文学

ハイリゲンシュタットの怪人

一人の日本人ジャーナリストが、21世紀のウィーンで、ベートーヴェンの亡霊に出会い、9・11後の世界について語り合うと言う物語です。

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ハイリゲンシュタットの怪人(18)

2006/11/05

(続きです)




         ハイリゲンシュタットの怪人




             第一の変奏曲




               18




     すると、風が、再び吹いた。その風は、静か
    に、音も無く、僕の後ろからやって来て、僕の
    行く手へと、向って行った。その風の中で、僕
    は、僕の後ろに、誰かが居る様な、不思議な気
    持ちを覚えた。僕は、その不思議な気持ちに、
    その場で足を止めた。そして、後ろを振り返っ
    た。だが、そこには、矢張り、誰も居なかった。
    僕の後ろには、僕が歩いて来た道が有るだけだ
    った。僕は、その場に立ち止まって、その誰も
    居ない道を見つめた。その道は、先程と同じ様
    に、静まり返って居た。僕は、今、自分が風の
    中で感じた物は、錯覚なのだと悟った。そして、
    その錯覚から解放されると、僕は、先へ向かお
    うとして、ゆっくり、前を向いた。
     その時だった。僕は、誰かが、僕の行く手か
    ら現はれ、僕と、すれ違ふのを、自分の全身で、
    感じたのだった。

                     (続く)



    核時代61年11月5日(日)






            西岡昌紀(にしおかまさのり)

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創刊日:2004-09-11  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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