文学

春・第二集

春を題材にした短編小説集です。第一集は、
「私」と言う架空の人物を主人公にするのに対し、この第二集は、主人公を三人称の形で語る
作品をお送りする場とします。

全て表示する >

春・第二集・第一話(1)

2003/08/03






                                  春・第二集・第一話




                                         1




       山井徹(とおる)が、医者に成って、もう二十年近くが経ってゐた。彼は、
     内科医で、呼吸器疾患を専門としてゐる。アメリカに留学中、彼が、エイズ
     の肺病理に関して行なった研究は、今も、高く評価されてゐる。そして、臨
     床の能力も人柄も、素晴らしいと言ふのが、彼に対する医師たちの間での評
     判であった。
       彼は、アメリカに四年滞在した後、母校の医学部に戻り、肺の病理学に関
     する仕事を数年続けた。それから、彼は、実家の在る静岡の公立病院に移り、
     その病院の内科の医長として、多くの患者の為に、働いてゐるのだった。
       彼は、その病院に移ってからも、診療と研究を熱心に続けた。そして、彼
     は、妻と二人の子供に恵まれ、幸福な家庭生活を送ってゐた。医者として、
     彼の人生は、順風満帆と言って良い物だった。だが、彼は、最近、自分の人
     生に、或る空しさを感じてゐた。彼は、最初、自分の中に生まれたその空し
     さの理由が、分からなかった。だが、春が来て、辺りに緑が甦った頃、彼は、
     自分の心の中のその空しさの理由が何であるかに気が付いたのであった。

                                                              (続く)




     平成十五年八月三日(日)










 
                                            西岡昌紀(にしおかまさのり)

                  http://macky.nifty.com/cgi-bin/bndisp.cgi?M-ID=kaminooka


規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2003-04-30  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。