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疋田智の「週刊 自転車ツーキニスト」

環境、ダイエットに効果抜群。どなたにもオススメの「自転車通勤」ですが、そのノウハウやポリシーを色々な人にお伝えするメルマガです。
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【シリーズ1】舛添東京都知事が根本から勘違いしていること、の(週刊 自転車ツーキニスト574)

2014/09/08

 
 
 
 
 
 
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【シリーズ1】舛添東京都知事が根本から勘違いしていること、の574号

■間違いだらけの舛添ドクトリン

 いやはや、先週は忙しすぎましてね。書かねばならないことが多々あるのに、当メルマガ「週刊自転車ツーキニスト」書くことができなかった。本業の都合、またそれ以外にも、いろいろと重なってしまったもので。すいません。
 もちろん「書かねばならんこと」とは、先月29日に出た、自転車走行空間についての舛添要一東京都知事の見解である。
 一言でいうと、まったく間違っている。
 というより、都知事は問題の本質を誤解している。
 あえて冒頭で言うけれど、自転車が車道を走るべきというのは、いわば「ママチャリを事故から守るため」なのだ。
 これはこれから縷々述べていく基本なんだが、車道走行は、決して高速自転車(ロードバイクやクロスバイクなど)の都合で言っているのではなく、ママチャリを含む自転車全般のために「自転車は車道の方が歩道より安全」なのである。
 だからこそ、欧米諸国はいずれも、自転車=車道が基本であり、歩道は必ず「バイク・フリー(アルコール・フリーと同じ意味)」となっているのだ。

■誤解の大本に「日本での自転車」の特殊性

 ところが、そうしたことを誤解されたまま、あたかも「車道を走りたい」というのは「スポーツ自転車乗りのワガママ」のように、メディアも事の本質を理解しているとは思えないまま、ここまできた。
 その大本には、もちろん「日本の中での自転車」という特殊性がある。昭和45年の道交法改正以降「チャリンコは歩道だよ」とされてきた日本だけの特殊なシチュエーション。
 その中で、自転車は「歩行者に毛の生えたもの」という扱いしか受けなくなった。
 ところが、諸外国ではまったく違うのだ。
 オランダやデンマークの風景を見るがいい。
 ダッチバイク(向こうのママチャリ的存在)に乗ったおばあちゃんたちが普通に車道(または自転車専用道)を疾走し、若いパパやママが、子どもを二人乗せたトレーラーを引っぱりながら、車道を安全に走っている姿を。
 国際的なスタンダードで見ると、日本が特殊なのである。そして、最も注目すべきは、その特殊なニッポンこそ、先進国中最も自転車事故が多い国だという事実だ。
 そこに今回の舛添知事の会見である。
「何十万もするレースできるような自転車に乗っている人はほんの一握りで、私はもっと多くのママチャリの気持ちを代弁したいと思う」という。
 ヘンなことを言って都民をミスリードしてもらっては困る。
 誤解を恐れず言わせていただく。多くのママチャリの気持ちを代弁したいのは、都知事よりも、むしろ私だ。今現在、6歳3歳0歳の息子娘を育て、自転車に乗せている、私だ。

 自転車レーンを車道に作るべき、というのは「ロードバイクが車道を高速で走りたいから」ではない。
 あえて言うなら「ママチャリのために」なのである。

 というようなことを考えながら、様々な業務に取りかかりながら、ジリジリと、ニュースとしての「旬」が過ぎるのを目の前にし、まさに切歯扼腕というのか、タマラン思いで日々を過ごしていたのが、私にとっての先週だった。
 というわけで、今日から「週刊自転車ツーキニスト」は「ほぼ日刊自転車ツーキニスト」と化し、日々、舛添都知事の自転車政策が、いかに都民を危険にさらし、いかに子育てのママチャリを追い込み、どんなに間違っているかを、しつこくしつこく論じたいと思う。その上で「では、どうすればいいか」を、現実に即し「最大多数の最大幸福」として述べたいと思う。
 反論があるならば、ぜひこのメルマガに返信をいただきたい。この“melma!”のメルマガは、便利なことに「返信」しますと、そのまま私の元にメールが届きます。
 特に、都関連の方、ぜひよろしく。

■舛添都知事の「自転車会見」の内容

 というわけで、8月29日の舛添東京都知事の会見内容である まずは、ここを読んでおかねば、何のことやら分からない。
 彼の言い分をまとめてみると、次のようになる。合計5分程度の自転車部分(記者の質問3つ分)を要約してみよう。

【舛添都知事8月29日会見(自転車部分)要旨】
 自転車走行空間は、基本は国のガイドライン通り、車道に作るべき。それが理想。
 しかし、多くの自転車はママチャリである。私が乗っているのもママチャリだ。
 なぜ生活者、中でもお母さんたちがママチャリに乗るか、その理由は簡単で、前と後ろにカゴが付いているママチャリは子育てに必須だから。マウンテンバイクや高速の(自転車)は、前や後に子どもや買い物袋を乗せられない。
 ママチャリはそんなにスピードが出ないから、歩道でも安全。そして、歩道が広くて歩道と自転車を分けるならば、そっちの方がはるかに安全。
(国のガイドラインが理想ではあるが)基本はママチャリが安全であるように、妥協せざるを得ない。
 新規の道路は原則、車道に(自転車レーンを)造るけれど、既存の道路は(歩道通行の)現状を変えない。広い歩道を歩行者と自転車に分けるのがいい。
(ロードバイクのように)時速50キロで行きたいような人は、クルマに乗りなさい。
 何十万もするレースできるような自転車に乗っている人はほんの一握りで、私はもっと多くのママチャリの気持ちを代弁したいと思う。

 都知事「どうだ、オレは弱者の味方、ママチャリの味方だろ」と自慢げな様子が目に見えるようでしょ。
 弱者の味方はいい。しかし、よく読んでみると、特に後半、おかしいな、と思う部分、事実と違う部分が、ボロボロと出てくるのだ。マウンテンバイクが唐突に出てくる誤解とか、時速50キロ(うーむ(笑))とか、細かい部分はさておき、基本ポリシーからご説明しよう。

■「ママチャリにとって」歩道は危険

 舛添知事、要約の最後の部分で顕著に分かると思うけど、ヒジョーにありがちな陥穽にはまっている。
 つまり「ロードバイクに乗るような趣味の自転車乗りは、車道通行を主張するけど、ママチャリは車道を走れない。だから歩道だ」という考え方だ。
 これは舛添知事ばかりでなく、ちょっと自転車を囓ったばかりの識者(十年前の新聞の論説委員など)がハマりがちな方向なのだけど、実は、まったく違うのである。
 我々は「ママチャリも、歩道は危険」と言っているのだ。これは多くの都市交通の専門家も指摘している。
 ロードバイク、ママチャリを問わず、自転車は車道を通った方が安全。国土交通省ですら認めている現実だ。

 では、この逆説的な事実は、なにゆえなのか。
 それは、自転車事故の多くは「1.歩道の自転車はクルマの鼻先を避けることができない」という理由と、「2.歩道というものはドライバーにとって“二重の意味で”見えないスペースになっている」という理由から、起きているからだ。
 1の理由からご説明しよう。
 次の画像を見ていただきたい。
http://fast-uploader.com/file/6965605773137/
 大通りに、小さな通りが連結している。いわゆる「細街路」から、クルマが出てくる場合だが、ま、こんなのは全国どこでも見る、日常の光景だ。
 こうしたクルマと鉢合わせするのを、歩道の自転車は避け得ない。
 クルマも鼻先を突き出さすことを避け得ない。そうしないと曲がる先の状況が分からないからだ。
 左側を通行する方がまだマシとはいうものの、この手の通りの場合、逆から見ても状況はほぼ同じだ。
http://fast-uploader.com/file/6965605805024/
 ちなみにモザイク処理の奥、このドライバーの視線の先に、私はない。彼は、次に曲がる先、つまり車道しか見ていなかった。
 歩道上の自転車などには、気づけないのである。
 これらのクルマと、歩道上のママチャリは、必ずぶつかる。その結果、2日に1人程度のペースで、日々ママチャリ族が亡くなっている。こうした事故は「ママチャリ程度のスピード」すなわち歩くより速いものに歩道を走らせている限り、必ず起きる現実なのだ。
 お分かりだろう。ほとんどの自転車事故がママチャリによる事故である、その理由が。
 これはただ単に「ママチャリが多いから」ではない。これに比して、ロードバイクはこうした事故をほとんど起こさない。それは、ロードバイクが歩道を走らないからだ。ママチャリだって、もしも車道(左側)を通行しているならば、ドライバーの目に入る。ドライバーも「お、自転車が来たな、通り過ぎたら、前に出よう」と思う。

■警視庁の統計で、アメリカの統計で…

 実はこのことはすでに警察関係者の間でも常識となっている。
 次の図を見ていただきたい。
http://fast-uploader.com/file/6965606486306/
 これは警視庁が、同じシチュエーション、つまり、大通りに細街路が連結している部分で、どういう事故が起きているかをまとめたものだ。
 一目瞭然、これを見て分かるのは、車道よりも歩道の方が危険、さらに言うなら、より車道(大通りの)から遠い部分を走っている自転車がもっと危険、という厳然たる事実だ(右側通行と左側通行の話はここでは措いておく。また後に詳細に述べるから)。
 自転車は、ロードバイクだろうが、ママチャリだろうが「歩道の方が危険」なのである。
 逆説的ではあるが、これは事実だ。
 アメリカ連邦交通局の調べでも、歩道を通る自転車の死亡事故率は、車道を通る自転車の死亡事故率の、なんと6.7倍にも及んでいる。
http://fast-uploader.com/file/6965606836865/
 歩道は車道より、明らかに危険。その理由は、まだある。(次号に続く)

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 休載。
「ツール・ド・フランス100話」ムスタファ・ケスス/クレマン・ラコンブ著 斎藤かぐみ訳 白水社
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「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
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  • 名無しさん2014/09/09

    疋田さんの明快な説明に感服します。「良い」じゃなくて「すげー良い」ですよ。どんどんしつこく、ねちっこくやってください(^o^) 

  • 名無しさん2014/09/08

    疋田さんの本は殆ど読んでいます。舛添知事の発言本当におかしいですね。舛添発言を糾弾して下さい。“日刊”ツーキニスト楽しみにしています。頑張って下さい!

  • 名無しさん2014/09/08

    今の、日本の全ての問題と同じ構図、影響力のある人の(間違った)発言がミスリードを誘発し、間違った常識を(右へ倣えの)日本人があたかも正しいことのように理解してしまう。。。

  • 名無しさん2014/09/08

    BSTBSmi見ました。

    消化不良だったのではないのではないでしょうか?

    頑張ってくださいね。