BABY-KIDS NET NEWS タミフルってどんな薬?
発行日:12/20
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☆[B-K NEWS] 2005年12月20日号 ☆
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薬剤師Mippiさんの薬についてのコラム
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■ タミフル
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先月、インフルエンザの治療薬として期待されている「タミフル」を服用し
た患者2人が、飲んで間もなく行動に異常をきたし、1人は車道に走り出て大
型トラックにはねられ死亡、もう1人はマンションの9階から転落死していた
という衝撃の報道がありました。この他にも10代の女性が服用後2日目に窓
から飛び降りようとして母親に止められた例などがあり、アメリカ食品医薬品
局(FDA)の発表によると、日本の16歳以下の服用者12人が死亡してい
たそうです。一般に、インフルエンザでは他の感染症に比べて、高熱や頭痛、
腰痛や、全身のだるさなどの症状が重くなりがちなため、病状の一部である可
能性や他の薬剤の影響も考えられ、タミフルの副作用とは断定されていません
が、厚生労働省は昨年6月に「医薬品・医療用具等安全性情報」を出し注意を
呼びかけています。また添付文書の副作用に異常行動も盛り込まれています。
このような異常行動が、本当にタミフルの副作用なのか、今後の慎重な分
析・報道が期待されるところですが、タミフルとはどのような薬なのかまとめ
てみたいと思います。
■ タミフルとは
タミフルの成分は、「リン酸オセルタミビル」。スイス・ロシュ社が開発し
た製品で、インフルエンザ様症状が発現してから48時間以内に投与を開始す
ると、ウイルスの増殖を妨げ、熱がある期間を1日程度縮める効果があります。
タミフルを大人が服用する場合には、オセルタミビルとして1回75mg(1カ
プセル)を1日2回、5日間経口投与します。小児が服用する場合には医師が
処方した分量(ドライシロップ剤、体重により換算)を1日2回、5日間経口
投与します。
また、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共
同生活者に下記の対象者がいる場合には、カプセル製剤を1日1回、予防使用
することが認められています(7〜10日間継続投与すること)。
※この場合は保険適用にはならず、全額自己負担です。また健康成人と13歳
未満の小児には、予防使用は認められていません。
(1)高齢者(65歳以上)
(2)慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
(3)代謝性疾患患者(糖尿病等)
(4)腎機能障害患者
予防使用する場合には、インフルエンザ感染患者に接触後48時間以内に投
与を開始すること、となっています。
ただし、インフルエンザの予防の基本はワクチン療法であり、本剤の予防使
用はワクチン療法に置き換わるものではない、と本剤の添付文書にも記載され
ています。
■ 日本はタミフル消費大国
先月11月23日の東京新聞などの報道によると、タミフルの日本人消費は
世界一で、過去5年間に日本でタミフルの処方を受けた人は約2400万人、
処方量は世界の77%を占めたそうです。
欧米でのインフルエンザ治療が依然として、安静、水分補給、解熱剤の投与
が中心なのに比べ、日本では2000年ごろまではインフルエンザ脳症の死亡
例が多発し、インフルエンザは怖いというイメージが出来てしまっている、と
見る専門家もいます。さらに日本国内では保険制度や乳幼児医療費補助制度が
行き届いているため、薬価がとても高い(1カプセル約364円)にもかかわ
らず、タミフル信仰が先行していると言われています。
タミフルは発症後48時間以内に服用しなければ効果がない点や、インフル
エンザウイルスを殺すわけではなく、増殖を抑制するため罹病期間を1〜2日
間短縮する程度にすぎない、とも言えるのですが、今回の異常行動の報道をき
っかけに、タミフルの使用の仕方も考え直す時期に来ているのかもしれません。
■ インフルエンザは怖い? インフルエンザ脳炎・脳症とは
「脳炎」とは、脳組織の炎症に起因する症候群の名称であり、脳組織の病原
体の検出により確定されます。一方、脳炎の診断に合致する症状があるにもか
かわらず、脳組織での炎症がないと考えられる症例もあり、この場合は一般的
に「脳症」という診断名が用いられます。ここでは、大きく「脳炎・脳症」と
まとめて考えます。
厚生省(現:厚生労働省)の研究班「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学
的究」の報告では、1999年1月1日から3月31日までに、小児で217
例(そのうちインフルエンザの確定診断がついている例が129例)の脳炎・
脳症と考えられる症例があり、5歳までに全体の82.5%が含まれていたそ
うです。
217例のうち、完全に回復したものが86例、後遺症の残ったものが56例、
現在経過観察中が17例、死亡したものが58例とのことです。
インフルエンザの発症から脳炎・脳症の症状を呈するまでの期間は、平均
1.4日と非常に短く、高熱、痙攣(何度も繰り返したり、10分以上続くこ
とも)とともに意識障害が急速に進行します。脳細胞に炎症を起こす病気なの
で、脳がむくむ脳浮腫も見られます。脳がむくむと頭蓋骨の中の圧力が高まり、
高まりすぎると「脳ヘルニア」という延髄への障害も起こり、予後が非常に悪
くなります。
低年齢の乳幼児では、意識障害に早期に気づいたり、熱性痙攣と異なる痙攣
を見極めるのは難しいと思いますが、万が一脳炎・脳症を起こした場合、脳へ
の影響を小さくするには、けいれんや脳の腫れを抑える治療を一刻も早く受け
る必要があるので、経過の観察がとても大切です。
インフルエンザが脳炎・脳症を起こす原因は、まだ分かっていませんが、
・ インフルエンザウイルスが、ウイルス血症を介して、中枢神経系に侵入
して脳症を起こす。
・ ウイルスを抑えるために体が出す物質(サイトカイン類)が過剰に出て、
脳を壊す。
などの見方が提唱されています。
また、脳炎・脳症が幼児に多いのは、繰り返しインフルエンザに感染して免
疫がある大人に比べ、子供は抵抗力が不十分なことなどが考えられます。
もうひとつ、高熱の際に使用されている一部の解熱剤が脳炎・脳症の引き金
になっているのではないかという指摘もあります。それは、インフルエンザに
よる脳炎・脳症が問題になっているのは、日本だけであること。そして、解熱
効果の高いメフェナム酸やジクロフェナクナトリウムなど、強力な解熱剤が小
児にも使われているのも、やはり日本だけであることからです。
厚生省(現:厚生労働省)研究班による調査結果(1999年1〜3月に報
告されたインフルエンザによる脳炎・脳症のうち分析可能な202人;0〜5
歳80%、1歳最多)では、脳炎・脳症患者の65%が解熱剤を使用しており、
そのうち、メフェナム酸(商品名ポンタールなど)を使った患者の死亡率は
67%、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレンなど)では52%。解
熱剤を使わなかった患者の死亡率は25%。これを元に統計学的に処理すると、
死亡の危険度は、使わなかった場合に比べ、それぞれ4.6倍、3.1倍高い
と報告されています。
そして2000年11月には、厚生省(現:厚生労働省)は「インフルエン
ザ脳炎・脳症患者に対しジクロフェナクナトリウムの投与を禁忌とする」と発
表しました。これは、上記の研究に続き、2000年1〜3月の脳炎・脳症発
症例91例の検討においても、ジクロフェナクナトリウムを使用していた患者
に有意に死亡率が高いという結果が出たためです。
この2種類の解熱剤は、より高熱で使われる傾向がありますが、炎症を抑え
る力も強いため、ウイルスと戦う力を弱めると言われています。熱自体で脳が
侵されることはないので、小児への安易な解熱剤の使用は避ける(使う際も作
用のマイルドなアセトアミノフェンやイブプロフェンにする)よう、普段から
注意が必要です。
しかし、インフルエンザ脳炎・脳症では、解熱剤を使用しない例でも死亡例
が出ていますし、42度以上の発熱例では解熱剤の有無に関わらず、ほぼ全例
が死亡の転帰をとると言われていますので、因果関係が証明されたわけではあ
りません。
■ タミフル神話は危険?
発売以来、インフルエンザの特効薬としてあっという間にその名をとどろか
せたタミフル。実際、私の周りでもインフルエンザシーズンが近づくたびに、
「タミフルがあるからワクチンはしなくても平気でしょ?」という声もちらほ
ら。今回の異常行動の報道は「くすりはリスク」という言葉を思い出すきっか
けにはなったのでしょうが、それでも自分たちは大丈夫、という意識が強いよ
うな気がします。鳥インフルエンザや新型インフルエンザの登場懸念から世界
各国でタミフルの備蓄競争が繰り広げられていたり、個人輸入のタミフルが
オークションなどで高値で売買されている、という情報も相次いでいます。
しかし、インフルエンザに罹っても、あまりに早期にタミフルを飲むと、感
染したインフルエンザウイルスに対する免疫が十分に出来なくなる恐れがある
そうです。また、全国的にタミフルを使いすぎていると、かつて騒がれた抗生
物質の使いすぎによる耐性菌出現のように、タミフル耐性インフルエンザウイ
ルスが出現してくる(既に出現も!)という怖い情報もあります。
よって、予防目的の内服は、さらに耐性タイプの新型ウイルスをつくり出す
ことになるとも考えられ、安易な使用は危険だと言えそうです。
今後のタミフル情報には目が離せませんね。
まもなくクリスマスや年末年始と楽しいイベントの続く時期、皆さんお体に
気をつけてお過ごしください。少し早いですが、どうぞよいお年をお迎えくだ
さい。
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