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シネマトコラム

最新作中心のじっくり踏み込んだレビューです。また時々コラムも入ります。

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シネマトコラム2.9

2018/02/09


 *新作レビュー「スリー・ビルボード」
 *ちょっと蛇足
 *次号予告

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*新作レビュー
「スリー・ビルボード」(マーティン・マクドナー監督・米)  
フランシス・マクドマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、
ピーター・ディンクレイジほか出演。
原題「Three Billboards Outside Ebbing,Missori」

 予告編からクライムサスペンスのような先入観があったが、実際は凝
った人間ドラマである。前半のやや一本調子のトーンが後半、一気にう
ねりをみせ、前半のあれこれが見事に絡み合って集約する脚本が秀逸。
キャスト陣もはまり役揃いで見応えがある。

 ミズーリ州の田舎町「エビング」。7ヵ月前、ティーンの娘、アンジ
ェラ(キャスリン・ニュートン)がレイプされ殺害されたシングルマザー、
ミルドレッド(フランシス・マクドマンド)は、一向に進展しない地元警
察の捜査に不信感を抱き、町はずれの大きな広告ボードを借りて警察へ
の疑問を掲示する。

 名指しされたウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)以上に血の気の多
いディクソン巡査(サム・ロックウェル)は、警察への侮辱だとして怒り
心頭、保守的な南部の田舎町とあって住民たちも警察に刃向う行動を取
るミルドレッドに避難の目を向け始める。しかし、ミルドレッドはまっ
たく動じず、広告版の撤去を求める周囲の声や神父の説得にも耳を貸さ
ない。メディアが騒動を報じるようになると、今は19歳のガールフレン
ドと暮らす元夫のチャーリー(ジョン・ホークス)も説得に現れるが、か
えって火に油を注ぐ始末。
 そんな中、病魔に苛まれていたウィルビー署長の状態が悪化し、これ
を機にいろいろなことが急展開し始める……。

 前半は本当に一本調子で、青いつなぎ服に身を包み、意志と表情が硬
いどころか、横暴な警察に目には目を、で力勝負を挑むミルドレッドの、
涼しい顔の過激な憎悪がスクリーンを席巻する。いや、最後まで彼女は
疾走し続けている。
 やられたらやり返す。アメリカらしい構図だが、本作ではその中心に
いるのが普通の主婦であることが異様な空気感を生んでいる。

 権力批判が主題であるかのようにみせかけて、後半、がらりと様相が
変わる。ここからが本作の本当の見せ場なのだ。

 単なる絡み役の印象だったウィルビー署長が思わぬ行動に出る。そし
て彼の心理と人間性が次第に色濃く映し出される。観客の多くはここで
心を乱され彼に対する思いを新たにするはずだ。が、ミルドレッドだけ
は変わらない。見事に頑なに突き進む。しかし、この波乱は第一幕。
 さらなる波乱の主は、平警官ディクソンだ。虚勢と孤独の対比が如実
に描かれていて3人の中で最もふり幅が大きく、最も濃いドラマを体当
たりで熱演したサム・ロックウェルは、強烈な残像のフランシス・マク
ドーマンドと見事に対を成している。
 ミルドレッドが作品の骨格であることは間違いないが、隙間を丹念に
埋めているのは明らかに助演の2人の物語である。シビアなトーンのス
トーリーに、温かさを吹き込んでいるのもまたこの2人だ。

 脇役のキャスト陣では、ミルドレッドに想いを寄せる小人症の男を演
じるピーター・ディンクレイジがいい味を添えている。

 アメリカ社会に色濃く残る人種差別や権力による不正を新鮮な角度で
描き、ドラマとしてもわかりやすく、しかしけっこう手が込んでいる。
 過激すぎる主人公への思い入れはあまり沸かなかったが、作品として
の見応えは充分。人間ドラマの好きな人は見逃せない一本だと思う。
 
 *「スリー・ビルボード」公式サイト↓
http://www.foxmovies-jp.com/threebillboards/

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*ちょっと蛇足
TOHOシネマズ海老名 スクリーン9 C-13にて。観客約40人
 前過ぎました。スクリーン位置が高い部屋なので後半姿勢が辛かった。
久々に来ると感覚を忘れてしまいます。このスクリーンに関しては後ろ
の席が良いな。

 一見普通の主人公の女性が過激な行動に出るところは、「母なる証明」
を彷彿させ、また警官の不正を絡めた人間ドラマという点で、「クラッ
シュ」に近いものがあります。
 今年のアカデミー候補作で一番現実路線なのは本作。3,4年に一度くら
いはこのテの作品が選ばれるので、これが作品賞ということも充分考え
られます。ポイントは委員がミルドレッドをどうみるか、次第かも。

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*次号予告
次号新作レビューは、「エターナル」を取り上げる予定です。

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創刊日:2008-01-26  
最終発行日:  
発行周期:月3〜4回。  
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