文学

【殺気ある文学】……見沢知廉を読む

稀代の純文学作家見沢知廉を顕彰し追悼するファンクラブのメールマガジン。見沢知廉の未発表作品に関する最新情報や、見沢文学への書評などを掲載する。

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【殺気ある文学】……見沢知廉を読む vol.4

2006/03/05

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  【殺気ある文学】……見沢知廉を読む vol.4

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[H18.2.25]号 ※3.5配信

「<文学>は、遊戯やツールではなく、まさに<殺気>である。」

「創作のクライマックスに昇りつめる時の作家は、小手先の<技巧>
を超越した一匹の野獣に変身する。自分だけの内面に秘めたトラウマ、
強烈な愛憎の混交、日常性では許されない残酷、暴力、自他の破壊衝
動――を、<真っ白になるまで燃え尽きたい>という一点の夢に集光
して、まばゆい生命の燃焼を演じるのだ。」

 見沢知廉著『日本を撃て』(メディアワークス刊)より

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 <目次>
 ■はじめに
 ■メルマガ新人賞に寄せて(深笛義也)
 ■リタリン(結城司)
 ■『天皇ごっこ』を読んで(中村幸雄)
 ■異色作家 故・見沢知廉との事ども [連載1](思川清風)
 ■おわりに

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【はじめに】

 新しくメールマガジンに登録してくださいました皆様、真にありが
とうございます。
 このメールマガジンは、見沢知廉ファンクラブ「白血球團」が発行
しています。ファンの視点から、見沢文学を掘り下げて読んでいこう
という主旨です。
 内容は全て会員からの投稿によるものです。見沢作品を初めて読ん
だ、という方でも歓迎します。どうぞ感想文をお送りください。

 先月までこのメールマガジンは「ランスタ」という配信サービスを
利用していましたが、今号から「メルマ!」に統合されました。前号
において私達のメールマガジンが新人賞を受賞したことを報告しまし
たが、最後の新人賞になってしまったというわけです。この栄誉は永
遠に不滅です(?)

 作家であり見沢知廉の友人である深笛義也先生にお祝いの言葉をい
ただきました。というか無理やりお願いしました。ご免なさい。深笛
先生には「白血球」開設当初からお世話になっております。先生、あ
りがとうございます!
(朱斑羽)


【メルマガ新人賞に寄せて】

by 深笛義也(ふかふえ・よしなり)

 見沢知廉は、絶望などしていなかった。死ぬ気などさらさらなかっ
たのだ。ひとつひとつは小さなことでも、それが積み重なって、彼の
精神の中で事故が起きてしまったのだ。今でも無念だという気持は去
らない。日が経つに従って、かけがいのない友を喪ってしまったとい
う気持は大きくなる。若い人々が見沢のことを想ってくれるのが、せ
めてもの救いだ。見沢知廉のファンサイトである『白血球』が、「ラ
ンスタ新人賞1位」に輝いたことは、その意味で、とても嬉しい事だ。
(深笛義也) 

 ※深笛義也氏原作の漫画『過激派だった』が「漫画実話ナックルズ
」(ミリオン出版)4月号に掲載されました。80年代安保闘争の裏
側を知る上で非常に興味深く、衝撃的な内容です。(朱斑羽)
 
 「好きなだけ眠る」http://blogs.dion.ne.jp/giya/


【リタリン】

by 結城司(ゆうき・つかさ)  

 見沢さんがリタリンという薬を飲んでいたのは既知の事かと思われ
ます。実は私もリタリンを飲んでいます、そして今もリタリンを飲ん
でこれを書いていたりします。。リタリンを飲まないと文章が書けな
いんですよね、やる気が出なくて。今日は少し私の初リタリンなどに
ついて書きたいと思います。 

 私が初めてリタリンを手にしたのは医者から処方されたのではなく
て友達からでした。30錠くらい貰いました。でも怖くて飲めませんで
した。リタリンは依存性が高いと周りから散々聞いていたから… 

 ある日「見沢知廉さんを偲ぶ会」で知り合った男の人と会う事にな
りました。彼と喫茶店に入って最初は見沢さんの話などをしていまし
た。そして何故かリタリンの話になりました。 

 「私持ってますよ」 

 喫茶店を出て彼のマンションへと向かいました。もう夕方でした。
途中缶チューハイを買いました。彼の部屋は借りて間もなくすっきり
していて多摩川が見える落ち着いた部屋でした。2人で乾杯をしまし
た。そして彼は私にリタリンを求め、私は渡しました。彼はリタリン
を砕き始めました。私は薬について何も知らずそのまま粉状にして飲
むのかと思いました。そしたら鼻で吸うと言われ驚きました。彼はさ
らにリタリンを3等分にし、千円札を丸めストロー代わりにし鼻で吸
いました。司ちゃんもやってごらんと言われ、断れる雰囲気でもなく
やる事にしました。「ゴホッ」私は失敗してリタリンを吸えませんで
した。「鼻水をすする時みたいにやればいいんだよ」とアドバイスを
受け再度挑戦するとうまく吸えました。鼻の中がヒリヒリして痛かっ
たです。でも次第に体がリタリンを吸収していくのがわかりました。
「へぇ、これがリタリンなんだ」まさか初リタリンが鼻だとは思って
もいませんでした。お酒も入っていたし次第にハイになっていくのが
わかりました。私は彼と楽しく語り合いました。なんだか久々に笑っ
た気がしました。本当の意味で。別れ際に彼に残りの2錠をあげまし
た。

 最近執筆活動をしたいのだがやる気が出なくて文章が書けないとい
う理由で初めて医者からリタリンを出して貰いました。でも本当はま
だ25錠近く持っていたんですよね。最近OD(薬の過剰摂取)はしま
せんがストックがないと不安なんです。この前友達がまたリタリンを
くれました。今私はどれくらいリタリンを持っているか分かりません、
あまり飲みませんが…。また、リタリンを飲むと「憧れの見沢さんと
同じ薬を飲んでいる」という幸せな気持ちにもなるんですよね。友達
がリタリンをくれた時久々に鼻で吸いました。実は名前は言えません
がその中にはある違う薬も混ぜられていたみたいでかなりハイになり
ました。見沢さんに詳しい且つ見沢さんの病気についても詳しい方は
知っているでしょう、躁状態になると私はかなり多弁になるんです。
私は普段からよく喋るのでこれには困ったものです、そしてラリッた
みたいに呂律も回らなくなります…
皆さんも薬にはお気をつけて…
(結城司)


【『天皇ごっこ』を読んで】

by 中村幸雄(なかむら・ゆきお)

 「天皇」が出現するとき

 本文を読む前に、あらすじや人の意見などで、私はたいてい次のよ
うな単語を耳にしていた。それは天皇、左翼、右翼、刑務所、精神病
院、そして北朝鮮である。果たしてこれらがどうやって一つの小説の
中でまとまっているのかが全然予想がつかなかった。でも、読み終え
て納得した。なるほど、氏の緩急のついたテンポから生み出される文
体は、いつものように情景が時期早々にリンクすることも多い。

 だが全体の底流は論理なく漠然としてでも一つの空気をめぐって流
れている。それが小説のおもしろいところでもあるのだが。今回はそ
れが末部に登場する、「天皇ごっこという名の血のゲーム」云々で柔
らかく示されてもいる、と私は思った。それで、次のように理解した。
この本、バラバラな世界が列挙してあるようで、天皇ごっこと宣告で
きるまとまり感があると。それは天皇制という社会システムで結んで
いるのでも、右翼たちが陶酔する、すめらみことの神国日本の象徴で
結びつけられているわけでもない。統一されているように見せている
のは、天皇への感情の中身、具体的にいえば、共同体に住む日本人が
家長を賛美せざるを得ないときに現れてしまう意識であった。これが、
異なる場面を経ても類似して、連綿と作用しているのだった。(極左
の天皇殺しも戦争責任問題と人間存在の天皇と共同体の父性を帯びる
天皇が密接に絡まり合ったコンプレックスとして見るなら問題は同じ
なのだ。)問題、それは国家の単なる象徴や人間存在とは別次元の場
所で「天皇」が現れるということである。

 実はこれは大変な問題で、燃え上がったどこかの変な個人の情念で
すむ問題ではない。そういう過激派もいるかもしれない。しかし命を
賭した右翼や歴史上の人物は、この感情が個人の自己満足や利害や保
身を超えた重要な何物かであることに気付き始めている可能性が強い。 

 社会学者の宮台真司さんは天皇ごっこ解説でも、次に引用する神保
哲生氏との対談本『漂流するメディア政治』(春秋社)でも類似する
事を述べている。たぶん彼の実存を賭けた(?)持論ではないかと私
は思う。

 《日本の場合は、どのレベルまで行ってもムラ。どんなに正しいこ
とを言う人間がいても、内容的な正しさでは影響力を持てない。内容
が正しいことを言って脚光を浴びると、「偉そうにしやがって」とあ
っというまに足の引っ張り合いになるだけ。
 明治維新政府が天皇制を導入した意味が、そこではっきりするんで
す。日本では理念によってリーダーシップをとることができない。田
吾作の足の引っ張り合いです。しかし、政治である以上、リーダーシ
ップの実効性を可能にするシステムをつくらなければならない。
 だから天皇という田吾作とは別格の存在を担ぎだし、本当は田吾作
から田吾作への命令なんですが、「これは天皇の命令である」として
命令を下す。虚構の枠組みではあるけど、そのことで、はじめて全域
的・全体的に実効性を持つような命令が可能になった。》
 
 さて日本人はこういう存在なんです。あなたは正しさを主張したい
ときどうしますか。と氏は問いかけているようだ。その方法は大きく
二つに分かれていくのかもしれない。「右」の天皇に代表される、我
ら共同体の最上位を根っこにするのか。それとも「左」のように、自
由・平等という近代リベラルの原理を日本型に当てはめていくのか。
こうなるとかつてサルトルを読んで、常に現実を疑い、状況のなかを
生きた人たちを、21世紀に引きずりこんで考えなければならない。
「本当に正しいことなんて何もないのでは」と思った彼らは、実存的
な「正しさ」に賭けた。左の学生運動が残したものもいったいなんだ
ったのか総括が必要だろう。あと日本で近代フランスの公共・福祉と
やらがここ100年で実際に人の心、日本人の心のねっこにまでもた
らした恩恵があるなら、それも捕らえ返していかなければならない。

 天皇ごっこにはかかる重要問題まで内在されているのである。もう
天皇絶対賛美なんて場面は、覚醒効果があるように見え、俺たちには
関係ないと思う人が多いかもしれない。だが、それは極度のカフェイ
ンのようなものに過ぎず、私たちは「微量」に天皇の賛美に日々取り
囲まれているのことに気付く。自分は天皇主義者かもしれないと読了
後思ってしまった宮台氏のように…

 北朝鮮における近藤の二礼二拍について

 話は全く変わりますが、こと描写のみでは、見沢さんの著書のなか
で、このシーンが最も個人的に気に入っています。まるでビデオカメ
ラのように書かれています。状況が伝わってくるようでした。
 
 《一行を代表して、近藤とツアー客一人が烈士陵中央の巨大な石の
赤旗の下に、献花をすることになった。二人が花を持って並ぶ。近藤
が、花を置いて礼をしたので、隣の客も合わせて礼をする。客が手を
合わせようとすると、近藤がもう一度頭を深々と下げた。隣の客やガ
イドが首をひねる中、近藤はパン、パンと二回手を叩き、深々と一礼
した。日本の神式だ。右翼とはいえ、抗日の烈士陵で神式とは。ガイ
ドやチマチョゴリ、一同顔をしかめた。》

 このときの「えっ?」という気持ち、不思議さが簡潔に語られてい
る。客が手を合わせようとする→もう一度頭を下げる(礼と言ってし
まっては事件の偶然性が薄まる)→首をひねる中(まだ何が起きてる
かわからない)→パンパンと〜(ああそういうことなのかとわかる)。
読者も参加して追体験しているようだ。おもしろい。でも冷静に想像
しないとこう書くのは難しいだろう。後からこの流れを思い浮かべる
と神式という言葉、結果ばかりイメージしてしまうから。そこに至る
までの様子をこうも短くわかりやすく連ねるのは非常に難しいと思う。
(中村幸雄)


【異色作家 故・見沢知廉との事ども】連載(1)

by 思川清風(おもいがわ・せいふう)

 私が、生前、見沢と会ったのはたった一度きりである。…と思って
いる。もしかすると、高田馬場で毎月定期的に開催されていた一水会
の勉強会かどこかで会ったことがあるのかもわからないが、自分の記
憶に残っているかぎり、彼が、12年の獄中生活を終え、千葉刑務所
から生還した、平成6年(1994年)12月8日の朝である。

 出迎えに駆けつけた同志が誰だったかも、はっきりしない。30人
か50人居たのかさえも、覚えていないし、誰に誘われて出迎えに行
ったのかさえ定かでない。当時一水会代表の鈴木邦男氏や、書記長で
現代表の木村三浩氏、統一戦線義勇軍議長の針谷大輔氏などが居たは
ずなのに、それさえも覚えていない。ただ、記憶に鮮明なのは、長い
間彼の帰りを待ち続けたお母さんと、痩せて青白い何処か病気がちに
見えるが、眼光だけが鷹のようにするどい彼の姿である。 

 異色作家、見沢知廉(活動家名・清水浩司、本名・高橋哲央)。彼
が世間で、新右翼団体といわれている一水会の別働軍事組織と目され
る、統一戦線義勇軍に関わったのは、略歴を見ると、昭和57年(1
982年)23歳とある。

 読者諸賢には、あまり興味が無いと思うが、最近めっきり物忘れが
多くなった私の記憶を容易に戻すために、自分の辿った道を振り返り
ながら、彼の政治活動及び、作家活動を振り返ってみようと思う。彼
の経歴は、「見沢知廉ファンサイト・白血球」に記された「略歴」を
参照する事にする。 

 私が、直接政治活動を始めたのが昭和50年(1975年)である。
時代は、戦後の貧しさから豊かさへ向かってまっしぐらに突き進み、
国内でのいろいろな争闘を経て、世界に類例の無いほどの経済成長を
遂げ、国民生活も中流意識が高揚し始めていた。

 国内政治は、60年(昭和35年)安保から70年安保(昭和45
年)。作家、三島由紀夫氏による「楯乃会」結成。市谷での決起・自
決事件(所謂、三島事件又は楯乃会事件と呼ばれる)。新左翼各派の
台頭、全共闘全盛期、羽田闘争や日航機ハイジャックよど号事件、連
続企業爆破事件、日本赤軍の台頭。あさま山荘事件などが連続して起
こり、そして、一段落した感のある頃であった。一般的に右翼団体各
派は「反共」を盛んに啓蒙していた。

 その年に、新右翼の教祖と世間から注目され出した故・野村秋介先
生(当時・大悲会会長)や、一水会代表の鈴木邦男氏、阿部勉氏など
を知る。

 新右翼の何たるかを知れば知るほど、一般に任侠系右翼と呼ばれて
いた自分の所属する政治団体とは、基本的な考え方がかなり違ってい
る事を感じていた。所謂「反共右翼からの脱却」が盛んに叫ばれ出し
たのが、この頃である。

 まだ、政治活動に入ったばかりで頭が固まっていない自分には「反
共」も大切な政策だが、「反共」一辺倒から右翼本来の「反権力」に
還ることは、もっと大事な根本思想であると思えた。そして、そうい
う傾向の勉強会や集会などには頻繁に出席するようになった。また、
書物を読み漁った。

 しかし、この当時、自分の所属する組織からは、大東塾と新右翼の
団体には接触するなと、やんわりではあったが釘を刺されていたので
ある。この年、見沢は、16歳。早稲田高校へ入学している。
※次号に続く
(思川清風)


【おわりに】

 このメールマガジンは毎月25日頃の配信です。たまに遅れること
もありますがご容赦ください。今号は三つの理由で配信が遅れました。
冒頭に述べたように配信サービスが統合(移行)されたこと、私の自
宅のネット接続用パソコンが故障したこと、そして私が自動車免許取
得のため合宿へ行ったことです。以上、聞き苦しい言い訳でした。今
後はこのようなことの内容に最善を尽くします。

 今号から新連載がスタートしました。思川清風氏による回想録です。
思川氏は長い政治活動歴をお持ちであり、知られざる右翼界(?)の
内部からの見沢知廉像を徐々に明らかにして下さることでしょう。乞
うご期待!

 見沢知廉の女弟子である作家・雨宮処凛さんが新刊を出版されまし
た。『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)です。

 「雨宮処凛が生きづらさを抱える若者たちに直接取材&500人に
アンケートを取り、一発逆転の秘策&意外な抜け道を怒涛のアドバイ
ス!」(公式サイト http://www.sanctuarybooks.jp/sugoi/

 とても真摯でチカラのある一冊になっています。私自身、無意識に
実践してきたことが書かれていたので尚更納得しました。悩めるあな
たに、こころからお薦めします。
(朱斑羽)

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  • 南郷美輝2006/03/06

    執筆者の文章内容が、かなり異なっており、面白く読めた。

    しかし、その根底には、三者に共通する「見沢知廉」という素晴らしいキーワードが生きている。