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疋田智の「週刊 自転車ツーキニスト」

環境、ダイエットに効果抜群。どなたにもオススメの「自転車通勤」ですが、そのノウハウやポリシーを色々な人にお伝えするメルマガです。
と、思ってたのですが、ただ単に私ヒキタからのバカメールが届きます。ご容赦。

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とびしま海道をオススメする(その2)の(週刊 自転車ツーキニスト635)

2015/10/03

 
 
 
 
 
 
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      とびしま海道をオススメする(その2)の635号

■とびしま海道・御手洗地区は、あたかも「歴史の凍結保存地区」

 とびしま海道の続きであります。
 この海道沿いは、基本的に、町並み古く、住民フレンドリーで、自然豊か。
 これは全島に共通しているのだけれど、その魅力が、特にスペシャルな形で凝縮されているのが、大崎下島の御手洗(みたらい)地域だろう。
 簡単に言うと、ここには「昭和初期」がそのままの形で残っているのだ。
 寛文六年(1666年)に「潮待ち、風町の港」としてひらかれた。江戸期には瀬戸内海運の交差点として、ずいぶんと賑わった時代もあったという。しかし、やがて汽船、鉄道、電信電話の普及により、次第に役割を失ってしまう。島はあたかも凍結保存されたように、往時の姿のまま、半世紀以上の時が流れていった。

 その御手洗集落の中心に言ってみると、おお、確かにこれは街並みのフリーズドライ。
 小さな商業地には、古い佇まいのままの、芝居小屋「乙女座」があり、御維新からこちら直せない時計はないという「松浦時計店」がある。タバコ屋の看板文字は「右から左に」なんてのは当たり前で、とにかくここはいまだに昭和初期のままなのだ。

 その中に一軒の洋館があった。現在は、完全な廃墟だ。
 石と金属でできた門の外から見ると、壁のところどころが大きく崩れていて、内部が見える。
 漆喰の壁、壊れた板床(フローリングだ)、破れた障子、和洋折衷のその姿は、廃墟となった今も、かつての豪華さ、ハイカラさを物語ってくれる。
 この住居は昭和3年に建った。建てたのは、中村春吉。
 すぐそば(歩いて30歩くらい)の神社には彼の碑がある。碑文によるとこうある。
『明治4年生・昭和20年没。日本で初めて「自転車世界一周」を成し遂げた男。』

■元祖サイクルツーリスト・中村春吉に会おう

 なんと、我々の元祖のような男がここにいたのだ。
「ぐふふふ、ヒキタさん、私はこれを見せたかったのですよ。この人は、いわば私たちの大先輩、はるかなる先達…」
 案内してくれた、NPOシクロツーリズムしまなみの宇都宮一成さんがいう。その通りなのだ。特に宇都宮氏にとってはそうだ。
 なにしろ宇都宮氏は、二十世紀の終わり頃、奥さんとともにタンデム自転車で、世界一周(いや二周以上)10万kmを10年かけて走った男なのだから。
「そうですよねぇ、宇都宮さん。この中村さんは何万kmくらい走ったんでしょうねぇ」
「アジアからヨーロッパを抜けて、北米ですから、まあ北半球一周というか地球半周ですね。一説によるとだいたい2万km程度だそうです。しかし、明治のあの当時ですよ。東南アジアや、インド、中近東なんて、道すら満足になかったでしょう。どんなにパンクし、どんなに言葉が通じず、どんなに誤解を受け、どんなに石持て追われたことでしょう。そのご苦労を思うと、うくくくく……」

 中村春吉、聞けば明治期にはそこそこ有名だったこともあったそうだ。
 それはそうだろう。まだ開国して間もない極東の小国日本から、自転車一台で世界に雄飛したんだから。その冒険譚は新聞などにも多く載り、人気を博したのだそうだ。
 地元の郷土史家である今崎仙也さんに話を聞くと、春吉、生まれは御手洗で、少年の頃に下関から朝鮮に渡ったり、ハワイに渡ったりしながら、31歳になって自転車世界一周を完遂した。
「そして、老境を迎えると、故郷御手洗に帰ってきたのですよ。その時に建てたのが、あの洋館です」
 昭和3年築。つまり、この洋館は、中村春吉が故郷に飾った「錦」だったわけだ。

■瀬戸内自転車ネットワーク

 さて春吉の話はさておき「とびしま海道最後の島・岡村島」から「しまなみ海道真ん中の島・大三島」までは、じつはほんのちょっとの距離しかない。あと少し橋を架けると、繋がってしまう。そうなると、この海域には、三都市(尾道・今治・呉)を結ぶ自転車ネットワークができあがる。

【位置関係をいうと、こんな感じです】
http://www.geocities.jp/cnkrs800/photo/seto/map2.jpg

 実際に架橋の計画はあるそうで、サイクリストとしては、その実現を待つばかりだ。
「しまなみ海道」はこのところの自転車ブームにも後押しされて、ずいぶんと観光開発された。リピーターも多い。しかし、どんなにしまなみ海道ファンであっても、2、3回訪れたら、次は別のところに行こうと思うのは人情だろう。
 しかし、そこにとびしまが加わるとしたらどうか。
 3都市が自由自在、自転車でめぐるコースは格段に増える。しまなみを中心とした瀬戸内サイクリングコースに、新たにワイルドな魅力が加わり、3度、4度、いや、それ以上のリピーターが見込めるはずだ。
 私は地元の方のために思う。今治市と尾道市と呉市は今こそ手を携えて「瀬戸内自転車観光“圏”」を考えていくべきだろう。

 そうそう、中村春吉っつぁんについては、私ヒキタ、この旅から数ヶ月後に「サイクルスポーツ」誌で連載小説をスタートさせました。
 タイトルは「中村春吉 100年前の地球漫遊記」。
 現在、第20回目でありましてね。春吉はインドの砂漠地域で空腹と黒豹に襲われ、絶体絶命のピンチを切り抜けたところです。

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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

「投資バカ」中野晴啓著 朝日新書

 買ってはいけない金融商品とはどんなものか? 業者にとってのカモネギ客にならないためにはどうしたらいいか? を、デイトレード、FX、投資信託、ほか、さまざまなジャンルに関して論じた(?)もの。著者はセゾン投信株式会社の社長だ。
 しかしながら、「だからセゾン投信の投信を買いましょう」というわけじゃない。
 本書のキモをひとことで言うなら「向こうからやってくるオススメ話に、儲け話は絶対ない」である。
 そういう話には必ず裏がある。それがたとえ大手の銀行や保険屋さんであっても、はたまたどんなジャンルであってもだ。簡単に言うと「そんなに確実なら自分で買え、勝手に機関投資家ってろ」という話。
 だから、薦められる話には絶対に乗っちゃいけない。……ということになるんだが、いいのか、社長、という感じではある。
 セゾン投信の社員は、社長がこんなこと書いてちゃ、やりにくかろうなぁ。あ、そうか。逆にいいのか。「おたくの社長さんは正直だから」とかいって。
 でも、ま、当たり前といえば当たり前の話である。
 ただ、それを知らない人は確かに多すぎる。だからこそ、銀行さんから薦められるままに退職金などを○○××(ジャンルは何でも可)に投じて泣きを見る人が後を絶たないのだ。
 要するに金融リテラシーをしっかり持ち、儲け話は(いや、資産保全方法は)自分で探し、自分から働きかけろ、という話になる。ま、当然といえば当然だ。
 でも、おそらく昭和の時代ならば、営業トーク通りに「はいはい」と買ったとしても、客も業者もすべてがOKだったんだろうとも思う。全部が右肩上がりだったから。
 平成になってもう27年。相変わらず金利は最低のままだし、カネは自然に増えていく、なんて夢物語になった。
 良きにせよ悪しきにせよ、我々は必然的にカネについて学ばねばならないことになった。色んなところで言われてるところだけど、子どもに「おカネの論理」を教える教育なんてのも、必要な時代になったのだ。

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【ヒキタ最新刊】
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
http://www.amazon.co.jp/dp/4864120609
「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト
http://www.amazon.co.jp/dp/4777931048
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
http://www.amazon.co.jp/dp/4022617616
【好評既刊本】
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書

「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
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