在感が失せつつあった「盟主のプライド」位だろう。
成る程、中国はこの機会を利用し『アジアでの覇権』確立に邁進しよう。
 一方、現在の米国には、実利の乏しい覇権に中国ほどの資金を投入する
余裕はあるまい。「国際法秩序の尊重」も、殺し文句には程遠い。欧洲は
市場が欲しいし、アジアは援助に眼が無い。当分は「中国の季節」だ。
 遠い将来の内部崩壊まで、衝突回避で平和共存を続けるほかあるまい。

     6.トランプ・ショック・対米姿勢の転換は不可避か?

 出現が想定外だったトランプ政権は、既に発足前にわが国に対する駐留
軍経費負担の増額と日・米安保条約の規定する片務的防衛義務の修正を、
非公式だが要求した。早晩、両国間の紛糾の種になりそうである。
       
    ( I )   戦争体験世代の「日・米関係」観

 大晦日の朝日・経済欄のコラム「気象台」は、『ケネディ駐日米大使殿』
と題する米国新政権の発足に対する大方の日本人ー特に戦争体験を持つーの
共感を呼ぶ達意の名文で“対米注文”を吐露している(P.12)。
 内容はトランプ現象を民主主義の機能不全とする悲観論に組せず、米国の
民主主義は多民族国家ゆえの復元力がありと期待、「トランプ登場は後世の
歴史には『草の根の仇花』の一言残るだけ」と断定し、さらに民主主義なし
の米国もグローバリゼーション抜きの日本の生存もありえず、「日米同盟の
根幹は両国の価値観の共有」にあり、60年余を米国に係わってきた、この
一人の“日本人の気持ち”を米国民に伝えて欲しいと結んでいる。

 文中、暗殺者の凶弾に倒れた大使のご尊父・ケネディ大統領が進めた黒人
の差別撤廃のための公民権法制定が、オバマ大統領の誕生に繋がったことも
「米国ならではの偉大さ」と讃えているが、大使は「次代の大統領候補」の
期待が高かった叔父上まで、テロで失っている。公民権運動では黒人代表の
殺害も相次ぐなど、今日までにアメリカン・デモクラシーの支払った代償は
決して小さくない。
 問題は現在の『過剰なポピュリズム』が果たして“一過性症状”なのか、
国民性の本質の変化で定着の惧れもあるのか?だ。欧州的視点が強い筆者は
「楽観は禁物」と看る。意識過剰かもしれぬが、『合衆国』の体質にはリン
カーン以降ケネディ兄弟、レーガン(未遂)に至る“暗殺のマグマ”が潜在
するのでは?つまり、積もった社会的不満を一挙に『ガス抜き』する、古い
歴史のある国々では最早『禁じ手』となっている解決法だ。流石にこれが些
か進歩して「殺さずに殺す」今回の民主的制度の活用にまで「昇華」されて
来たのでは?必然的に「表現」方法は、殺人に代わる『過激』さを帯びる。

 ケネディ大統領が“陸の孤島”だった西ベルリンを訪れ、前年の夏に構築
された『ベルリンの壁』の傍で「(自由を求める)私もベルリン市民だ!」
と述べて熱狂的支持を集め、翌日聴衆が樹木に鈴なりのベルリン自由大(フ
ォード財団が寄贈)の校庭で行った早口で難解なスピーチを偶々留学中だっ
た筆者も感銘深く拝聴した。それ故半年後の夢想だにしなかった暗殺の凶報
に市民は驚愕、ベルリン陥落時に体験したソ連軍の蛮行と戦車の突入再演を
惧れる不安の訴えで、ベルリンと西ドイツ間の電話は五日間常時不通になる
始末だった。筆者は、ケネディやオバマのような『理性的』タイプの治世を
長く保てない米国の政治的体質、特に兵器産業やウオール街との腐れ縁には
今もって批判的だ。
 
 筆者は終戦時10歳、国民学校五年生だった。徳島市が空爆で炎上した後、
疎開した吉野川畔の『阿波藍』の名産地で豊かだった農村でも、多数の青年
が『帰らぬ人』となっていた。日露戦争で難攻不落の旅順要塞を陥落させた
「勇猛連隊」の名声が仇となり、激戦地のインパールやグアムで散華・玉砕
したのだ。半年位は村の駅頭に『英霊』を迎え夫々の生家まで送るのも学校
の行事で、出される「白米の握り飯」の饗応が食糧難下での楽しみだった。
 その中、進駐した米兵を載せた列車も英霊と交互になり、車窓から景気よ
く投げるガムやチョコレートに群がる生徒達を、黙って見守る引率の先生の
寂しそうだった横顔が未だに脳裡に残る。敗戦と戦後の体験は厳しかった。
 学制改革で中学に無試験入学したわが世代は6・3・3 制の一期生。珍しく装
丁された教科書(他は新聞紙状)「新しい憲法のはなし」で叩き込まれ暗記
させられた『新憲法の申し子』世代としては、朝日のコラム投稿者に完全に
同調する。だがこのコラムは、結局『日米関係の現状維持』への期待表明以
上のものではないのでは?戦中派は敗戦から得たものを生かし、もう一歩、
踏み込む義務がある。
    (II)     防衛能力と平和憲法のジレンマ 

 トランプ政権の注文の「駐留費負担の増額」はオカネで済む話としても、
尖閣はじめ防衛を米国青年の流血に任せて傍観者に留まる『条約上の権利』
の主張は、現実的に有効なのか? 法理論上「不沈空母」としての基地提供
の反対給付ではあるが、『米軍引揚げ』で脅された場合、韓国同様、選択の
余地は広くあるまい。代替条件として持ち出す自衛のための「核武装での再
軍備」も、内外の反響を考えれば『孤立』だ。現実的な選択肢となるまい。
 結局、基地返還は実現しても防衛義務は双務的となろう。おまけに対中・
ロシア用の『抑止力』(脅し)に活用を図れば、従来米軍が自力でカバーし
ていた「海外での戦闘」に参加・代替する条件まで?まされかねない。
 つまり日・米軍事同盟の濃密化だ。だが改憲は当然の前提として、泥沼化
は不可避の上、「軍部の完全な復活」となる。将に『普通の国』だが自国民
310 万、アジア全域では2千万の前大戦犠牲者を自他共に忘却出来るのか?
 財政的にもアジア諸国への道義上も全くあり得ぬ相談だ。ではどうする?
残る道は『米・露を含む東アジア諸国の不戦条約』以外にあるまい。
  
 だが、この問題は至難且つ北朝鮮や台湾の処理まで係わるので、ある程度
個別・積み上げ方式で進める要があろう。その前提は:
 1)合意の最大の障害となる北朝鮮への対応で、米国が動く公算はゼロに
近い以上、先ず中国が本来の責務を果たし「朝鮮半島の核抜き』への第一歩
として、北の核撤去を説得・実現する必要がある。米国の対北融和はその後
の問題だ。わが国は腹を据え、腹を割った対中協議の覚悟が必要だ。
 2)ロシアの持出す条件は、専ら対米に限られようが、わが北方四島問題
が巻き添えとなる惧れも十分あり、腹黒いプーチン政権が健在の間は極めて
困難だ。トランプ政権の対ロ接近は、オバマの積み残した核兵器削減交渉の
第二幕の仕上げが狙いの一つだろうが、最近の北朝鮮の動向(米国向けICBM
大陸間ミサイルの開発気配)などが妨げとなる他、プーチンが狙う対ロ規制
解消も、決め手はNATO問題も絡む欧州の出方に影響され簡単には進むまい。
 3)困難だが最も進め易いのは、日・中間の宥和実現だ。これが不戦条約
の“中核的要件”となろうが、そのためには、対米関係(特に基地問題)に 
メスを入れざるを得なくなろう。「その腹が我々にあるのか」が最大の問題
だ。またこれに付随して朝鮮半島の統一・台湾問題への対処についても、改
めて腹を固める要があり、両地域への賠償や経済的支援も問題となろう。
 まるで『腹芸』連発だが、最近日・中双方とも口は達者だが腹の太い政治
家が少ないのも問題だ。嘗ての田中・大平・周恩来の時代が懐かしい。

   メリケン粉  浴びる気分の  初日の出    汨羅
      
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