自転車

疋田智の「週刊 自転車ツーキニスト」

環境、ダイエットに効果抜群。どなたにもオススメの「自転車通勤」ですが、そのノウハウやポリシーを色々な人にお伝えするメルマガです。
と、思ってたのですが、ただ単に私ヒキタからのバカメールが届きます。ご容赦。

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日本経済新聞のかくも不誠実な対応(かなり長いっす)の(週刊 自転車ツーキニスト449)

2011/11/04

 
 
 
 
 
 
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┏━┫ 週刊 自転車ツーキニスト "Weekly Bicycle Tourkinist" ┣━┓
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   日本経済新聞のかくも不誠実な対応(かなり長いっす)の449号

■最初に告知を片付ける

 今週末はサイクルモードだよーん。……、というか、あれ、もう金曜日。今日からだ。
http://www.cyclemode.net/
 例によって、ヒキタ、喋ってきます。土曜日。内容は、もちろん、今回の“警察庁の一大方針転換”についてであります。
 今回のこれ、どこが評価できて、どこに問題点が潜んでいるか、もう喋ることは山ほどあるんだけど、与えられた時間は、メインに30分、“KEEP LEFT”で60分。
 うひょー、1人に与えられた時間としてはもちろん長い(ありがたい話)。でも全部喋るには短いぞ(@∀@;)。
 でもま、与えられた枠の中でベストを尽くさなくては。

 私ヒキタの出演予定は次の通りです。
【東京(幕張メッセ)】
11/5(土)1130〜1200 メインステージ 1300〜1400 “KEEP LEFT”ステージ
【大阪(インテックス大阪)】
11/12(土)1130〜1200 メインステージ 1530〜1630 “KEEP LEFT”ステージ

※“TEAM KEEP LEFT”については↓こちらをどうぞ。
http://www.cyclemode.net/team_keep_left/

 あと、来週月曜日に、宇都宮の市議、県議、市職員有志の方々に、これまた「自転車街づくり、かくあるべし」というのをやってきます。こりゃもうピンポイントなんですが、宇都宮の行政マンの方々、よろしくー。

■見過ごせない10/31日経新聞の社説

 さーて、タイトルの“日経新聞”話だ。
 話は、先月31日の社説欄に載った”「自転車は車道」とするのなら”と題する文章についてであります。
 まずは、お読みいただきたいんだけど、一読、すぐ分かるように「自転車事故の8割は車道で起きている」は、完全なる誤報であります。正しくは「交差点で起きている」。

【社説の当該部分】
http://or2.mobi/index.php?mode=image&file=16103.jpg
【日本経済新聞社の公式ウェブから、社説全体「自転車は車道」とするのなら:日本経済新聞社説】
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE1E4E2E7E1E5EAE2E1E3E3E2E0E2E3E38297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D
 ※うひょー、まだ放置してるよ(ヒキタ註)。

 当該社説のこの部分は、このまま放っておくと、本気でワケの分からないことになる。
 自転車事故の8割が車道で起きているのなら、車道は危険じゃないですか。それなのになぜ自転車を車道に下ろすの? ってね。
 当該社説の筆者のアタマの中には、暗に「車道で事故が起きているのに、車道に下ろすとは何ごと」というのがあるのかもしれない。しかしながら、それこそ大誤解なのだ。

 最初に言っておくと、自転車は「車道の方が安全」なのですよ。
 事故の8割が交差点で起きているのは、多くの場合、その交差点に、歩道(クルマから見えないスペースだ)からいきなり下りてきて、その自転車とクルマとがぶつかる、その事故が日本の自転車の大多数を占めている、ということを示しているのです。
 だからこそ、欧米諸国はみな「自転車=車道」を義務づけている。これは歩行者のためというだけでなく、自転車にとっても安全だから、なのですね。

■困ったのが「日経の影響力」

 しかしながら、どんなに誤解に基づいていようとも、日経読者のエグゼクティブたちは、こういう噴飯ものの間違い社説を読んで知識を蓄えるわけです。
 して、ある日、周囲にこう吹聴する。
「車道の自転車は危ないからねぇ、な、ちみぃ、知ってるか? 自転車事故の8割は車道で……」
 フィクションじゃありません。リアルにこういうことになるのです。

 というわけで、私しゃ、この10月31日、日本経済新聞社に「訂正をお願いします」と、電話で抗議を入れましたがな。
 こちらの身分と連絡先も名乗ってね。
 さーて、日経さん、どう出るか。
 ま、ここまであからさまな間違いですからね。私は「申し訳なーい、すぐに訂正しまーす」になると思ってた。

【参考】(財)交通事故総合分析センターが、およそ15万件の死亡事故を対象に、平成10〜15年を集計した結果では、こうなっています。

出合い頭 71%
右折 4.7%
左折 1.6%    交差点内が77.3%

正面衝突 4.6%
追突 1.0%   これらは車道か歩道か分かりませんが、直線路、5.6%

転倒 9%
対人 6%
衝突(ヒキタ註:いわゆる自爆事故のこと) 4%

■電話がかかってきたぞ

 さーて、その10/31の夕刻、日経のS口論説委員と名乗る方から、私の携帯に電話がかかってきました。
 私は丁寧に「8割は車道」は間違っています、訂正をどうぞお願い、と伝えました。
 長々話した後、S口論説委員は「誤りは分かりました。訂正するかどうか、社内で協議します」といって、電話を切りました。ちなみにS口氏本人は、この時点では完全に「事故の8割は車道」は、正しいとはいえない、と認めています。

 ということで、さーて、翌日に期待だ。
 実際、こういうのが放置されると、困ってしまうんですよ。
 車道の方が本当は安全なんだという、根源的な真理が覆い隠されてしまう。欧米諸国の自転車政策の意味がまったく分からなくなってしまう。日本のこの40年来の誤解を解いて、安全な交通をつくる機会が潰されてしまう。
 だいたい「8割が車道」では、今回の警察庁だって、まるでバカみたいではないですか。
 警察庁は(ここだけの話)06年末には本当にバカだったけど(小声)、いーや、今は見違えるほど利口になったんですぞ。

 小さな訂正記事が出るだろうなと私は普通に思ってました。
 でも、小さくてもいいのだ。「だって、日経に車道事故が8割って書いてありましたよ」と言う人に「いえ、その後に日経さん、訂正を出してますよ」と言えますから。新聞の訂正というのは、つまりはそういうことなのです。
 でも、ま、やはり「社説」ですから。確かに訂正はちょっと恥ずかしいかなとは思います。
 しかしながら、そうであってもここまで明々白々な間違いです。間違いなら間違いと訂正してこそ「さすがは日経」となるのではないでしょうか。
 とね、このときまでは、私はそう思ってました。

■で、翌朝

 訂正記事は……、出ませんでした。

■この誤りの“本質的な大欠陥”とは何か

 訂正記事は一切なし。それどころか、ネット上にも、相変わらず(今も!)「自転車事故の8割は車道で」の明らかな誤報が放置されています。
 これを書いたS口論説委員は、すでに今回の誤りのことを知っています。知っていますし、誤りと認めています。ちょっと言っておきますと、この「論説委員」って、新聞社の中では相当エラい人なんですよ。
 私との電話でのやりとりの中、彼の言い分は「歩道以外のことを車道としました(交差点含む)」というものでした。私が呆れかえって「歩道以外は全部、車道ですか。それは詭弁というものでしょう」と、事故例などを含め、交差点の話を縷々説明すると「うーん、確かにミスリードでしょうね」と納得していただけたはずです。少なくとも私にはそう聞こえました。
 それなのに、です。
 まことに不誠実な対応と言わざるを得ません。実に残念です。

 さて、今回のこの話、「全体の論調として、日経はそれほど悪くない、自転車にフレンドリーだ」という見方もあるでしょう(日経さんも恐らくそのつもりと思われる)。
 ところが、じつは全然違います。
 論拠に差があると、内容は180度変わるのです。本質の理解がゼロ。
 どういうことかというと……。

●自転車の事故の8割は交差点
 このように正しい情報を採用すると「では、交差点の事故のメカニズムは?」ということになりますね。
 その結果、出合い頭事故が交差点事故の9割を占め、そのほとんどは「(歩道がある道路の場合)歩道から交差点に下りる際」そして「右側通行自転車」が原因だという現実が分かってくるのです。
 欧米ではすでに常識となっている事実を言っておきますと、自転車は「最初から見えていた方が(つまり車道にいる方が)安全」なのです。逆に、自転車をドライバーから覆い隠してしまう歩道こそが危険。
 つまり「一般的な印象とは逆に、自転車は車道の方が安全で、歩道の方が危険」という確固たる現実があるのです。
 8割は交差点、という話からは、そのことを導き出すことができ、ことの本質の理解に結びつく。

 しかし、日経社説のような間違いをとると次のようになってしまいます。

●自転車の事故の8割は車道
 やはり車道は危ない。でも、法律でこう定められているし、歩道の歩行者にとって自転車は危険だから、自転車は無理にでも車道に出さないといけない。

 これでは、自転車事故がなぜ起きるのか、なぜ日本ばかり自転車事故が多いのか、が、まったく分かりません。、なにより「なぜ車道なのか」という理由が180度変わってきてしまいます。
 ここが重要な部分です。
 何度も繰り返しますが、本質は「車道の方が安全」なのです。
 しかし、日経の社説は「車道は、自転車にとって危ないけれど(必要悪として)出なくちゃならない」です。
 これでは、欧米諸国でなぜ車道がスタンダードなのか、日本ばかりがなぜ自転車事故が多いのか、の説明がつかないではないですか。

 つまり、この社説、ぱっと見にはもっともらしいけれど、言ってる内容はまったく逆。ミスリードと言えば、これ以上のミスリードはないのです。
 以前から私が言う「笑顔を浮かべて『自転車って良いね』とはいうけれど、自分自身はまったく自転車に乗らない、自転車の似非サポーター」が、まさにここにいます。

 しっかし、これ、本当にこうしてみると、根拠にするデータを誤読すると、話がかくも変わってくるという典型例ですね。あまりにティピカルすぎて、ジャーナリズムの教科書に載せて欲しいくらいです。

 このあたりも、電話で私は説明しました。
 私は、分かってもらえたと思っていました。
 しかし、論説委員のアタマの中では「どうせチャリンコ、しかも、枝葉末節の話」だったんでしょうね。
 アタマにきますが、しかしながら、まだチャンスはある。
 何のことかというと、10/2の水曜日、つまり、掲載日の翌々日に、私はこのS口論説委員とお会いすることになったからです。
 さて、会うぞ。
 S口さん、まだ間に合うぞ。

■S口論説委員との会見

 というわけで、水曜日のお昼に、当該社説の筆者、S口論説委員とお会いしました。
 S口論説委員の言い分はこうです。
「日経新聞の論説委員同士で、訂正しようかどうしようか、話し合ったところ、交差点は車道でしょう。だから車道でも間違いないとしました」
 ……。
 ちょっと、何を言ってるんですか。交差点は車道でも歩道でもありませんよ。
「いえ、クルマと自転車がぶつかる部分は、車道ではないかと……」
 違います。
 交差点の中というものは、信号機等によって、車両と歩行者ほかが、入れ替わり、交わる部分で、歩道車道の区別は当たらないんです。だから、事故分析センターの分析もまずは「交差点」と「それ以外」を分けてるんですよ。
「しかし段差の下は車道では……」
「あのですね、でしたら、S口さん、交差点の中、横断歩道は、歩道、車道のどっちなんですか?」
「それは……、歩道でしょう……」
 横断“歩道”ですからね。本当はそれも違うんです。横断“歩道”とはいえ、交差点の中は歩道も車道もない、これが基本です。
 でも、いいでしょう。書いた筆者がそう捉えていることが大事です。
 そうですか、交差点は車道、でも横断歩道は歩道……。で、車道事故は8割、と。

 ヘンですね、では、交差点事故の中の、横断歩道で起きた事故は、何%になるんでしょう。
 交差点内の事故は、77.3%ですから、これを車道8割と言うには、横断歩道内の事故は2.3%以下でなければなりませんね。でなくては、四捨五入で8割にならない。

 S口氏は、交差点の中「歩道」だとする横断歩道。横断歩道では事故は2.3%しか起きないというのでしょうか。

■「誤り」か「捏造」。選ぶ道は2つしかない

 実はこの部分、確たる調査結果がないのです。しかし、2.3%未満はどう考えても有り得ない。どんなに少なくとも、2,3割(いや、それ以上)はあるでしょう。
 ということは「車道8割」という数字はどこからきたのか不明になります。
 どこからの数字なのでしょうか。
 データはどこから引っ張ってきたのですか?
 数字の根拠は何ですか?
 まさか捏造したんではないのでしょう?

 話は簡単なのです。
「自転車事故のおよそ8割は交差点で起きている」という事実を、間違えて「車道で起きている」と書いてしまった。あってはならないけれど、そういう間違いは起きます。人間ですから。
 間違えたら、直せばいいのです。訂正し、読者の誤解を解けばいいのです。

 しかしながら、日本経済新聞社S口論説委員はあくまで「自転車事故のおよそ8割は車道で起きている」と言い張る。本当は間違いだと分かっているのに、交差点は車道だという。でも、横断歩道は歩道だという。

 ということは、「8割は車道で起きている」の根拠は何ですか?
 示していただきたいものですね。断言しますが、そんなデータはありません。
 ちなみに対クルマの事故が? というのは、また別カテゴリーの話ですから、まったく当たりませんよ。「対クルマ」と「車道上」はまったく違うのです。
 あえて悪い言い方をしましょうか。
 日本経済新聞社は、都合のいい社説を書くために、データを捏造するんですか?

 今からでも間に合います。
 ぜひ訂正を。
 話は簡単なのです。日経紙面2面にこう書くだけです。

10月31日付の社説“「自転車は車道」とするのなら”の「しかも自転車事故の8割は車道で起きている。」は「しかも自転車事故の8割は交差点で起きている。」の誤りでした。訂正します。

 いかがでしょう、S口さん。

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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

「日経社説に見る戦後経済の歩み」日本経済新聞社編 日本経済新聞社

 ま、そういうわけで、色々喋りましたよ、S口論説委員とは。
 彼の話を(勝手にヒキタが)総合するに、今回の話は、日本経済新聞という新聞の社説を決定する論説委員全員の責任です。当然、これは会社全体の体質そのもの、というべきでしょう。
 となると、こういう書籍も自ずと色褪せて見えるってもんです。
 本書については、特に、話が「“戦後”経済」であります。
 ネットも何もなかった時代、人びとはどんなにウソを並べられても、書かれ放題、抗議しても訂正も謝罪もなし、泣き寝入りをしてきたのでしょう。
 その結果が、こうした本の随所に潜んでいるはずです。“たかがチャリンコ(恐らく日経の論説委員はそう思ってます)”の話であっても、この通りなんだもの、そりゃぁ権謀術数渦巻く「戦後経済」になった日にゃ……。紙面の奥でどんなに多くの人が悔し涙を流したことでしょうか。想像に難くありませんね。本気の話。
 どんなにイイコトを書いても、間違いを訂正せず、頬被りのまんま。それが日経。そう思ってしまいます。
 今回の話というのは「一人の記者のミス」ではありません。

 いかがでしょう、S口さん。何か反論はありますか?

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