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TTPと農業問題の本質:農業七不思議:農水省が仕組んだ食料自給率が 引き起こす混乱 その1

発行日:2/8

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TTPと農業問題の本質:農業七不思議:農水省が仕組んだ食料自給率が
引き起こす混乱 その1

農水省は「GDPの1.6%が失われる」という誇大なシミュレーションを発表し、
「食糧自給率が13%に低下する」と危機感をあおっているのは前回述べた
とおりです。

出典:ニューズウィーク TPPの空騒ぎを仕掛けているのは誰か
 以前のコラムでも書いたように、TPPの農業への影響はGDP(国内総生産)の
数百分の一。環太平洋の自由貿易圏を構築することは1990年代からの既定方針で、
今さら国を挙げて議論するような問題ではない。不可解なのは、こんな小さな
経済問題がこれほど大きな政治問題になるのはなぜかということだ。

(中略)
 この騒ぎを仕掛けている黒幕は、農水省である。TPPについて農水省は「GDPの
1.6%が失われる」という誇大なシミュレーションを発表し、「食糧自給率が13%
に低下する」と危機感をあおっている。農協はこの数字を利用して「日本の食が
危ない」というキャンペーンを張っている。WTO(世界貿易機関)でも相手に
されていない「食糧安全保障」という農水省の造語が、既得権の隠れ蓑に利用
されているのだ。


今回はこの食料自給率について考察してみたいと思います。

食料自給率には大きく分けて2つの指標が考えられます。


出典:農林水産省 ウェブページ
カロリーベース自給率
その食料に含まれるカロリーを用いて計算した自給率の値を「カロリーベース
総合食料自給率」といいます。
カロリーベース自給率の場合、畜産物には、それぞれの飼料自給率がかけ
られて計算されます。

生産額ベース総合食料自給率
カロリーの代わりに、価格を用いて計算した自給率の値を「生産額ベース
総合食料自給率」といいます。
 
平成22年度概算値
カロリーベース総合食料自給率=1人1日当たり国産供給熱量(946kcal)/
1人1日当たり供給熱量(2,458kcal)=39%
生産額ベース総合食料自給率=食料の国内生産額(9.7兆円)
/食料の国内消費仕向額(14.1兆円)=69%


農水省はこのカロリーベース食料自給率が低いことを問題としているわけです。

ここでカロリーベースの自給率の問題点を考えてみましょう。



「食料自給率なる概念を使っているのは日本だけ」と指摘するのが、
浅川芳裕・農業技術通信社専務です。


出典:日経ビジネスオンライン 日本の野菜は“ユニクロ”よりも強い

浅川 そもそも「食料自給率」とは、農林水産省の定義で、国民が食べて
いる食料のうちどれだけが国産で賄えているかを示す指標です。5種類ある
のですが、よく出てくる「41%」というのはカロリーベースでの計算。
国民1人、1日当たりの供給カロリーのうち、国産がどれだけかを示すものです。

 こう言われると、「実際に食べている食品のうち、どれだけが国産かの
数字」と思っちゃうんですが、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。

浅川 この指標では、まず輸入・国産問わず、日本で流通している全生産物を
カロリーに置き換える。ニンジン100グラム当たり何カロリーとかですね。
それを人口で割って1日当たりに換算したものを分母に、分子には国産の分
をおきます。

―― まっとうな計算のように見えますが。

浅川 しかし、この指標にはたくさんの問題点があります。まず、我々は流通
している生産物を全部食べているわけじゃない。食べ残しやコンビニの期限切れ
などで、流通している生産物の4分の1は捨てられています。ところが、その廃棄分
も分母に含まれる。元から消費されない分を分母に入れるわけで、当然「自給率」
は小さくなりますよね。

 さらに分子のほうには、数字を小さくする“工夫”がされています。まず、
国内生産量の2、3割にのぼる、流通以前に生産者が廃棄した農産物が入って
いません。これらはもちろん食べられるのですが、型が不揃いなどの理由で、
商売にならないと判断されて出荷されなかったものです。さらには全国に200
万戸以上ある、自給的な農家などが生産する大量のコメや野菜も含まれていま
せん。こうしたものを分子に入れて、実際に我々が食べている分を分母にすると、
自給率は6割を超えます。

 さらにこの指標上では、牛肉や鶏肉、鶏卵、牛乳なども、国産のエサを食べて
育ったものだけが国産とされ、海外から輸入したエサを食べていたものは除外
されるんです。これを国産と数えると自給率は7割をも超えてしまう。

 要するに、日本の農業の生産量や生産力は、農水省発表の数字よりはるかに
高いのです。

―― つまり「カロリーベースの食料自給率」は、実態より自給率を低く見せる
ための指標だと。目的は何なのですか。

浅川 農水省が「食料自給率向上政策」を推進するためです。10年ほど前に、
食料・農業・農村基本法が制定され、食料自給率を向上させることが国策と
なりました。国産を振興し、将来の食料危機に備えるというわけです。ここには、
「農業とは、国が安定的に食料を国民に供給する手段だ」という発想があります。

―― 生産者ではなく、国が農業を管理しなくてはいけない、その理由付け、
エクスキューズとして、低い食料自給率という「神話」が必要なんですね。

浅川 そうです。さらには、「国産を食べるべし」というのが、食料・農業・
農村基本法のベースにあって、その補助手段として輸入と備蓄があるんです。
つまり、「国産最優先」がひとつの思想になっているんですね。

―― 私も「国産でまかなえるならそれに越したことはない」と考えていた
のですが、そもそも、「食料自給率」なる概念を使っているのは日本だけと
聞いて驚きました。

浅川 韓国だけが日本の政策をフォローして、一応、数字を出してみましたと
いう程度で、ほかに食料自給率を出している国はひとつもない。いわんや、
それで政策を組み立てている国など皆無です。


さらに、浅川芳裕氏は、カロリーベース自給率の計算式自体がいい加減と指摘を
しております。


出典:農業ビジネス 「食料安全保障の機密上明かせない」舞台裏、二つの
自給率計算式が明かす謎

 前号でお伝えした通り、農水省は「日本の自給率は100%を超えません。食料供給
のうちどれだけ国産で賄えるかの指標ですから、最大で100%」と説明する。「計算式
上、絶対超えることはない」という。だが、海外の自給率は100%を超えている。
なぜ、日本だけが、「100%を超えることはない」のか。

 結論から言えば、日本の自給率と他国のそれを導き出す計算式自体が異なるのである。

他国の自給率は、分子にその年の国内生産量をそのまま計上しているのに対し、
日本の自給率は、国内生産量から在庫の増加量をマイナス(減少した場合はプラス)
して計算しているのだ。日本の場合、前年より増えれば生産量を引くが、他国の場合
は引かないということだ。

 例えば、日本はある年にコメの在庫が100万t増えたとしよう。その年の生産量が
800万tだったとすると、自給率を出す際に、そこから100万t引いた700万tをもとに
計算している。一方、米国では小麦の在庫がいくら増えても、そのままその年の
生産量をもとにする。実際、米国の小麦の在庫は今年1000万t増えているが、それは
考慮されていない。

 加えて、日本の自給率を計算する際、コメ生産量にはふるい下米や3等不合格米
といった、いわゆる「くず米」の量は差し引かれる。その量は、全国で50万tから
年によっては70万tにも達する。全生産量の6〜7%を占め、外食用米などで“食べら
れている”にも関わらず自給率にカウントされない。さらには、全国各地に広がる
河川敷で作られる米や農産物も含まれない。「国土交通省管轄だから」という。
つまり、日本の自給率のほうが低く出るような計算式になっているのだ。

 これで、農水省がかつて筆者の取材に対して、「食料安全保障の機密上明かせない」
(「インチキ食料自給率」に騙されるな!、本誌2008年10月号25頁)とし、他国の
自給率の計算根拠を示せなかった理由がようやく分かった。これは完全に国民への
背任である。こんないい加減な計算で、1%上がった、下がったと一喜一憂しても
仕方がない。


今回は、「農水省が仕組んだ食料自給率が引き起こす混乱」として、カロリーベースの
自給率が意図的に自給率を引き下げる仕組みで計算されており、実態からかけ離れた
数字であるを示しました。

 要するに、日本の農業の生産量や生産力は、農水省発表の数字よりはるかに高い
ということが理解できたのです。


次回は、農業自体を自給率という尺度で考えることがが本当に意味があるかを
考えてみたいと思います。


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