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週刊・映画コラム瓦版

映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。

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映画コラム瓦版 第024号

2011/02/21

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          週刊・映画コラム瓦版 vol. 24
                             2011/02/21
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映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイ
ト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。
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◎今日が誕生日

アラン・リックマン(Alan Rickman)

 1946年、英国ロンドンのハマースミス出身。デザイン学校出身で最初はグ
ラフィックデザイナーをしていたが、その後演劇に目覚めて26歳で王立演劇
アカデミーに入学。74年の初舞台以降はイギリスを中心に活躍。舞台を見た
ジョエル・シルバーが『ダイ・ハード』(1988)の悪役ハンス・グルーバー
に抜擢したことから、ハリウッドに鮮烈にデビューした。以降は悪役やクセの
ある役を中心に映画に出まくっている。最近の当たり役は『ハリー・ポッタ
ー』シリーズ(2001〜)のセブルス・スネイプ先生役。悪役専門というわけ
ではなく、ロマンチックな役やユーモラスな役もこなす実力派の万能選手だ。

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◎映画コラム:水神森キネマ倶楽部

日本アカデミー賞雑感

 『悪人』 http://amzn.to/grr4dC
 『告白』 http://amzn.to/gsC6x2

 金曜日に第34回日本アカデミー賞の授賞式があり、『悪人』が俳優部門の
4賞を総なめ、作品・監督・脚本の主要3賞を『告白』が受賞した。それにし
ても日本アカデミー賞が既に34回目とはちょっと驚く。スタート当初から今
日に至るまで、「アメリカのアカデミー賞の物まね」「大手映画会社のお手盛
り映画賞」などと揶揄されてきた日本アカデミー賞だが、34年も続けばそれ
なりの権威も付いてくる。継続は力なり。黒澤明が『影武者』でこの映画賞の
受賞を辞退したのは30年前の第4回日本アカデミー賞だったが、その頃は確
かに、中身がないのに上辺ばかり飾り立てた猿まねの映画賞という感じがした
ものだが、今は日本を代表する映画賞のひとつに成長したと言ってもいいので
はないだろうか。

 日本国内の映画賞でどこより歴史が古いのはキネマ旬報のベストテンで、洋
画部門は1924年(大正13年)、邦画部門は1926年(大正15年/昭和元年)
からの歴史を持っている。日本映画に対する賞としては85年もの歴史を持つ
映画賞だ。これに次いで高い権威を持っているのは毎日映画コンクールで、ス
タートしたのは1946年(昭和21年)から。ブルーリボン賞はそれより少し遅
れて1950年(昭和25年)にスタートしている。このあたりは日本の映画賞の
中でも老舗と言えるだろう。映画が娯楽の王様だった時代の映画賞だ。これに
対して日本アカデミー賞は、映画がテレビに押されてすっかり斜陽化した時代
に、映画業界のテコ入れと盛り上がりを期待して作られた映画賞なのだ。

 日本アカデミー賞がメジャー(東宝・松竹・東映・角川)中心の賞になって
いて、必ずしもその年に公開された優れた映画に光が当てられていないことに
ついては、映画ファンからもいろいろな批判がある。しかし今になって過去の
受賞作品一覧を眺めてみると、この「メジャー中心主義」が結果としては良い
方向に働いているようにも思えるから皮肉だ。それは過去10年か20年分の受
賞作リストを、キネ旬ベストテンと比べてみるとよくわかる。

 とりあえず過去20年分の日本アカデミー賞作品賞とキネマ旬報の日本映画
ベスト・ワンをリストアップしてみた。するとふたつの賞で、受賞が重なって
いる作品が7つもあった。『おくりびと』『フラガール』『たそがれ清兵衛』
『Shall we ダンス?』『午後の遺言状』『シコふんじゃった。』『息子』だ。
そこでこの7作を除外して、両賞で独自に選出されたものだけを一覧にした。

▽日本アカデミー賞の作品賞
『告白』
『沈まぬ太陽』
『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
『ALWAYS 三丁目の夕日』
『半落ち』
『壬生義士伝』
『千と千尋の神隠し』
『雨あがる』
『鉄道員(ぽっぽや)』
『愛を乞うひと』
『もののけ姫』
『忠臣蔵外伝 四谷怪談』
『学校』

▽キネマ旬報の日本映画ベスト・ワン
『悪人』
『ディア・ドクター』
『それでもボクはやってない』
『パッチギ!』
『誰も知らない』
『美しい夏キリシマ』
『GO』
『顔』
『あ、春』
『HANA-BI』
『うなぎ』
『全身小説家』
『月はどっちに出ている』

 こうして見ると、日本アカデミー賞が全国公開されるメジャー系作品に偏っ
ているというのは、確かにその通りだろう。だがその一方で、日本アカデミー
賞受賞作は今でもレンタルDVDでコンスタントに回転していそうだが、キネ
旬ベスト・ワンの作品は棚でほこりをかぶっていそうな気がする。たぶんこの
直感は間違っていないと思う。(そもそも『月はどっちに出ている』や『あ、
春』はDVDすら発売されていないのだが。)

 どのような映画が「よい映画」なのかを定義するのは難しい。しかし映画と
いうのは、人に観られてはじめて価値が存在するものであることは確かだ。ど
れほど優れた映画であっても、関係者が観た後で映画会社の倉庫にお蔵入りに
なったまま日の目を見ないのでは、その映画の存在価値はほとんどない。大ヒ
ットした映画だけに価値があるとも思わないが、1本の映画が50人の人に感
銘を与えるのと、50万人の人に感銘を与えるのとでは、後者の方が圧倒的に
社会的存在感が増すことは間違いない。『ディア・ドクター』は同じ年に日本
アカデミー賞を受賞した『沈まぬ太陽』より優れた映画だったかもしれないが、
2本の映画の社会的な認知度や存在感で言えば、後者の方が圧倒的だろう。結
果的に、日本アカデミー賞はその年々の日本映画界を代表する作品に賞を与え
ることになる。これはこれで、ひとつの見識かもしれない。

 どんな映画賞でも同じことだが、僕はその時々の映画賞で「どんな作品や人
が賞を取るか」にはあまり関心がない。どんな作品が賞を取ろうと、それによ
って自分の中の「この作品がよかった」という評価がぶれるわけでもないし、
それによって「映画館に行かねば」とか「DVDを借りなければ」と焦るわけ
でもない。こうした映画賞というのは何年、あるいは何十年とたった後で、
「この時代にはどんな映画があったのだろうか?」「この時代を代表する映画
は何だろうか?」と調べるときに役に立つのだ。そして日本の映画賞を見渡し
たとき、こうした「時代史」としての資料的価値が高くなりそうなのは、じつ
は日本アカデミー賞なのではないか……という気がしてならない。日本アカデ
ミー賞は今後も10年20年と継続していくことで、その存在意義をますます高
めていくことだろう。

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◎今週公開の映画

『恋とニュースの作り方』 http://bit.ly/hYIU2a
『英国王のスピーチ』 http://bit.ly/dEMeCr
『死にゆく妻との旅路』 http://bit.ly/eLukWo
『アンチクライスト』 http://bit.ly/dSTFKb
『シリアスマン』 http://bit.ly/gSuno9
『世界のどこにでもある、場所』 http://bit.ly/fiwokY

 今週は他に『ナルニア国物語 第3章アスラン王と魔法の』、『悪魔を見
た』などが公開される。

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◎編集後記

 アメリカのアカデミー賞やキネマ旬報ベスト・テンについてはいろいろな本
が出ているのだが、日本アカデミー賞についてはこれといった本が出ていない
様子。来年は第35回という区切りのいい年なので、そろそろ第1回からの歴
史をたどる「通史」をまとめても言い頃なのかも。今ならまだ初回立ち上げに
関わった人たちがほとんど存命のはず。手を付けるなら今だ!

 などと他人事のように言っているのだが、かく言う僕も一応映画批評家であ
りライターではあるのだけれど……。

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載していますが、メルマガでは個々の映画から少し離れて、映画にまつわるさ
まざまなコラムを掲載していこうと考えています。5つのテーマを週替わりで
連載し、1つのテーマごとに月1連載になる形式です。(第5週目のコラムに
ついては年4回の掲載となります。)

  ・第1週 いまどきの映画  (最新映画の紹介)
  ・第2週 映画の履歴書   (映画史にまつわるコラム)
  ・第3週 水神森キネマ倶楽部(映画DVDの紹介)
  ・第4週 本棚の映画館   (映画関連本の紹介)
  ・第5週 東京名画座ガイド (映画館案内)

 基本的にすべての映画は「いまこの時」のメディアだと考えているので、映
画史やDVDソフトの話題を取り上げる際にも、常に「いまこの時」の視点を
大切にしてゆくつもりです。

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【発行者について】

服部弘一郎(はっとりこういちろう)

1966年8月3日生まれ。東京都出身。血液型はB型。専門学校桑沢デザイン研
究所を卒業後、グラフィックデザイナーやコピーライターを経て、1997年か
ら映画批評家として活動。95年頃に映画評のホームページ「映画瓦版」を開
設。インターネットの世界では、日本語で読める映画評サイトの草分けだった。
著書に「シネマの宗教美学」など。

  映画瓦版 http://www.eiga-kawaraban.com/
  ブログ  http://hattori.cocolog-nifty.com/
  twitter http://twitter.com/eigakawaraban
  メール  eigakawaraban@gmail.com

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創刊日:2000-08-28  
最終発行日:  
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