文学

ハイリゲンシュタットの怪人

一人の日本人ジャーナリストが、21世紀のウィーンで、ベートーヴェンの亡霊に出会い、9・11後の世界について語り合うと言う物語です。

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ハイリゲンシュタットの怪人(1)

2006/05/07


(続きです)




               ハイリゲンシュタットの怪人




                   第一の変奏曲




                     1




     その小さな教会を出ると、僕は、教会の前の小さな広場で、木を見上げ
    た。そこには、緑のベンチが有った。だが、僕は、そこに座らず、立った
    まま、その美しい木を見上げ続けた。
     辺りは静まり返ってゐた。広場に人影は無く、周囲の何処からも、何も
    物音は聞かれなかった。木の上に広がるウィーンの空は、薄曇りだったが、
    その雲の合間に見える水色の空は、昔のこの郊外を描いた風景画の空を思
    ひ起こさせる物だった。
     その空の下で、まるで、時間が止まった様に、その木も、教会も、静ま
    り返ってゐた。僕は、その静けさの中で、今入った教会の静寂の余韻を味
    わい続ける事も出来た。だが、僕は、そこからすぐ近くに、もう一ケ所、
    訪れるべき場所が有る事を忘れてはゐなかった。その小さな家に行かなけ
    れば、と、僕は思った。

                                 (続く)





    西暦2004年(平成16年)9月11日(土)

    9・11から3年目の日に










    


                       西岡昌紀(にしおかまさのり)

                    http://macky.nifty.com/cgi-bin/bndisp.cgi?M-ID=kafka

   

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創刊日:2004-09-11  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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