文学

広島のメリー・クリスマス

広島を舞台にした小説です。原爆投下は正しかったと言うイギリス人が、クリスマス・イヴの日、広島で、奇妙な老人に出会ひ、百物語と呼ばれる降霊術に招かれると言ふ物語です。

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広島のメリー・クリスマス(4)

2006/05/07


(続きです)




                              広島のメリー・クリスマス




                                         4




         その時、鐘が鳴った。二人の背後で、誰かが、又、あの鐘を突いたのだっ
       た。「又か!」とイギリス人は思った。そして、川の向こう岸の原爆ドーム
       をいまいましげに見つめた。全く、何と言う町だろう。すると、黙って居た
       老人が、口を開いた。
      「ところで。」と老人は、言った。それは、きれいな英語であった。
      「今日が、クリスマス・イブである事を御記憶ですかな?」
         イギリス人は、目を丸くした。
      「おや、英語が上手ですね!もちろん、知っていますよ。私は、西洋人です
       からね。」
       老人は、両手を杖の柄に置いたまま、頷いて言った。
      「では、今夜は、何処でクリスマス・イブを過ごす御予定ですかな?」それ
       は、本当に、完璧な英語であった。この老人、どうして、今まで英語を話さ
       なかったのだろう?
      「いやあ。まだ決めていません。それにしても、本当に英語が上手ですねえ。
       何処でそんな上手な英語を身につけたのですか?」
         老人は、イギリス人の顔を見つめて微笑み、答えた。
      「私は、船乗りでしたからな。それにしても、今夜の御予定は、まだ決まっ
       て居ないのですか?」
      「ええ。まだ。」
       老人は、原爆ドームを見つめた。そして、もう一度イギリス人の顔を見つめ
       ると、丁重な語調で問い掛けた。
      「では、よろしかったら、私が招かれているパーティーにあなたもおいでに
       なりませんか?」
      「パーティー?」
      「ええ。」
       イギリス人は、思いがけない誘いに驚いた。そして、自分にそう提案したそ
       の日本人の顔を見つめた。老人は、無言で、彼の顔を見つめて居た。

                                                               (続く)





       核時代57年(2002年)8月18日(日)










                                            西岡昌紀(にしおかまさのり)
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創刊日:2002-07-17  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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