文学

短編あらかると・第三集

主人公を「私」とする短編小説集です。ただし、小説の中の「私」は、架空の存在であり、
作者を含めた、実在の人物とは無関係です。

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短編あらかると・第三集・第二話(2)

2007/02/08


(続きです)



                   エリーゼの為に




                      2


   

     「開けるよ。」と、私は言った。娘は、小さくうなずいた。私は、娘の前で、
    オルゴールのねじを巻き、その蓋を開けた。すると、その古い木の箱の中から、
    あの物悲しい旋律が、永い眠りから目覚めた様に、静かに、ゆっくりと、流れ
    始めたのだった。そして、その物悲しい旋律とともに、蓋を開けられたそのオ
    ルゴールの舞台の上で、世界一小さなバレリーナが、私と娘の前で、ゆっくり
    と回り始めたのだった。
     娘は、何も言わなかった。そして、無言のまま、私の隣りで、その小さなオ
    ルゴールの人形を見つめて居た。その娘の前で、その娘の小指ほどの小さなバ
    レリーナは、その古い箱から流れる悲しい旋律に合わせて、ゆっくりと回り続
    けるのだった。
     このオルゴールは、今、永い時を経て、私と私の娘の前で、眠りから目覚め
    たのだった。そして、この小さなバレリーナは、今日、初めて、私の娘の前に
    姿を見せたのであった。
     娘は、魔法を見る様な眼で、その人形を見つめて居た。

                                   (続く)







     平成十四年十二月二十日(金)
    (2002年)











 

                         西岡昌紀(にしおかまさのり)

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創刊日:2002-11-13  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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