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週刊・映画コラム瓦版

映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。

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映画コラム瓦版 第032号

2011/05/09

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          週刊・映画コラム瓦版 vol. 32
                             2011/05/09
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映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイ
ト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。
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【目次】
・Happy Birthday
・今週のコラム:映辞林
・編集後記 その他
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☆Happy Birthday

J・M・バリー
1860年5月9日生まれ、イギリス、スコットランド出身

 エディンバラ大学を卒業後、新聞社に勤めながら雑誌に寄稿していたが、や
がてロンドンに出て文筆に専念するようになる。1894年に女優のメアリ・ア
ンセルと結婚。1900年頃にケンジントン公園で知り合ったデイヴィス夫妻の
子供たちと親しくなり、1904年に彼らをモデルにした戯曲「ピーター・パ
ン」を発表して大評判となる。1909年にデイヴィス夫妻が亡くなり子供たち
を養子に迎え、1911年には戯曲をもとにした小説「ピーター・パンとウェン
ディ」を発表してベストセラーに。晩年はセント・アンドリュース大学やエデ
ィンバラ大学の学長を歴任したが、私生活では妻との離婚や、養子に迎えた息
子の事故死などの不幸にも見舞われた。1937年6月19日にロンドンで死去。

 バリーと言えば「ピーター・パン」の生みの親。1953年のディズニーアニ
メが有名だが、それ以前にも1924年にサイレント映画が作られている。この
映画の断片はYoutubeでも見られるが、ダーリング家の愛犬ナナを着ぐるみ
の人間が演じるなど、舞台上演をそのまま映像に置き換えたような演出。この
映画はバリー本人が観ることのできた、最初で最後の映画版「ピーター・パ
ン」だったが、当時のバリーは「ピーター・パン」だけの作家ではない。彼の
作品は生前だけでも30本以上が映画化されていて、「ピーター・パン」はそ
のうちの1本に過ぎなかったのだ。バリーの死後、その作品が映画化されるこ
とはほとんどなくなったが、これを一変させたのがディズニー版アニメの登場
だった。(これに前後してブロードウェイ・ミュージカルもヒットしている。)
これ以降の「ピーター・パン」の映像化は、多かれ少なかれ何らかの形で必ず
ディズニー版の影響を受けることになる。なおバリーが「ピーター・パン」を
執筆するきっかけになったデイヴィス夫妻や子供たちとの交流については、ジ
ョニー・デップ主演で『ネバー・ランド』という映画が作られている。バリー
の子供好きは有名で、1929年には「ピーター・パン」の著作権をロンドンの
グレート・オーモンド・ストリート小児病院に寄付。今でもイギリスで「ピータ
ー・パン」が上演されるたびに、病院には著作権使用料が支払われている。

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◎映画コラム:映辞林(私家版・映画用語事典)

【インディペンデント映画、インディーズ映画】 Independent cinema

 インディペンデントとは「独立」という意味。インディペンデント映画は大
手の映画スタジオ(メジャー・スタジオ)から独立して映画を企画・製作して
いる点で、インディペンデント(インディーズ)と呼ばれている。ただし一口
にインディーズと言っても、製作資金を独自に調達して自前で配給まで行う完
全な自主製作・自主配給作品もあれば、企画製作に一定の独立性を持ちながら
も、製作資金を大手スタジオから供給され、完成した作品の配給を大手スタジ
オに委託する形のインディーズもある。現在のハリウッドでは後者が多い。

 インディーズをそれ自体として一言で定義することは難しいが、あえて言う
なら「メジャー・スタジオの製作ではない」ということになると思う。ハリウ
ッドのメジャー・スタジオは現在6社(ディズニー、ユニバーサル、ソニー、
パラマウント、20世紀フォックス、ワーナー)だが、これらの会社は映画の
企画・製作・配給・資金調達などを、すべて自前で管理する力を持っている。
各機能を外部に委託することはあっても、全体を統括しているのはメジャー・
スタジオの側なのだ。これに対してインディペンデントの映画会社や映画製作
者は、映画の企画や製作といった作品作りの中核部分を自分たちの手に握りな
がら、それ以外の部分は必要に応じてメジャー・スタジオの手助けを借りるこ
とになる。こうした形態のインディペンデント映画は、プロデューサーが製作
の独自性を確保した上で、かなり大規模な映画を製作することが可能になる。
例えば『風と共に去りぬ』(1939)を製作したセルズニック・インターナシ
ョナル・ピクチャーズは、当時の大メジャーだったMGMから資金提供を受け、
MGMの配給網を利用することでこの超大作を製作することができた。(ただ
しこの作品は製作費がかかりすぎたこともあり、最終的にはすべての権利が
MGMに譲渡されることになった。)

 現在、映画は独立系のプロデューサーが企画して製作準備を進め、それをメ
ジャー・スタジオに持ち込んで資金提供を受けて製作されることが多い。ただ
し「金を出すなら口も出す」というのは世の常で、この段階でメジャー・スタ
ジオ側から参加したエグゼクティブ・プロデューサーが、脚本の内容やキャス
ティングについてあれこれ口を挟んでくる。これを嫌って(あるいはメジャー
・スタジオが企画に難色を示して資金提供を拒むこともある)、プロデューサ
ーが自分の才覚で映画製作資金を調達してくることも多い。アメリカ映画であ
りながら、映画の製作国としてイギリスやフランスをはじめ様々な国の名前が
ずらずらと列記されているような映画があるが、これは製作者がメジャーから
の資金提供を受けず、ヨーロッパ各地で少しずつ製作資金を調達してきたこと
を意味している。インディーズの映画会社の中には、潤沢な資金力にものを言
わせ、誰の手も借りずに自前ですべての製作費をまかなってしまうところもあ
る。『スター・ウォーズ』シリーズを製作しているルーカス・フィルムがこの
代表。このシリーズは20世紀フォックスで配給されているが、これはルーカ
ス・フィルムがフォックスに配給業務だけを委託しているもの。そのため同じ
シリーズの番外編である『クローン・ウォーズ』は、フォックスではなくワー
ナー・ブラザースから配給されている。

 映画製作には莫大な費用がかかるのだが、その中の多くの部分を占めるのが、
映画完成後にかかるP&A(上映用プリントの作成と宣伝)など映画配給がら
みの費用だ。独立系の映画製作者の中には、映画を企画し製作するまでの費用
は持っていても、その後の配給まで手が回らないことも多い。仮に親兄弟や親
戚友人から映画製作費をかき集め、超低予算の1千万円で仮に映画を完成させ
たとしても、映画を配給するのその何倍もの費用がかかるのだ。こうした場合、
完成した映画を世に出すためにはもう一段階の工夫がいる。完成した映画を持
って映画会社に売り込みをかける方法もあるが、サンダンス映画祭に代表され
る、インディーズ映画のための映画祭に出品するのもひとつの方法だ。映画を
ハリウッドの有名人(プロデューサーやスター俳優)に観てもらう方法もある。
こうした場所で「この映画は面白い!」と評判になれば、ハリウッドのメジャ
ー・スタジオが映画の配給に名乗りを上げることもある。最近では『パラノー
マル・アクティビティ』がこうした方法でメジャー配給にこぎ着けている。

 インディーズ映画にとっての黄金時代は1980年代〜90年代。『パルプ・フ
ィクション』『イングリッシュ・ペイシェント』『グッド・ウィル・ハンティ
ング』『恋に落ちたシェイクスピア』などを製作したミラマックス、『ターミ
ネーター』『ロボコップ』『プラトーン』『ダンス・ウィズ・ウルブズ』『羊
たちの沈黙』を製作したオライオン・ピクチャーズ、『エルム街の悪夢』シリ
ーズや『ロード・オブ・ザ・リング』三部作のニュー・ライン・シネマ、『ト
イ・ストーリー』のピクサーなどはすべてインディペンデントの映画会社だ。
しかしこれらの会社はその後次々と大手の映画会社に買収されていく。ミラマ
ックスはディズニーに買収され(その後別会社に売却)、オライオンはMGM
が買収(そのMGMはソニーに買収された)、ニュー・ライン・シネマはワー
ナーが買収し、ピクサーはディズニーに買収されている。

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◎編集後記

 ゴールデンウィーク明けで、まだ少しぼんやりしてます。そういや「ゴール
デンウィーク」という言葉も、映画興行の世界から出て来た言葉です。1951
年頃に大映が宣伝に使い始め、数年で定着した言葉だそうです。

 映画用語事典の「映辞林」は「ア」の次に何を取り上げるか迷いました。ア
カサタナ、と横に移動していくか、素直にアイウエオと進むべきか……。結局
今回は「イ」を取り上げました。次は「ウ」ですね。

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 映画評サイト「映画瓦版」では試写室や劇場で観た映画1本ずつの感想を掲
載していますが、メルマガでは個々の映画から少し離れて、映画にまつわるさ
まざまなコラムを掲載していこうと考えています。4つのテーマを週替わりで
連載し、1つのテーマごとに月1連載になる形式。5週目は休刊日です。

  ・第1週 映画の風景   (時事的な映画雑談)
  ・第2週 映辞林     (映画用語の紹介)
  ・第3週 ぼくの三つ星映画(むかし観た映画の話)
  ・第4週 ザ・タイムマシン(映画史探訪)

 基本的にすべての映画は「いまこの時」のメディアだと考えているので、映
画史やDVDソフトの話題を取り上げる際にも、常に「いまこの時」の視点を
大切にしてゆくつもりです。

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【発行者について】

服部弘一郎(はっとりこういちろう)

1966年8月3日生まれ。東京都出身。血液型はB型。専門学校桑沢デザイン研
究所を卒業後、グラフィックデザイナーやコピーライターを経て、1997年か
ら映画批評家として活動。95年頃に映画評のホームページ「映画瓦版」を開
設。インターネットの世界では、日本語で読める映画評サイトの草分けだった。
著書に「シネマの宗教美学」など。

  映画瓦版 http://www.eiga-kawaraban.com/
  ブログ  http://hattori.cocolog-nifty.com/
  twitter http://twitter.com/eigakawaraban
  メール  eigakawaraban@gmail.com

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