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今週、いちばん癒せる映画!

毎週金曜日発行。「今週、いちばん癒せる映画」を選んで紹介します。発行者はいくつかの雑誌で映画評や自己啓発の記事を執筆しています。

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今週、いちばん癒せる映画! vol.62  『火垂るの墓』

2008/07/04



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 今週紹介するのは、来週、7月5日に公開される『火垂るの墓』。
 この作品は岩波ホール40周年の記念作品。また、原作が神戸大空襲を背景している縁で、東京では岩波ホールの単館公開なのに対し、大阪、兵庫では5スクリーン以上で公開されます。
 東京だって、もっと拡大公開されてもいいと思いますけど、ま、しょうがないか。


 高畑勲のアニメ版が、質、興業ともに成功していますから、作る側にもそれなりのプレシャーがあったでしょうが、丁寧な作りとキャスト(とくに主人公の兄妹)が素晴らしく、胸をうつ仕上がりになっています。

 …などと、さも訳知り顔で高畑作品と比べていますが、私はこれを見ていません。だって、あのポスター見るだけで、痛くて痛くて見られないんですもの。心が痛いのか身体が痛いのか分けられないような、全身にきーんと何かが走る痛み。あれはいったいなんなのでしょうね。


 今回、実写版を見てみようと思ったのは、やっと、その痛みといっしょにいられるぐらい、自分がおとなになってきたと思ったから。


 それにしても、この映画は「節子」ですよねー。節子は想像上のキャラクターですが、今や日本だけでなく世界にまで、これほど愛される「少女」はいないのではないかと思うほどです。


「想像上のキャラクター」と書きましたが、よく知られているとおり、節子にはモデルがいます。原作者の野坂昭如は、下の妹を栄養失調で亡くしており、この贖罪意識から作品を書きました。

 この作品には二つの大きなフィクション=虚構があります。まず、映画の中で節子は4歳ですが、モデルとなった妹恵子は、死んだとき1歳4か月でした。死んだ火垂るに一つ一つ名前を与え、墓をつくってやるシーンは、まさに「作り話」なわけです。
 しかし、1歳4か月という年は、まだ「自分が何者なのか」を知ることも、訴えることもできない年です。
 
 ものに名前を与えるということは、そのものの固有性を認めるということです。墓を作るということは、そのものが精いっぱい生きたことに敬意を表するということです。そういう意味も意識せずに、4歳の、自我の芽生えはじめたばかりの節子がそれをやるから、私たちはうっと泣くわけですね。

 もう一つのフィクションは、映画のなかで14歳の兄・清太はとてもやさしいお兄さんなのですが、モデルである原作者野坂昭如は「決してそうではなかった」といっています。かわいがったし面倒もよく見たけれど、旺盛な食欲の前にはどうにも勝てなかった、と。
 畑でトマトを盗んでも、自分だけが食べてしまったこともあったそうです。


 ローフーディストであるところの私が書く感想を、誰も信じてもらえないかもしれません。でも、清太と節子が毎日うすい粥を食べているのを見て、
「あ〜あんなの食べたら、ますますお腹がついてつらくなっちゃうよ〜」
 と思って見ていたのです。

 米だけを食べると、ナトリウムを初めとして体内でミネラルが欠乏します。もちろんビタミンもとれません。これらの栄養が欠乏すると、体力低下や病気も問題ありますが、一番困ることは、「さらなる飢餓感が襲ってくる」ということなのです。
 いらいらして、思いやりのない人間になってしまうということなのです。


 私は、彼らが野宿していたシーンを見ていて、川っぺりに生えている野草を生のまま食べたくて困りました。ええ、変人とでもなんでもいってくださいよ。でも、本当なんだから仕方がない。
「あれ食べたらもっと違う展開が見えてきたのに〜」
 と思うと、すごくせつないんです。。。


 穀作は、人類が「飢え」を制圧するための最高の手段だったのですが、その穀作は、かえって人を「飢え」から逃れられないものにしてしまいました。そして、そのような飢えが、その人の自尊心を傷つけ、罪の意識を深くすりこんでしまうのです。

 
 人が、不要な恐怖感から解放され、しかも、芸術の喜びを感じることができるには、どんな作品を作ったらいいのかな?
 その点から、本当に深く考えさせられた作品でした。
 

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創刊日:2006-12-01  
最終発行日:  
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  • 名無しさん2008/07/04

    視点が独特で読んでいて楽しいです。読んだ後に観れば、まったく別の視点から映画をみることができそうです。