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シネマトコラム

最新作中心のじっくり踏み込んだレビューです。また時々コラムも入ります。

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シネマトコラム7.11

2019/07/11


 *新作レビュー「新聞記者」
 *ちょっと蛇足
 *次号予告

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*新作レビュー
「新聞記者」(藤井道人監督・日本) 
シム・ウンギョン、松坂桃李、北村有記哉、田中哲司ほか出演。

 久々に日本の政治と報道をテーマにした社会派エンターテイメント。
しかもフィクションとはいえ最近実際に起きたあれこれが散りばめられ、
情報操作や統制を担っているとされる内閣情報室を舞台にした異色の邦
画作品。現政権への批判的要素も強いことから製作段階から様々な物議
を醸したが、蓋を開けてみるとなかなかの客入りで目下話題の一本とな
っている。

 東都新聞編集部に医療系大学新設に関わる疑惑を示す資料がFAXで
届き、通常文科省が管轄、認可する事業が、内閣の国家戦略特区枠を使
って進められていることに着目し、社会部の吉岡(シム・ウンギョン)が
上司の陣野(北村友記哉)から担当を言い渡される。
 一方、外務省からの出向で内閣情報室に勤務する若手官僚、杉原(松
坂桃李)は、内閣に不都合な事実や情報を収集分析し、時に対象人物を
嵌めて処理する仕事に疑念を持ち始めていた。外務省時代の上司で現在
内閣府所属の神崎(宮野陽名)から連絡があり久々に旧交を温めた杉原は、
臨月の妻(本田翼)の出産を心待ちにしていた。

 だがその直後に、神崎は飛び降り自殺する。葬儀の場で出会った杉原
と吉岡は、神崎の死に強い不信感を抱く。やがて神崎は週刊誌がスッパ
抜いた疑惑の大学新設に決済判を押したキーパーソンだったことがわか
り、さらに内調が秘かに動いていたことを杉原は後で知ることになる。
 FAX中のヒツジのイラストを調べ続けた吉岡は、ついに大学設立に
隠されたある狙いと、神崎の行動の意図に気付くが……。
 
 珍しくおちゃらけがまったくなく終始緊張感が漂う。その実態がほと
んど漏れることのない「内調」をメインに据えたことで興味を惹くこと
に成功している。公安が国の治安のために活動しているとすると、こち
らは内閣のために活動している部署という感じだろうか。

 政権にとって不都合な人物を調べ、情報操作をしたりスキャンダルを
作って貶めたり、地位の失墜を計ったり、というような業務をしている
らしい。現代は攻める側も守る側もインターネットを有力な媒体にして
いる。そのため世論のチェックや意図的な書き込みに余念がない。たく
さんのフェイクは、インターネットだからこそ成せる産物ともいえる。

 韓国生まれ米国育ちの吉岡は、日本的な空気を読まずに行動する。気
質の設定にこの生い立ちは上手く作用している。
 杉原は普通の感覚を持つ若手官僚だが、次第に正義感と保身の板挟み
になる。こちらも妻の出産が重なったことで微妙な迷いがからむ。そう
いった個々の設定はなかなかなのだが、根幹を成す全体の設定スタンス
は中途半端だ。
 東都新聞という架空の新聞社にしておきながら、終盤は実在の大手3
紙を実名で登場させたり、ネタとしての事例が現実にあったアノ事件、
コノ案件そのままでありながら、本丸の大学新設の件はかなりの飛躍を
加えていて、ややちぐはぐだ。挑戦する勇気は買うがリアルをゴリ押し
した感は否めない。

 最後に明らかになる、政府のこの大学新設の本当の目的は想像を超え
ていてちょっと驚いた。まさかアノ学園の大学新設はここまでのウラは
ないと思うが、国家権力者ともなるとお友達に力添えをする程度ではな
い背景が潜む余地は充分あるかもしれない。

 さてこの映画、原案は安倍政権とバトルを繰り広げている東京新聞記
者、望月衣塑子の同名ノンフィクションが原案とあって反政権とみられ
たくない所属事務所の意向により主演女優がとうとう決まらず、やむな
く韓国の若手実力派、シム・ウンギョンを抜擢することに。しかしこれ
は功を奏している。矢継ぎ早の緊迫した台詞回しの場面は、やや日本語
が追いつかないが、目の存在感や機敏な動きはなかなかのもの、ためら
いがない主人公役にぴったりはまっていて好演である。
 松坂クンはやはりまだ演技力がもう一つではあるが、オファーを堂々
と受けた勇気は買いたい。

 展開のピッチは悪くないが、要所でスローモーションが多用され、演
出、編集の手法はだいぶ既視感があり監督の技量はあまり感じなかった。

 ともあれ、異彩を放つ映画には間違いない。海外のように政治モノが
エンターテイメントのジャンルとして混じってくると邦画界もより幅が
生まれると思う。
 日本で政治モノはウケないから作らないというのは、業界の言い訳に
聞こえる。観客は興味を感じれば必ず足を運び、内容があればヒットも
すると思うのだが。
  
*「新聞記者」公式ウェブサイト↓
https://shimbunkisha.jp/

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*ちょっと蛇足
小田原シネマコロナワールド シネマ4 C-11にて。観客約40人
平日昼間にしてはけっこう入っていました。年配男性ばかりと思いきや、
7割ほどが女性客で、若い人もけっこう混じっていました。困難に立ち向
かう女性像という位置づけなのかもしれませんね。
公開前にウエブサイトが視れなくなる事態も発生したそうですが、これも
「内調」の工作では?と観た後では感じてしまいます。
 
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*次号予告
次号新作レビューはまだ未定です。

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創刊日:2008-01-26  
最終発行日:  
発行周期:月3〜4回。  
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