文学

短編あらかると・第三集

主人公を「私」とする短編小説集です。ただし、小説の中の「私」は、架空の存在であり、
作者を含めた、実在の人物とは無関係です。

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短編あらかると・第三集・第二話(7)

2007/02/08


(続きです)




                   エリーゼの為に




                      7




    その時、私は、不意に、自分が、その同じ問いを母にして居た事を思い出した。
   母が私にこのオルゴールを見せたあの日、私は、娘と同じ事を、母に尋ねて居たの
   である。娘が尋ねるまで、私は、その事を忘れて居た。そして、その全く忘れて居
   た事を、私は、娘に問われて、今、思い出したのだった。母は、その時、こう答え
   たのである。
   「お母さんの国の人よ。」
    母のその言葉を、私は、自分の娘に問われて、今、何十年ぶりに思い出したので
   あった。
    この小さなオルゴールは、私の母が、ドイツから、遠い日本に持って来た物であ
   った。母は、このオルゴールと共に、この国に来たのである。そして、それを開け
   た時、母は、遠い自分の国の事を思い出したに違い無いのである。

    私は、娘に、「遠い国の人だよ。」と、言って答えた。すると、娘は、黙ってう 
   なずいた。  
    「もう一度聴かせて。」と、娘は言った。私は、微笑み、娘に言われた通り、も
   う一度、そのオルゴールのねじを回した。すると、オルゴールは再びあの調べを奏
   で始め、小さなバレリーナは、再び、私の娘の前で回り始めたのだった。

    「エリーゼ」と、私は、心の中で、その名をつぶやいた。彼女は、この世で最初
   に、この調べを聴いた人だったのだろうか?・・・
    それは、永遠の秘密なのである。そして、その秘密を秘めながら、この古いオル
   ゴールは、今日も、その調べを奏でるのである。

                                    (終り)







   平成十四年の聖夜に











                          西岡昌紀(にしおかまさのり)

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                              メリー・クリスマス











                    (間も無く、次の作品をお送りします。)
    

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創刊日:2002-11-13  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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