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疋田智の「週刊 自転車ツーキニスト」

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ふたつの最高点「ピーク」と「絶頂」の(週刊 自転車ツーキニスト636)

2015/10/19

 
 
 
 
 
 
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      ふたつの最高点「ピーク」と「絶頂」の636号 

■なぜ「疲労のピーク」?

 今に始まったことじゃないけれど、テレビ(なかでもワイドショー)を観ていると、奇妙なナレーションが流れることがある。
 このところ私が気になるのが「ピーク」と「絶頂」だ。
 同じような言葉だけど、使われ方がちょいと違う。おおまかなところ次のような感じだ。

 まずはピーク。
 たとえばスポーツ選手を追ったVTRの中「このとき、○○選手は、疲労のピークに達していた」なんていう。
 これ、ちょっとおかしくないか? ピークってのは、当たり前だけど「頂上」なわけで、最高点を指す話だ。ピークを過ぎたら、次は下がり始める。それがピーク。
 つまり「疲労のピーク」なんて使い方をすると、おや? 今が疲労の頂上? では、その後、疲労は回復するのかな? 今が一番疲れてるのかな? なんてことになる。
 もちろんそんなことはあり得ないわけでね。要するにピークの語の使い方が間違っているのである。
 これが「連休の渋滞は今日がピークです」なら分かる。翌日からはクルマが減るんだろうから。だけど、疲労のピークはないよね。なんか特別なクスリでも飲んだりするんじゃろか? それじゃドーピング。
 でも、このところのワイドショー、「疲労のピークに達していた」ってよく流れるんだよ。
 特に薄っぺらな感動を強要するスポーツVTRなどで。
 少なくとも「疲労の限界に達していた」とかにしていただきたい(じつはこれもヤなんだけど、ピークよりマシということで)と思うのだけれど、なかなか消えない。疲労のピーク。

■絶頂はもっと罪深い?

 ならば「絶頂」はどうか。
 これはもう、必ず流れるのが「○○さん(たいていママ)は、二人の子どもを授かり、幸せの絶頂の中にいた」というようなナレーションだ。よく見てると分かる。こういうシチュエーションの時、これまた必ずそう流れるから。
 そうすか、幸せの絶頂すか……。子どもが産まれると、なぜ決まってテレビのナレーションはそう言うかね。
 子どもを授かるのは、確かにイイコトであることが多いけど、それを判で押したように必ず「幸せの絶頂」と称するのはどういうワケか。
 この「絶頂」の使い方、「ピーク」と違って「使い方が間違ってる!」というわけじゃないんだけれど、そのタマラナサは段違いだ。段違いにこっちの方が悪い。
 人によっては望まぬ出産だってあるだろう。これからの生活費をどうしようと思いながら生むことだってあるだろうし、その子をめぐって夫婦、嫁姑がタマラン対決をしていることだってあるかもしれない。各々には各々の事情ってやつがあるのだ。
 そもそも「絶頂」ってのは(ピークと同じく)頂上であり、最高到達点なわけだが、ホントに最高点なのかも分からない。人によっては「司法試験に合格した時の方が嬉しかった!」なんて人もいるかもしれないぞ。
 要するに、人それぞれなのだ。
 幸せの絶頂かどうかなんて、それこそ最もパーソナルなカテゴリーに属する。人それぞれの感情であり、シチュエーションであるはずなのに。ところが、ほんと判で押したように「幸せの絶頂の中にいた」である。
 勝手に決めるな。
 だいたい、こんな粗雑な言葉遣いをするディレクターごときに、人の一生のシアワセを、勝手に決められてしまいたくないよ。ほんにいいツラの皮。

■紋切り型で手垢の付いた

 そういう紋切り型で手垢の付いた表現が、このところとみに増えていると思う。
 パターンに当てはめて、あらよっと一丁上がり。
 以前から、テレビのナレーションってのは「折からの強風にあおられ」だの「抜けるような青い空」だの「カモシカのようにすらりとした脚」だの、紋切り型表現は多かったわけだが(そもそもで言うとカモシカの脚ってすらりとしてないよ)、ただ、このところの話は、そんなレベルからも大いに逸脱している。

 かつての紋切り型は「使われた当初はシャレてたけど、みんなが使うようになって、いつしか、古くて陳腐な表現に堕してしまった」というようなところだったろう。
 でも、今は違う。
 書き手の薄っぺらな意識「こんなもんだろ」が、そのままナレーションに反映された結果なのだ。
 実を言うと「紋切り型」ですらない。簡単に言うなら、ただの「表現のコピペ」だ。
 はいはい、子ども産まれましたか、では「幸せの絶頂」ということでひとつ。ペタ。
 はいはい、疲れましたか、それでは「疲労のピーク」ということで。ペタ。
 脳味噌が何にも考えてない。

 私は苦々しい思いで、毎日そういうひとつひとつを赤ボールペンで直していく。
 何も考えていないナレーション原稿が、不愉快で仕方がない。
 私ひとりがやったところで、テレビ全体、とうてい追いつかないとは思うのだけど。

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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

「中国は腹の底で日本をどう思っているのか」富坂聰著 PHP新書
「なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか」石平著 PHP新書
「日本の敵 よみがえる民族主義に備えよ」宮家邦彦著 文春新書

 先日、郡山、松山と連続して出かけた週末に、電車と飛行機の中で、この手の本ばかり読んでた。
 もちろん南シナ海、東シナ海の米中の動きが気になるし、心配だったからさ。
 この3冊の言わんとしていることは、じつは奥の奥で通底している。ひとことで言うなら「まず相手を知らねば対処できない(備えられない)」という、当たり前と言えば当たり前だが、いま最もナイガシロにされている部分だ。読んでみれば、頷く話が多い。なるほど、相手は一筋縄ではいかないぞ、と、憂鬱にもなる。富坂氏の「腹の底」は、中朝関係についての誤解を解くのに役立つだろう。宮家氏の「日本の敵」も、なるほどネットアセスメントは急務だと思った。
 3冊は3冊ともためになったんだが、今回(僅差ながら)一番「なるほど」と思ったのは、石平氏の「なぜ覇権の妄想を…」だったな。
 石平氏と言えば「ちょっと過激なほどに中国嫌いの“元”中国人で、かなり右翼チックな物言いが売り」というのが、大方の見方だと思うけど(私もそう思ってた)、いやなに、本書はなかなかいい。
 中華思想というものを解き明かし、その結果、東アジアで何が起きてきたかを論じるというのが、本書の趣旨で、(1)中華思想というものにイカれた中国人と(2)それを真似しようとして失敗した戦前日本人、さらに(3)小中華を振り回してきた韓国人、それぞれについて解説し、分析し、反省をもこめていく。その結果、この東アジアで何と何がぶつかり合っているのかが徐々に解き明かされていく。帯の「養老孟司氏絶賛!」も満更ワカランではない。
 おしむらくは、本書、タイトルが悪いね。
 こういう「売らんかなタイトル」じゃなくて、素直に「中華思想の実像」だの「中華思想の過去、そして現在」だのにすればよかったのに。
 これじゃ凡百の中国ヘイト本のタイトルに埋没してしまう。石平氏、それゆえ損してると思うぞ。

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「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
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「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書

「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
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