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先週の展覧会(美術としての写真)

2001/11/02

写真を美術として捉えた時、写真美術館の「手探りのキッス」の写真の件で
取り上げたように、美術の重要な要素と考えられるオリジナル性について
写真には重大な脆弱性が存在する。写真にはその機能上同一機材で同一
場所から同一の条件で撮ればほぼ同じ写真が撮れると言う性質がある。
従って、現代写真において美術と言うことを意識するなら、撮る側も見る側も
オリジナル性を担保する何らかの方法論なり、戦略なりを持たなければ
他の美術と競い合って確かな地位を確立していくことは出来ないように思う。
もちろん既製品を大胆に取り上げたPOPアートのような行き方を取って、
マクドナルドや、セブンイレブンの看板を撮ると言った戦略を取りオリジナル
性を徹底的に排除しそれが写真の美術性だと主張することも可能かとは思う。
そのような現代美術的なテキストを必要とする美術性を主張するにせよ、
別の手法を取るにせよ、写真が美術足る為には、初期の写真の新技術として
それだけで存在の意味があった時代とは違い、何等かの戦略が必要と思う。
実際、現代写真の中で美術として認められている作家においては、オリジナ
ル性に関して何等かの工夫が見られるように思う。
その第一がシンディ・シャーマンや森村泰昌にみられる、自分を被写体にして
しかも特別な演出をすることによって被写体をオリジナル化する事によって
作品のオリジナル性を担保するやり方である。「手探りのキッス」では鈴木涼子  
  
の作品がこの部類に入ると言える。それ自体作品と言えるような物を作って
写真に撮る作家や既製品であっても複雑に組み合わせて独特の世界を
作って写真に撮る作家などもこの分類に入るだろう。
次に、撮影時に写真独特の技法を使ってオリジナル性を出す手法がある。
多重露光や極端なアウトフォーカスを使ったり意図的なブレを使った作品が
これに当たる。「手探りのキッス」で言えば鯉江真紀子、市川美幸の作品である。
多重露光やアウトフォーカスによって同じ場所でも同じ写真は極めて撮り
難くなる。似た手法として、特殊な機材や装置を使って他の人には撮れない
ような写真を撮る方法もある。動物写真や昆虫写真の作家にいるが、
「手探りのキッス」では米田知子のメガネを使った写真や楢橋朝子がそれに
近い技法と言えるか。
展示段階で特殊な装置や見せ方によってオリジナル性を出す方法もある。
この方法はやりすぎると写真の展示というよりパフォーマンスになる場合
もある「手探りのキッス」で言えば鷹野隆大や渡辺剛がこれに当たるだろう。
しかし鷹野においては本来の展示法ではなかったことを考えると、そのことを
評価していたとは思えない。
この他にプリント段階やプリントを加工することによってオリジナル性を出す
方法がある、プラチナプリントやアートエマルジョン等によって、紙や乳剤の
塗り方をオリジナルなものにする方法や、手彩色や特殊なカラー技法により
着色するなどの方法がある。
「手探りのキッス」にはいなかったが、森本洋充や大坂寛、服部冬樹、
村田兼一などがあげられる。さらにこった技法としては、ネガそのものを
加工してオブジェを作る中川政昭や、細い針金を張ったボックスやエンゼル
ヘアーに乳剤を塗って画像を得る福田匡伸、部分を撮った写真を使って
立体像を作る彫刻家の岡本敦生等いるが若手でそう言った作家がいない
のが寂しい。
「手探りのキッス」においてどのような観点において各作家を評価したか
良く分からないがオリジナル性において最も戦略の感じられない作家と思える
小林伸一郎が評価されたことを考えると、写真を他の美術と比較していかに
して美術として確立していくのかという観点から見れば非常に疑問を感じる。
もちろんオリジナル性だけで作品の良し悪しは決まるわけではない、小林の
作品にしても、作品に廃墟が華やかだった時代の衣装でも着て本人が登場
すれば、作品のオリジナル性はかなり高まると思うが、場合によっては作品
としては陳腐なものとなり質が落ちる可能性もある。
しかしながら、美術の中で写真の地位を確かなものにするためにはオリジナ
ル性に関して何等かの戦略をもって、作品を作り、評価していかなければ
他の美術と比べて一段低い地位に写真は甘んじざるを得ないのではないかと思う

中川、福田、岡本などの作品は以下のホームページを参照下さい

http://ramgallery.hoops.ne.jp/photot.htm

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創刊日:2000-09-07  
最終発行日:  
発行周期:週刊  
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