経営

"成果給”・・・新戦略の核心か?ガン細胞か?

 日本の給与制度を席巻しつつある“成果給"!
 グローバリズムの下、導入不可避とされるこの制度の功罪を、報道される各社の人事問題等を題材に徹底検証してみたい。

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戦後七十年に見るサムライの変貌***ハラキリを忘れた日本男児***

2015/09/15

   
「人之将死、其言也善」(人のまさに死せんとするや、その言や善し)。孔
子の高弟だった曾子の言葉とされるが、伝えたのは中国・春秋時代の周王朝
で長子だった泰伯だ。彼は父の文王が後継者に末弟を選んだため、次弟を伴
って故国を去った。長子相伝が通例の古代中国で、異例の事態が国家の安寧
を損ねることを慮り、自ら国外に身を引き未然に禍根を絶ったのだろう。
  二千数百年前の話だが、漢語特有の味わい深い言葉だ。本来「鳥の將に死
せんとするや、その鳴や哀し」に続くのだが(諸橋轍次・中国古典名言事典
P.45)、わが国ではよく“独り歩き”する。
 
 読者諸賢から「安倍談話のことでは?」と問われそうだが、それはチト賞
め過ぎだ。こちらは支持率維持に腐心したのか、想定外の総花的スピーチ。
長過ぎたので焦点がボケ、迫力も不足。上記の名言の対象には程遠い。
 尤も「与党」内での憂慮で急遽軟化し「閣議決定」となった“君子豹変”
の背景は、多分記念日が迫って漸く気付いた『抑止力』ー例年戦中派世代を
代表し平和主義に徹して来られた天皇ご夫妻の「お言葉」ーとの平仄だろう。
『錦の御旗』のご威光は、戦後70年の今も依然この国では健在?らしい。
おまけに長州勢は、“伝統的”にこの旗に弱そうだ。
 
 冒頭から微妙な話題だが、格別政局まで意識した訳ではない。例年夏休み
の読破対象に選ぶ数冊の図書の中に、今年は筆者が財界人で唯一の私淑する
人物・品川正治さんの『戦後歴程―平和憲法を持つ国の経済人としてー』 
(岩波書店 2013 Sep.)があったのが動機だ。
 内容の一部は雑誌「世界」に連載中、強く印象に残り、本ブログでも紹介し
た経緯(No.89 Feb.17.2014) がある。品川さんは二年前の8月に逝去された
が、その直後に、絶筆となった連載中の文章を纏めて刊行されたのが、この
著作だ。従って『遺訓』の印象が強く、惜別への抵抗感なのか安易に紐解く
のを躊躇う感情、さらに早晩読まねばならぬ事態が発生しそうな予感が奇妙
に交錯したまま、時日が経過していた。
 だが自民党の政権復帰後2年半、この間にわが国社会では明らかに「異常
な緊張感」が増大した。無風の総裁選でご満悦らしい“安倍”談話に溢れる
楽観ムードとはズレがある。世上、国の将来への不安の高まりが著しい。
 品川さんの遺作の選択は、「このまま事態を見過ごせぬ」思いが、『健在
なりせば何を語られたか?』を確認したい強い衝動となったためである。

         1.  戦前ムード復活?安定感を欠く世情

      i)  緊張感ゼロ!余りに粗雑な「国運」決定論議

 消費税再引き上げの先送りで、アベノミクスの重要課題だった“財政再建”
は犠牲になったが、超金融緩和策の継続による『株価の上昇』と、先行きが
少々不気味な大幅の円安が齎した『企業業績の回復』で、最近の中国発の激
震は悩ましいものの、経済面は一息吐いた状況だ。
 だが冷静に観察すると、この国の社会の動向は明らかに『変調』気配だ。
先ず政界。70年間ひたすら「平和国家」を売り物にしてきたわが国は、今
戦後最大の国運の岐路に立っている。つまりほぼ間違いなく再び「海外での
戦闘・殺戮行為に乗出す」国家に変身する事態に直面している。
 だが憲法違反に頬かむりで進む国会の審議は、与野党の議論が全く噛み合
わず形骸化、スケジュールの消化のみが焦点の信じ難い展開に終始している。
 これこそ「多数の国民の生死」に係る問題の復活だ。『粛々と片付ける』
など国民をコケ扱いの対応は、マトモな民主国家では本来あり得ぬ話である。
 おまけに「カネがなければイクサにならぬ」筈だが、この路線に不可欠な
「防衛予算増枠」の財源は、政権が予定する「経済成長による税収増」では
到底賄えない。既に中国始め途上国の景気後退の影響が、明らかに拡大中だ。
 その一方、財界への“アメ玉”で公約していた法人減税や、役員報酬引き
上げのための税法上の手直しは、早々と実現決定済みである。
 これらのシワ寄せは、すでに年金カットが中心の「社会保障費」と少子化
を理由に教員数3千名削減で捻出する「教育費」の圧縮に、照準が合わされ
ている。つまり対外抑止力の強化を口実に、またしても国民生活に犠牲を強
いる形で、しかも専ら対米協力拡大を狙う『軍事力強化』策の出現ー満洲事
変・5・15 事件以降八十余年ぶりに『何時か来た道』の見事な復活ーである。
                 ======
     ii)   与党両党内の体質の変化
                       
 この路線を遮二無二強行する首相が、米国議会や五輪招致協議の場で頻発
した『食言』も気懸りだ。前者は国会の存在を無視した自衛隊の海外出動の
『確約』、後者は折角のダヴォス経済会議で好評を得たPR努力を帳消しに
した、フクシマの汚染処理に関する実態無視の『欺瞞的保証』である。
 いやしくも一国の宰相の公式の場での発言だ。裏目が出た際の「責任」を
どう取るのか判っていたのか疑わしい。本来辞任に値する軽率極まる言動だ。
 今回の談話でも明らかのように、彼は歴代首相の中でも能弁ではトップ・
クラスだろう。だが口数は多いが内容は乏しい上、前言を翻すことも再三で
「発言の軽さ」が常識を超えている。
 集団的自衛権やTPPでも、問題の重大性と長期的影響度に比べ「政治的
理念」や「政策の裏付け」がお粗末で、感銘や共感を呼ぶ説得力が伴わない。

 他方、去る12月に発効した戦前の言論規制に通ずる特定秘密保護法や、直
近の私立を含めた教科書内容や学校教育の指導への介入強化策、さらに複数
の自衛隊幹部による明らかなシビリアン・コントロール抵触と国会軽視行為
(審議中の安保法案成立前の訓練実行の指示・米国防省でのゴマすり放言)
を黙認するなど、この政権独特のキナ臭い動きが実に顕著である。
 首相は『軍が国を誤った』この国の歴史と、その後遺症を、十分に学んだ
形跡が無い。一連の事態が進むにつれ、国民の不安が募るのは当然だ。
 最近全ての有力紙の世論調査で、政権支持率の急激な低下に加え、日経紙
を除き7月以降、不支持率が支持率を上回って急騰した現象が明白な証左で
ある。世論の6割以上が、安保法案(集団的自衛権容認)に批判的なのだ。
 
 だが民意動向に鋭く感応する神経とパワーが、最早自民党内に存在しない。
総裁選回避の齎す後遺症に“警鐘を鳴らす”のは、僅かに女性議員一名のみ。
残るは全員「己の身分の保全」を優先し、干されるのをコワがる“ドングリ”
揃いだ。短慮だった小泉政権の派閥解体が災いし“切磋琢磨”で「人物」を
育てるメカニズムを喪失、後継候補も見当たらぬ『人材払底状態』である。
 小選挙区制も手伝い、公認権と資金力が党中央に集中、党内民主主義が消
滅に瀕している。いまや国際情勢の混迷を眼前に、絶対多数を得た代償?で
党内の多様性が消え、独裁色が極度に強まり、『保守本流』が聞いて呆れる
“無気力”な政党に堕落した。
 懸案のTPP交渉でも“鈍”な代表の「短期収束」の読みが狂った挙句、
「乳製品」を巡る立腹・怒声で国際的な批判と失笑を買っている。冷静さを
欠く輩では、勝算は期待できぬ。
 
 与党を組む公明党の挙動も不可解だ。『中道・平和』の旗印を下した以上、
筋書きが毎回類似の『下手な田舎芝居』は、いい加減にオシマイにすべきだ。
色々ゴタクを並べながら、最後はいつも旦那に靡く「芸妓スタイル」の定着
である。立党時の公約と最近の安保法案支持姿勢との『隔たり』は、全く理
解困難だ。党発足以来50年余、この党は長い間『期待に応えぬ』域を越え、
結果的に国民を『愚弄し続けてきた』と言われても、反論できまい。
 現在、自民が選挙の投票率では3割割れで、衆議院の7割を占め独走する
異例の事態を招き、国民の政治不信を極大化しているが、この責任の大半は
自民の悪計に始まった公明党の“宿痾”ー上御一人の国会喚問回避ーに由来
する「権力擦り寄り」戦略、つまり洞察力不在の不透明な政治行動に帰せら
れる筈である。               ========
 他にも原発へのスタンスがある。最終的には原発依存ゼロ指向らしいが、
『期限は不問』とまるで子供騙し同然だ。再稼働問題への対応では「地元の
判断にフォロー」(同党品川支部)。これでは政党の掲げる方針とは言えまい。
 まともな政党なら国民のためにも“総括”が不可避の筈。既に下部組織で
『山猫スト』的な動きを露呈済だ(公明支持者の47%は安保法案に反対。上
部の自民支援方針に拒否反応。朝日朝刊 Aug.14.P.31「安保法案 学会員の
葛藤」 )。合意成立が?の三国首脳会談で自民の露払いに甘んずる位なら、
解党して『民意を理解できる国民政党への出直し』も有力な選択肢では?
 半世紀前、清新で知的な第三勢力誕生に期待したシンパ世代としては「こ
の国での宗教政党誕生は 100年早過ぎたか?」と慨嘆の他ないのが残念だ。

 野党も余りに無能で存在感が乏しい。民主も維新も最近の民意動向をフル
に援用して「護憲」を踏み絵―これが肝腎ーに再編、往生際の悪いOBや手
垢で汚れた層は一掃し、知的にワンランク上の顔ぶれで早急に出直すべきだ。
 及第点が付くのは調査力抜群の共産党ぐらいー但し歳費返上は“痩せ我慢” 
が過ぎるーでは、この国の政治的混沌と国民の不幸は際限なく続くだろう。
 
    iii) 「砂川」蒸し返しで露見:司法界の特殊体質

 今度の安保法案騒ぎで自民・副総理が主張した、砂川事件(米軍駐留は憲
法9条違反とする訴え)の最高裁判決を「集団的自衛権容認」の根拠とする
珍説は、大多数の憲法学者から笑殺されたが、関連して「瓢箪から駒」の事
実が浮上した。米国で公開済の外交文書で、当時の田中(耕太郎)最高裁長
官が事態を憂慮する米国の要請に応えマッカーサー米大使や公使と判決前に
密談し、判決日程の繰り上げや判決内容の見通しについて「心配御無用」と
コミットしたことが露見していたのだ(2008年、朝日夕刊 Aug.31.2015.P.12.
Sep.1.P.8.Sep.2.P.10 「新聞と9条」に詳しい)。司法が犯した違法行為!
 謹厳さで鳴らした長官自身が、「植民地」司政官気取りだったとは俄かに
信じ難いが、紛糾の種を播いた『違憲判決』の主・東京地裁の伊達裁判長は
個性派の多い京都学派OB。その後左遷され退任したとの噂もあった(1959)。
 爾来、違憲訴訟では、「統治行為論」(政治性の高い案件は司法の判断に
馴染まぬとされる)を根拠に、判決で専ら判断を回避する事実上のサボター
ジュの伝統が確立されてきた。ドイツの憲法裁判所とは「国民の権利擁護」
意識と「生産性」で大差があることが、学会でも指摘されている(故・芦部
東大教授の著作や論文で引用された多くの判例も Made in Germany だ )。
 
  かような司法の上部構造内の「政治権力権ベッタリ・ムード」は、下級審
の判決にも影響し、原発をめぐる数多の訴訟でも地・高裁での各1件を除く
全てで原告側敗訴、また刑事裁判では起訴された案件の99.9% が有罪という
万邦無比の珍現象が存在する(英国の有罪率68%、警察国家のドイツで84%、
問題の中国でも98% Sight 誌 2011 Winter 有罪率特集号,Jan.2011 参照)。
  今回、安保法案が成立すれば、早晩『戦後初の戦死者』が出るのは必至だ。
その暁には「最高裁改組論」や「最高裁判事公選論」で賑かなことだろう。
 司法機構の体質改善の可能性は、まず12月から全国規模で展開される予定
のマイナンバーをめぐる違憲訴訟の結果で、判然となろう。
 
 捜査・立件段階(警察・検察)の透明化も叫ばれて久しいが、進捗ペース
は「百年河清を待つ」感じだ。先に東電OL殺人事件でのネパール人容疑者
の権利侵害( 30歳で逮捕し有罪判決で収監、15年後の再審 DNA鑑定で無罪)
で国際的な指弾を受けた立派な『前科』もある。慰謝料68百万円は納税者の
負担だ。財政再建には『冗費節約』が肝要。企業なら関係者は減俸の筈だ。

          iV)  『健全なモラル意識』にオサラバした経済界

 財界の仕振りも奇ツ怪だ。先ず日本経済への信認を揺さぶるシンボル的企業
の長期にわたる「粉飾決算」、つまり経営の堕落と監査システムの無能力を
露呈した事件だ。この企業のOBが幹部の常連だった財界総本山の『経団連』
からは、同情の故か、「明日はわが身」を惧れるのか、ロクなコメントも聞
こえぬ有様だ。老舗の看板に泥を塗ったこの会社で即刻辞任となった最近の
三代の社長が、お揃いで「都の西北」を“乱調気味”のコーラスで唱和して
いた(うち一人は大学院のみ東大)のは、官学色が濃い企業風土だっただけ
に意外だが、就活シーズンの母校には大いに迷惑だったろう。
 さらに防衛産業の武器輸出・技術輸出への急ピッチの動きも問題だ。戦禍
体験者ゼロの経団連までグルになり推進に躍起だが、先の大戦で三百万余の
自国民と2千万超のアジア人犠牲者を生んだ顛末に少なからず貢献した筈の
『死の商人』業界も、戦後70年でどうやら“禊(みそぎ)”を終えたつも
りらしい。だが紛争地域と境を接するトルコで戦車生産プロジェクトを検討
するなどの呆れた所業には、関係者の「神経と人間性」を疑いたくなる。
 武器ビジネスは「人殺し」で成立つ忌むべき商売だが、長年軍部と結託し
稼いだ企業体質の遺伝子には、「寡占の旨味」の記憶が強烈で「死臭」には
不感症の、不滅の劣性因子でも宿るのか?見事に甦るシブトサには畏れ入る。  
 防衛予算の増枠予定と歩を合わせ、技術交流を口実に米・英・仏・豪や東
南ア諸国とも既成事実を積み上げ中だが、この国は歴史に眼を瞑り、諸国民
の「殺戮」に意欲満々の企業に頼らねば生きられぬ、情けない国家なのか?
『非核三原則』も今や風前の灯、早晩看板だけの『平和憲法』が泣くだろう。

 一段とキナ臭いのは付近を火山・地震帯が走る川内(鹿児島)伊方(愛媛)
両原発の稼働再開だ。「原発は低コスト」の謳い文句が、「安全神話」同様
デタラメだった事実はフクシマで周知の筈だが、驚いたことに再稼働申請書
でも、依然古いメロディーを奏でる始末。つまり安全よりも『収益最優先』。
国民を「コケ扱い」する官民合作の悪癖は、全く矯正されぬままである。
 エネルギーという基幹産業分野が、あれほどの犠牲を招き企業の実質国有
化を味わって、今尚“性根”が変わらず病根温存では、国家の将来が心配だ。
 これでは業界の幹部総入れ替えでも強行して、企業風土の抜本的な転換を
実現できぬ限り、第二第三のフクシマは時間の問題だ。原発密集地の若狭湾
でも再稼働予定とか、今度は世界の『非難と嘲笑の的』になるだろう。
 その最大原因は、再稼働の是非を決定する新しい原子力規制委員会のボス
が『原発神話のプロモーター』だった事実だ。原子力ムラはよくよく人材難
らしい。学者(東大教授)出身にしては就任の弁(粉骨砕身“安全”に徹す
る)を含め鮮やかな変身ぶりだ。フクシマの惨禍はノモンハンやミッドウエ
イの比ではないが、軍隊なら「敗軍の責」を負って切腹か拳銃で自決が常識
だった筈。責任とリスク意識が余りにも希薄だ。CO2 問題は詭弁にすぎぬ。      
 
 すでに新規制基準の策定当初から、筆者はこの人事に『?』で、責任者が
依然“業界の利益代表”を務める「現代版・トロイの馬」視している。これ
では業界の経営意識も容易に変わるまい。第一、新基準の設定自体が停止中
の原発の「再稼働を前提」としている。規制委と経産省を含む原子力ムラの
「出直し」の初仕事は、未だに嘘で固める原発コストの再計算を、国際的な
批判に耐え得るレベルでやり直し、最終的に負担を強いられる「納税者」に
公表することの筈だ。だが一体未だに終らぬ被災者の補償や、捨て場の無い
放射性廃棄物の処理コストは、どう誤魔化し比較に供するつもりだろう?
 今回の再稼働の“お墨付き”交付に際し、首相は「規制委の判断に従う」、
官房長官は「再稼働の責任者は事業者(電力)」、“肝腎”の規制委委員長
は予期通り「絶対安全とは申し上げない」と、三者三様にタライ廻しの呆れ
た責任回避の弁である(朝日朝刊Aug.12.P.1 )。保身の術では全員優等生だ。
 財界は無論賛成。所管官庁・経産省は相変わらず国民に背を向けた『被災
不感症』患者、環境庁は無力で、原発に関する限りこの国は無政府状態だ。
 筆者の杞憂に終われば幸いだが、この業界の体質改善は一大難事。外国の
碩学起用による国際管理など発想を転換する荒療治が、国民の生命と安全の
確保・国家の利益防衛のために不可欠だが、政変でもなければ不可能か?
                    ==
 まだある。五輪・新国立競技場を巡る政・官・財に跨がるスキャンダルだ。
地域周辺の開発利権も絡むらしい政・財界の関係当事者の責任回避姿勢には
呆れるが、政治センス・ゼロの失言の尻も拭えぬ、首相周辺の若手政治家の
続発、果てはコラム担当が『警察官に「人を殺してはいけない」との教育が
必要なようでは世も末だ』(日経・春秋 9/15) と嘆く交番勤務巡査の強殺事
件、豪雨水害の家屋を狙った空巣(茨城・15件)など、“血も涙(情)もない”。
『勇将(憲法無視の首相)の下に弱卒なし』の諺の通り、いまやわが社会は
『モラル崩壊国家』に近い状態なのが現実の姿だ。

     2. 人間の価値とは? 忘却した責任感覚と展望力 

 七十年を顧みて、廃墟から今日の繁栄に至る「祖国の再建」を担い、既に
八割が鬼籍に入った世代に代って、現状への批判を洗いざらい並べてみた。
 一番気になるのは「何故こうなのか?」と、「今後どうなるのか?」だ。
以下は「温故知新」を梃子とする「反省」と「将来への備え」の模索である。

     i)    戦中派の責任感を支えるもの

 終戦の前年、旧制三高在学中の偶然の事件から戦争に翻弄され始めた品川
さんの青春は、「事実は小説より奇なり」そのもの、信じ難いドラマだ。
 生徒総代だった同氏は、親友の軍事教練の際の『軍部誹謗発言』で廃校の
危機に瀕した母校を救うため、代償に責任者として即時退学、陸軍への入隊
志願を決断、すでに敗色濃厚の終戦前年の12月、中国の最前線へ全滅予定の
中隊の一兵卒(二等兵)として出征。6ヵ月後に優勢な八路軍と激闘の末、
迫撃砲弾の直撃で重傷、九死に一生の処で終戦。1年の抑留の後、帰国した。
 上陸直前,復員船上で、新憲法の草案を掲載した古新聞で『戦争放棄』を
知り、多数の戦友の死や辛かった苦労が『無駄ではなかった』という、死地
を脱した者のみが知る無限の思いだったろう、全員が号泣したそうである。
だが生還した品川さんを、米軍の空爆による焼夷弾直撃で死亡した婚約者や
出征の因となった親友の自死という悲報が待っていた。
 筆者が高く評価するのは、大学を卒業して保険大手に勤務した品川さんが
『不戦に生きる』信念を生涯曲げず、夫人共々、労働問題にも基礎から本格
的研鑚を積み、中堅社員時代は各地の組合支部や単産の幹部として安保闘争
や組合の健全な発展活動に没入する一方、「平和のため」なら相手を選ばず、
終生、真剣に支援と協力を惜しまなかったことである。
 金融・保険業界の首脳となった後も、経団連とは一味異なる経営者の同志
が集う経済同友会の代表幹事として、共産党機関紙「赤旗」への寄稿や志位
書記長との対談に快く応じた、経済人としては「空前絶後」の行動力と胆力
は、まことに印象的だ。批判や非難が無いのは不撓不屈の熱意の賜物だろう。
 総じて当時の戦地からの生還者には、紙一重の幸運を感謝し「戦死した友
の分まで祖国再建のため頑張る」使命感や心意気が漲り、小国民(10歳)だ
った筆者にも深く記憶に残る。強い責任感と同時に「生き残った」ことへの
一種の罪悪感も、戦後の「奇跡の復興」の『駆動力』となったのだろう。
 戦中派と戦後派の基本的な差異は、間違い無く責任感の有無である。

     ii)    対米距離:バランス感覚と地勢学センス

 品川さんは上記の遺作の「あとがき」に、詳述しえなかった将来の重要な
問題へのヒントを指摘されている。読者によって理解は様々だろうが筆者は
明示はないが「対米関係の距離感」と読む。問題は日・米の政治の『質』だ。
 われわれはこの国がアジアの一員であることを決して忘れず、アジアの平
和こそ世界の繁栄に通じると信じ、如何なる相手にも「言うべきことは直言
する」姿勢を全うする信念と、発言への責任感を持つ必要がある。
 品川さんの謦咳は、迫力溢れる『平和への信念』を伝える意味で、筆者に
とってまさに「其の言や善し」であった。

            豪雨禍に  憂き世を嘆く  傘寿かな    汨羅


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創刊日:2008-03-03  
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