経営

"成果給”・・・新戦略の核心か?ガン細胞か?

 日本の給与制度を席巻しつつある“成果給"!
 グローバリズムの下、導入不可避とされるこの制度の功罪を、報道される各社の人事問題等を題材に徹底検証してみたい。

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プライドが招く「大」英帝国の終焉**孤立は頓死へのプロローグ**

2011/12/12

                   
 No.72                                              (2011/12/10)
                    
           プライドが招く「大」英帝国の終焉
          ***孤立は頓死へのプロローグ***            

 自然と人為の織りなす狂乱怒濤に明け暮れる『問題の卯年』も、漸く師走を
迎えたかと安堵した途端、掉尾を飾るに相応しい速報の到来だ。「26対1」
英国の事実上のEU脱退である。今朝のBSニュース(BBC)は「サッチャー首相も
なしえなかった決断」と報じたが、婆サマの真価はEU加盟の代償:英連邦解体
の負荷全額をEU(主にドイツ)に見事に背負わせ、シュミット独首相に長嘆息
させた稀代の交渉力にあった。つまり英国の暖簾(信用力)を高く売りつけ、東
欧圏も含めて拡大する巨大なEU市場を「濡れ手に粟」(自己負担ゼロ)で手に
入れた凄腕だ。無論、欧州大陸を欠いた英国の将来など、全く念頭になかった
に相違ない。
      1. 歴史は繰り返す:甦る独仏枢軸
 
 キャメロン英首相が“EU新条約締結”を拒否し孤高を護った背景を要約する

 1)新条約の内容が参加各国の財政規律と銀行規制の厳格化を含み、英国最
      大の輸出産業(サービスによる外貨獲得源)であるシティの機能を阻害
   する懼れがある。
 2)欧州中銀の権限強化で各国中銀の独自の金融政策行使権が新たに制約を
      受けるほか、他国救済のための資金負担を負う。
 3)英国民の過半は現状以上の対EUコミットメントに批判的で、新条約締結
   には国民投票が必要な状況下、与党(保守党)内部でも支持を得られる
   見通しが不明。
の諸点(上記TV)のようだが、英国を除く26ヶ国が新条約締結に合意した後、
会場を去るサルコジ仏大統領の「してやったり」とほくそ笑む顔が大写しとな
ったのが印象的だった。
 この微笑みの背景には歴史がある。フランスが難攻不落といわれたマジノ要
塞線をドイツ機動部隊に突破され全土を席巻された後、英国に逃避した失意の
総帥ドゴール将軍を、英・米両国首脳は“独裁的性格”を嫌い冷遇した。一方
戦後の西ドイツ・ケルンでは英駐留軍司令官が意に添わぬアデナウアー市長を
解任、公職から引退に追い込んだ経緯がある。後日キューバ危機での若いケネ
ディ米大統領の決断に対し、政権の座にあった欧州の両雄は「米国の戦略に欧
州の運命が握られる」ことへの危機感を募らせ、両国間の連帯を強化、ともに
欧州の統一構想の具体化に尽力した。

 筆者は留学のため渡欧した1962年の秋、キューバ危機直後の英国のEEC加盟
に決然と『Non』と応えたドゴール大統領を想い出し、当時のドイツ社会の
興奮が半世紀ぶりに甦るのを覚えた。だが当時ドイツ国民の多くは対仏協調の
成算には懐疑的で、敗戦のためか対仏外交力にも自信がなく、調整役としての
英国の加盟に大いに期待していた節がある。新聞論調も、控え目だがドゴール
支持よりEECの将来への不安が強かった。
 今朝、宿願が実ったメルケル独首相とサルコジ氏の談笑する姿に、アデナウ
アー・ドゴール・コンビの「独・仏枢軸の復活」を感じはした。だが当時の自
信の無さに比べ、「EU共通債発行拒否」の意地を貫き、サルコジ氏を揺さぶっ
て合意を纏めさせた「ドイツの婆サマ」が象徴する、「EUにおける統一ドイツ
の存在感」を改めて痛感した。半世紀に及ぶ時間の重みと言うべきだろうか?
 英国の事実上の脱落を踏み越えて、難局の下、合意の集約を果たしたサルコ
ジ氏の、ドゴールの伝統を継ぐ『欧州統一への執念』と交渉力も賞賛される。
しかし戦争の無い「統一欧州」を夢見て半世紀、この間欧州の求める多額の建
設費負担に応え、苦難の祖国統一も実現し今日に至ったドイツ人の不屈の忍耐
力と稀有のロマンティシズム?にも賛辞を惜むまい。

  2. 伝統への過信?プライドが選ばせた孤立の行方 

 滞欧50年に及ぶわが畏友・根岸隆夫氏(前日本電子工業会欧州駐在員)は
嘗て「英国はヨーロッパに非ず。アトランティック・ネーションだ。」と喝破
した。長年滞在した仏・独を基盤に欧州を知悉する同氏は、80年代初頭英国の
ユニオンが日立のTV工場進出に反対し日英業界の関係が緊迫した折、爵位を持
つ英電子工業会会頭に叙勲を斡旋、感激した同会頭が日本側トップを返礼の叙
勲で遇し、日英両業界のわだかまりが一挙に解消する離れ業を演出した。
 後日「総コストは造幣局の勲章制作費約3万円」と宣う笑顔に脱帽した記憶
がある。根岸氏は欧州の政治裏面史に通暁し、関係文献の翻訳も多い、優れた
知識人だが、上記の含蓄ある表現は、今後欧州で孤立化が必至の英国の将来を
卜する上でも貴重だ。
 英国の真価は、最もよくアメリカを理解しその発言を米側に傾聴させる力量
を持ち、欧州と米国の間の関係全域をカバーする最適の調整機能を具える欧州
唯一の国家であること、さらに全世界に跨る植民地経営で得た比類なき情報分
析力とバランスのとれた判断力を併せ持つ、知性に富む国民を擁する点は見逃
せない。これらの特色を勘案しつつ、いま英国の将来を展望すると
  
 1) 後背地(欧州大陸)との関係希薄化のデメリット

 EC加盟と同時に、特恵関税で連なっていた旧植民地の英連邦との関係が希
薄化し、貿易における後背地を失った英国は、諸外国からの投資はあるものの
製造業の衰退と共に製品供給国の地位や競争力も次第に失い(典型は自動車産
業)、シティーに象徴される高度のサービス産業(金融・保険・投資コンサル
ティング)など第三次産業の比重が高い産業構造へシフトが続いている。
  英国のGDP対比の貿易額は輸出16%、輸入21%、欧州内ではイタリー
並で比較的低い。輸出入ともに52%前後が対EUで工業製品中心だ。盟外状態
が固定化すれば、輸出面の打撃は大きくなろう。
 今回の措置はEU新条約締結への不参加で、諸制度(関税、VISA,労働力の移
動など)の扱いは当面不変の筈だが、次第に加盟国とのギャップが顕在化する
のは確実だし、大陸側から競合者が出現するのは間違いない。少なくとも後背
地を失って繁栄した経済の例はなさそうだ。この意味で孤立化はシティー関連
の業務を除き、少なからず影響を与えるだろう。
 
 2) シティーへの影響
 
 新条約締結拒否の大きな理由となったシティーの権益維持への影響だが世界
一の業務規模を誇るシティーの存在感が当面俄に揺らぐことはあるまい。現に
2002年のユーロ実施後、今日までユーロ非加盟のまま格別不都合もなく、シテ
ィーは世界最大の金融市場の地位を謳歌してきた。
 だがこの背後に、シティーがEUの金融市場としてー英ポンドではなくEU統一
通貨ユーロの持つ信用を基盤とする金融市場としてー順調に発展してきた事実
は無視できない。既に英ポンドはデンマーク・クローネ並の一ローカル通貨に
過ぎず、またスイス・フランのように特有の信頼性を持つ通貨であった訳でも
ない。強いて言えばユーロの影に隠れて、そのくせユーロの信用で目立たずに
ー投機筋のアタックにも晒されずーユーロ加盟を回避した英国当局の当初の思
惑通り巧みに難を避けてきた訳だ。
 キャメロン首相が看過しているのは、英国がEU加盟国であるが故に、今回の
ユーロ危機が発生するまで「英ポンドに対する信用が、EUの通貨統一前の最強
通貨ドイツ・マルクのイメージをも含むユーロへの信用で何となく自然に維持
・補強されてきた事実」である。投機筋は今後確実かつ速やかに、今や“裸”
の英ポンド・アタックに向かうだろう。
 もう一つ、保守党の彼は先輩サッチャー首相の“柳の下の泥鰌”を狙い、シ
ティーをEU金融規制の例外とする扱いを求め、独・仏首脳の冷笑を買った。彼
らの反応は『冗談じゃない。何処まで甘える気だ!イヤならどうぞ出ていって
ください!』だった。情勢判断が甘すぎた。どうやら彼は、ユーロ非加盟国の
メリット満喫に慣れて、情勢の変化つまり統一通貨の防衛に必死の仏・独首脳
の苦悩や情熱、さらに通貨価値の安定貫徹に賭ける統一実現後のドイツの存在
感アップの現実を十分把握していなかったようだ。ドーバー海峡は狭くない。
 首相は他国通貨ユーロ防衛のための資金拠出を避けたい意向だが、次のステ
ージは自国通貨防衛のための単独(またはIMFから借入れ)での資金拠出と
なる。
 さらにユーロ資金調達の市場としてEU独自の市場ー例えばフランクフルトー
が台頭するのは間違いない。独自の強い通貨を持たぬシティーの、人材や金融
ノウ・ハウといったソフト依存の繁栄が何時まで続くのか、甚だ興味ある問題
だ。現に長期不況で取引高が減った東京から、多数の人材と拠点が香港やシン
ガポールに急速に移った事実がある。

  3) 英国は所詮アトランティック・ネーションなのか?

 最近プーチン大統領登場後のロシアが、国境に存在するミサイル基地の撤去
問題を契機に、冷戦再現をも辞せずの揺さぶり戦術に転じ始める兆しがある。
一方EUは、財政問題の桎梏から逃れるため長期にわたる緊縮策を余儀なくされ
支出削減の矛先が国防予算に向かうのは必至の雲行きだ。米国も、議会が国防
費の大幅カットを既定の路線としており、対ロシア戦略のコスト負担を巡り米
・欧間の鞘当てが時間の問題となるだろう。
 英国が事実上抜けるEUでは、存在感が低下する米国の戦略に同調するよりも
対ロ緊張を回避し、米・英に気兼ねなく独自のイニシアティヴでBRICSの
一角のロシアへ、経済的版図拡大を計るのは自然の成り行きだ。
 ロシアもプーチン独裁の再現には限界があり、EUへの接近は自由化を求める
国民への訴求や対米牽制のためにも望む処だろう。かくして財政危機が生み出
す新たなデタントの動きは、遠からずNATOの解体まで発展する公算もある。
 つまりEUを中核とする欧州は、今回の新条約締結を契機に、英国を除く発展
を続け、ユーロ非加盟状態も終息した完全な統一形態をまもなく実現、さらに
財政・金融政策の統一によって最終目標の政治的統一へ弾みをつけることにな
るだろう。
 一方英国は、新条約締結国とは統一欧州のリスク負担とアカウント(通貨)
を異にする以上、次第に機能的関係の希薄化と組織的分離の方向を辿る筈だ。
 問題は伝統的な保守本来の用心深さに由来する、現実尊重に傾く国民性だ。
環境の変化に即応し、リスクと可能性に挑む気概が甦らぬ限り、発展のチャン
スに縁がないことを銘記すべきだろう。

    3.   国際市場の改革を迫るEU再編の潜在力
 
 だが今回の英国脱落劇の根は深い。マクロでみれば
  ○市場対策へのスタンス:自由放任派vs市場規制派(独・仏・瑞・日)
  ○国内法体系:英米法(判例法)系vs大陸法(成文法)系
  ○政策発動への姿勢:民間主導・事後対策型vs官僚主導・予防規制型
  ○人種:アングロサクソン(ユダヤ系を含む)派vs欧州大陸・アジア派
  ○市場関与度:常にリーダー・資本主義先進国vs後発・後期資本主義国
の対立だ。
 つまりある意味では文化のパターンや社会のモラル維持への発想が根底から
異なるのだ。今回ユーロ非加盟の6ヶ国が最後に英国と袂別したのは、次の投
機筋のアタックの標的となった場合、単独では無力だと痛感しているためだ。
市場の自由度優先の英・米流の政策姿勢が生み落とした、市場関係者の退廃し
たモラルの放置が、最早限界にあることも、つとに認識している結果だろう。 
 今後EUの市場対策が、国家主権の制約を伴う財政・金融政策の一体化に加え
金融機関の健全化規制、市場取引で得た収益への課税強化、米・英を含む格付
会社の規制と認可制導入、投資銀行業務の権限逸脱・反社会的行為の罰則強化
(個人を含む)などへ進むのは時間の問題だ。
 かような規制行為は、ユーロ騒ぎの波紋が世界経済全般に及ぶことが確認さ
れた以上、成長政策を採る中進諸国や救済資金保有国(中・日)の賛同を得る
ことは間違いあるまい。
 参考までに筆者の嘗ての職場のOBで、多年資金・為替業務の第一線で活躍
し、理論面にも通暁する俊秀の中には、既に数年前にロンドン、NY両市場の
終焉を断言した人物もいる(倉都康行氏「投資銀行バブルの終焉」(2008.日経
BP社),世界2011.12月号P.139-155「本当の危機は何処にあるか?」は秀逸)。
 要するに世界の主要国経済の地殻変動が進む現在,退廃したモラルの持主の
不埒な行為で得た利得を黙認し、その挙句瓦解する金融機関や投資銀行のツケ
を低所得に悩む納税者が最終的に負担する不条理は、『欧州の理性』が決して
黙過を許さないということだ。
 昨今のわが国も、ユーロ問題の帰結を『他山の石』として、新たなアジア重
視の観点から、先哲の教えに根ざした東アジア流のビジネス・モラル確立の要
に迫られることになろう。

    これも世の   定めならむや   年の暮れ     汨羅     

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