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疋田智の「週刊 自転車ツーキニスト」

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なぜか飛雄馬の(週刊 自転車ツーキニスト177)

2004/10/19

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【週刊 自転車ツーキニスト】"Weekly Bicycle Tourkinist"
 なぜか飛雄馬の177号

■秋晴れはどこに

 また台風だ。
 もういい加減にして欲しいものだとは、誰もが思うことだろうが、まったくいい加減にして欲しいなぁ。自転車がどうのという話じゃなくて、全国で地盤緩んでますからね。中京以西の人は、本当にお気をつけを。

■飛雄馬の涙

 さて、飛雄馬はスゴいなぁと思うのだ。「巨人の星」の飛雄馬。
 何がスゴいって、よく言われることながら、全編に流れる涙の量がスゴい。星雲高校時代の「俺は猛烈に感動しているッ」もそうだし「青春などいらん、今すぐ終われッ」だってそうだし、まあとにかく飛雄馬も伴も花形もジャージャージャージャーよくまあこんなに涙を流すものだと思うほど、泣く泣く泣く。
 だが、よくよく見てると、それらの青春3人組だけじゃない。左門も泣くし、オズマも泣く。そして、あの鬼の星一徹も実によく泣くのだ。
「ふふふ、目薬を注しすぎたようじゃわい」の有名なシーンも、もう滂沱の涙。いわゆるところの「目の幅涙」ってヤツだ。
 一徹のこの涙は、何が理由かといえば、大リーグボール1号を打たれた飛雄馬が、大リーグボール2号を引っさげて復活を果たしたことを、記者から聞いたのが原因だった。
 あくまで伝聞。記者から聞いた瞬間に、いきなり後ろを振り向いてトレーナーに「目薬をくれ」と言う。
 そして、その目薬を注した後に、記者団に振り返り、棒だの涙で例のセリフなのだ。まあ涙腺が緩いこと緩いこと。「鬼の目にも涙」というが、一徹の場合の「鬼の目」は、全然、涙が珍しくない。

■ジョーと飛雄馬は、どちらがどちら?

 1970年代に少年マガジンに連載された「巨人の星」(原作・梶原一騎 作画・川崎のぼる)。
 よく知られているように、同じ時期の梶原一騎は、高森朝雄という別名で「あしたのジョー」(作画・ちばてつや)を連載していた。当時の少年マガジンの読者は、いわば1人の人間が描くところの2つの物語に、毎週、熱狂していたのだ。
 ホットな飛雄馬に対して、ジョーはクールだ。
 だいいちジョーは泣かない。力石も泣かないし、西も泣かない。段平も酔っぱらってテレビを見たとき以外は泣かない。同じ原作者の同じスポーツ根性ドラマで、なおかつ全く同じ時期の連載なのに、二人の主人公は実に対照的なのだ。優等生の飛雄馬に対して不良少年のジョー。肉親友人を問わず人間関係がひどく濃密な飛雄馬に較べて、ジョーの人間関係はやはり薄い。
 恐らく同じ梶原の二面が表れているのだろう。まあそうだ。梶原一騎の評伝「梶原一騎伝」(斎藤貴男著 新潮文庫)によると、梶原は至極扱い難い性格だったという。ヤクザ(っぽい)なのに文学青年。凶暴なのに涙もろい。寂しがり屋で人間嫌い。一言でいえば、個人としてはあまり近づきたくないタイプの人間だったのだとは思うが、その人間性と作家性とはまったく別物だ。

■どっちが好きですか?

「タイガーマスク」「柔道一直線」「愛と誠」「夕焼け番長」「空手バカ一代」「侍ジャイアンツ」「男の星座」などなど、彼のヒット作は本当に数が多い。そしてそのどれもが、あまりに濃くて辟易するようで、それでいて奇妙な強い魅力に満ち満ちている。その頂点に立つのが、やはり「巨人の星」と「あしたのジョー」なのだろう。
 ではどちらの方が最高傑作なのかと言われれば、やはり多くの人は「あしたのジョー」の方を推すのではないか。
 実在の球団、選手などの人気を借りた感のある「巨人の星」よりも、物語としての完成度は明らかに上だし、作画ちばてつやの感性も、ちょうどうまい具合に物語に噛み合った。「力石の葬式」や「われわれはあしたのジョーである」の日本赤軍でも分かるとおり、世の中にある種の影響を与えた作品であった。
 クールでニヒルで不良なジョーも、正直言って、飛雄馬よりもカッコイイ。
 いやはや、ところが、私はなぜか飛雄馬の方が好きなのである。
 読売ジャイアンツが好きかというと、むしろ、どちらかというと嫌いなぐらいだ。物語性においてジョーの方が上なのも認める。だが、カッチョ悪い身内のことを見捨てられないように、私は飛雄馬が好きなのだ。
 読んでみると分かるが、飛雄馬はまったくイヤになるほど、いつも真面目だ。感動ぶりも真面目だし、行動も言動もいちいち真面目。優等生。そして不器用。その優等生で不器用な生き方が災いして、飛雄馬は必ず最後には負ける。悲しいことに。
 だいたい真面目さが「100か0か」に直結してしまうところで、人生ものすごく損してる。
 だいたい普通は打てないよ、「消える魔球」なんて。たとえ花形がホームラン打って、消えるメカニズムがバレたとしてもね。「消える魔球の正体は魔送球だ!」なんつっても、あんなスゴい変化球が誰が打てるもんか。投げ続ければよかったのに……。と、まあ、そこが劇画的といえば劇画的なんだけど。
 でも、そういう不器用な飛雄馬が好きなのだ。なぜだろ。幼い頃に飛雄馬の再放送を何度も何度も見たことも影響しているのだろう。飛雄馬は確実に私の心の中に住んでいる。

 ちなみに私は「巨人の星」「あしたのジョー」の全巻を揃えてます。漫画で全巻持っているのは、この2つだけ。

■で、強引に自転車に繋げてみる

 さて、こういう濃くてウザくてイヤになるほどに魅力的なこれらの物語。そういう自転車マンガが欲しい、という風に、私は繋げたいと思うのだよ。強引? いやまあ、そう言うなって。
 読まずにはいられない物語。それは濃くてダサくてそれでもどこか人々のDNAのようなものを刺激する物語だ。そういうダッサい自転車物語、自転車のマンガは出来ないものかと思う。もしもそれが流行れば、自転車は確実にメジャーになる。「サイクル野郎」(庄司としお著)も「並木通りアオバ自転車店」(宮尾岳著)もいいんだけど、やはりあっさりしている。叙情派だ。梶原のような強引で無理矢理なパワーはない。「ギャンブルレーサー」(田中健著)にいたってはクールすぎて知的であるほどだ。
「ツールをめざす」でも「競輪選手が主人公」でもいい。努力、友情、勝利、で、根性。さらには「ギャラクティカ・ペダリング!」「シフトチェンジ・テリオス!」(こりゃ「リングにかけろ」か)の手合いの破天荒さも欲しい。その上、自転車に姉を殺されたライバルとか、幼い頃から自転車漕ぎしか知らないロボットのような親友とかの、濃いメンツも当然のように登場する。そういうウザイぐらいのスポ根ドラマを、誰かに描いて欲しいのだよ。
 野球とボクシングという日本のプロスポーツは、少年マンガの影響で発展したという側面は大いにあると思う。サッカー人気の奥底に「キャプテン翼」が存在するようにね。
 現在のプロ野球の不人気も、ひょっとしたら、現代にこれといった野球マンガが存在しないことが原因なのかもしれないよ。

■また宣伝

 で、拙書のスポ根自転車紀行(ウソ)「日本史の旅は、自転車に限る!」(えい出版社)が、いよいよ来月アタマに発売されます。1400円。現在最終ゲラの直し中……。

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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

「先崎学の浮いたり沈んだり」先崎学著 文春文庫

 週刊文春に好評連載中の先崎エッセイ。毎回毎回レベルを落とさず、適当にはじけながらも適当にまじめ。常に面白い。昨今、女性ばかりが好調なエッセイ業界の中で、土屋教授と並んで気を吐く男性エッセイストであろうと思う。
 先崎学氏は将棋のプロ。八段だ。タイトルの「浮いたり沈んだり」も将棋用語である。ある駒を盤面の上の方に出撃させたのに、どこの駒ともききが繋がっていない、というような状態を「駒が浮いている」という具合に使う。そういう先崎八段のエッセイだから、もちろんのこと話は「将棋ネタ」だらけだ。だけど、将棋を知らない人にとっても面白く読めると思う。将棋ネタの向こうに「あるよな、あるある」という世界が透けて見えてくる。
 先崎氏は強いには強いんだけど、羽生、谷川、佐藤、森内、などの名人、棋聖、竜王の手合いのスーパースターたちに、ほんの少し劣る、というぐらいの位置にいる。そこがペーソスとなり、笑いとなり、エッセイのクオリティを高めている。
 疲れてるとき、気分が乗らないとき、サラッと読めてオススメです。

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