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週刊・映画コラム瓦版

映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。

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映画コラム瓦版 第029号

2011/04/18

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          週刊・映画コラム瓦版 vol. 29
                             2011/04/18
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映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイ
ト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。
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【目次】
・Happy Birthday
・今週のコラム:ぼくの三つ星映画
・編集後記 その他
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☆Happy Birthday

ジェームズ・ウッズ
1947年4月18日生まれ、ユタ州ヴァーナル出身

 マサチューセッツ工科大学中退。1970年代は『追憶』や『ナイトムーブ
ス』などに小さな役で出演し、1979年の『オニオン・フィールド』(未)で
ブレイク。1980年代は『ヴィデオドローム』、『ワンス・アポン・ア・タイ
ム・イン・アメリカ』、『サルバドル/遥かなる日々』などでスター俳優の仲
間入り。『サルバドル』ではオスカー候補になった。1990年代以降は個性的
な脇役というポジションで、強烈な存在感を発揮するようになり、『ゴースト
・オブ・ミシシッピー』(未)で2度目のオスカー候補。2006年からはFOX
テレビの「SHARK 〜カリスマ敏腕検察官」シリーズに主演している。

 僕がジェームズ・ウッズという俳優を意識したのは、おそらく『ワンス・ア
ポン・ア・タイム・イン・アメリカ』だと思う。主人公ロバート・デ・ニーロ
の親友でありながら、彼を裏切ってすべてを奪う男がウッズだった。次は『プ
ラトーン』が大ヒットしたおかげで日本公開された、オリバー・ストーンの
『サルバドル/遙かなる日々』。彼はここで飲んだくれの戦場ジャーナリスト、
リチャード・ボイルを熱演。僕にとってのジェームズ・ウッズの代表作は、こ
の『サルバドル』だ。『ヴィデオドローム』も同じ時期にユーロスペースでの
日本初公開を観ているはずだが、これはリック・ベイカーの特殊メイクとデボ
ラ・ハリーの印象が強烈すぎて、俳優ウッズの影はやや薄い。彼は脇役で登場
しても堅実な芝居をする「いい役者」なのだが、最近はあまり映画に出なくな
ってしまったのが少し残念。

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◎映画コラム:ぼくの三つ星映画

これこそ大人のためのミュージカル映画!

『バンド・ワゴン』(1953) http://amzn.to/hQ07ue
監督:ヴィンセント・ミネリ 出演:フレッド・アステア、シド・チャリシー、
ジャック・ブキャナン、オスカー・レヴァント、ナネット・ファブレイ

【物語】
 トニー・ハンター(F・アステア)は往年の大スターだが、今ではすっかり
「過去の人」。再起をかけて旧知のマートン夫妻(O・レヴァント、N・ファ
ブレイ)と一緒に、ブロードウェイで新作の舞台を作ることに決めた。目指す
は明るく楽しく軽やかなミュージカルコメディ。しかし演出を依頼したブロー
ドウェイの天才演出家ジェフリー・コルドヴァ(J・ブキャナン)が、「これ
ぞ現代のファウストだ!」と言いだしたところから方向性が危うくなってくる。
口八丁手八丁のコルドヴァの尽力でスポンサーも決まり、共演者として人気バ
レリーナのガブリエル・ジェラード(C・チャリシー)を引っ張り出すことに
成功したものの、力みきったコルドヴァ演出は混乱を極めてゆく。ショウの初
日は大失敗。だがまだブロードウェイ公演まで時間がある。トニーはショウを
根本から建て直すことを、仲間たちに提案するのだが……。

【みどころ&解説】
 1930年代から1950年代にかけて、世界中の映画ファンを虜にしたMGMミ
ュージカル。MGMでは膨大な数のミュージカルが作られたのだが、その中で
もファン投票で上位3作品を選べば、『雨に唄えば』や『オズの魔法使』と共
に必ずトップを争うであろう傑作中の傑作が『バンド・ワゴン』だ。僕は
MGMミュージカルの中で『バンド・ワゴン』が一番好き。次が『雨に唄え
ば』で、この順位はおそらく今後も不動のものだと思う。

 映画のストーリーを一言で言うなら、「主人公たちの命運をかけた巨大プロ
ジェクトが大失敗する話」だ。主人公たちは全員が、100%の力を出し切って
精一杯の努力をする。しかしその努力が、成功に結びつかない。台本はいいも
のができた。演出家も超一流。出資者も集められた。キャスティングも満足の
行くものだった。しかし、出来上がったショウは、とんでもない失敗作だった。
多くの人が集まって大きな仕事をしている現場では、時々こうしたことが起き
る。大勢が力を合わせたことで、1+1が2ではなく、3にも5にも10にも
なるのが集団作業の面白さだが、その一方で1+1がいつまでたっても1以下
にしかならないことがある。手を抜いているわけでも、力を出し切っていない
わけでもない。これはもう、集団作業の化学反応の不思議としか言えないもの
だ。大きな組織の中で仕事をしたことがある人なら、同じような失敗の現場に
出くわしたことが1度や2度はあると思う。

 映画の終盤に近づいたところで、いよいよ幕開けとなったショウの失敗がつ
いに明らかになるシーンの、おかしいこと。情けないこと。悲しいこと。切な
いこと……。張り切って乗り込んできた出資者たちが青ざめた顔で引き上げて
しまい、ショウ初日の記念パーティ会場は無人のまま。ショウは明日にも打ち
切られるだろう。参加した若いダンサーや歌手たちが、ホテルの一室で残念会
を開いているシーンがいい。それまで力を合わせてがんばってきたけれど、そ
れも今日まで。明日にはまたみんなバラバラになって、次の仕事を求めてオー
ディション通いをすることになるだろう。だからせめてこの夜だけは、羽目を
はずして楽しく過ごすのだ。飲んで歌って、今までの労をねぎらうのだ。主人
公たち全員がどん底の苦渋を味わうシーンだが、そこに後悔はない。精一杯持
てる力を出し切った清々しさがある。僕は映画『バンド・ワゴン』の中で、こ
のシーンが一番好きだ。

 「このまま終わってしまうなんてもったいない。新たな出資者を募ってショ
ウを続けよう!」と主人公が号令をかけて以降、物語は大車輪で大成功に向か
って行く。ここから始まるミュージカルナンバー連打は、まるでおとぎ話のよ
うな逆転劇で、いかにも取って付けたようなハッピーエンド。もちろん現実の
世界では最後の奇跡の大逆転などない。だからせめて、映画の中では大逆転の
夢を見るのだ。これぞ映画。これぞエンタテインメントなのだ!

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◎編集後記

 今月は忙しくてぜんぜん映画を観に行けない。困ったなぁ……。

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載していますが、メルマガでは個々の映画から少し離れて、映画にまつわるさ
まざまなコラムを掲載していこうと考えています。4つのテーマを週替わりで
連載し、1つのテーマごとに月1連載になる形式。5週目は休刊日です。

  ・第1週 映画の風景   (時事的な映画雑談)
  ・第2週 映辞林     (映画用語の紹介)
  ・第3週 ぼくの三つ星映画(むかし観た映画の話)
  ・第4週 ザ・タイムマシン(映画史探訪)

 基本的にすべての映画は「いまこの時」のメディアだと考えているので、映
画史やDVDソフトの話題を取り上げる際にも、常に「いまこの時」の視点を
大切にしてゆくつもりです。

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【発行者について】

服部弘一郎(はっとりこういちろう)

1966年8月3日生まれ。東京都出身。血液型はB型。専門学校桑沢デザイン研
究所を卒業後、グラフィックデザイナーやコピーライターを経て、1997年か
ら映画批評家として活動。95年頃に映画評のホームページ「映画瓦版」を開
設。インターネットの世界では、日本語で読める映画評サイトの草分けだった。
著書に「シネマの宗教美学」など。

  映画瓦版 http://www.eiga-kawaraban.com/
  ブログ  http://hattori.cocolog-nifty.com/
  twitter http://twitter.com/eigakawaraban
  メール  eigakawaraban@gmail.com

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