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週刊・映画コラム瓦版

映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。

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映画コラム瓦版 第021号

2011/01/31

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          週刊・映画コラム瓦版 vol. 21
                             2011/01/31
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映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイ
ト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。
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◎今日が命日:サミュエル・ゴールドウィン(John Belushi)

 ハリウッド黄金時代の大プロデューサー。1879年8月17日にポーランドの
ワルシャワでユダヤ人の家に生また。11歳で家を飛び出すまでは給仕として
働き、イギリスの親戚宅では鍛冶屋の助手、15歳でアメリカに渡ってからは
手袋工場で働く。1913年にジェス・ラスキーやセシル・B・デミルと共に、
ラスキー・フィーチャー・プレイズ(パラマウント映画の前身)を設立。
1916年にゴールドウィン映画に移籍し、名前もそれまでのゴールドフィッシ
ュからゴールドウィンに改めた。ゴールドウィン社は1924年に他の2社と合
併してMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)になるが、その頃ゴール
ドウィン自身は既に同社を退きフリーのプロデューサーになっていた。自分の
スタジオと専属スターを持つゴールドウィンは、この後1950年代まで活躍。
代表作は『嵐が丘』(1939)、『打撃王』(1942)、『我らの生涯最良の
年』(1946)、『虹を掴む男』(1947)、『野郎どもと女たち』(1955)
など多数。遺作は『ポーギーとベス』(1959)。1974年1月31日死去。息
子のサミュエル・ゴールドウィン・Jr.は映画プロデューサー。孫のジョン・
ゴールドウィンもプロデューサー。もうひとりの孫であるトニー・ゴールドウ
ィンは俳優兼監督になっている。

参考文献「映画のタイクーン」フレンチ著/栗山富夫訳/みすず書房 など

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◎映画コラム:東京名画座ガイド

僕の映画的素養を作ってくれた今はなき名画座たち

 名画座は現在も都内で何館かが昔ながらの形で営業していますし、旧作映画
を中心に上映する新しいタイプの名画座もあります。しかし僕が名画座と言っ
て思い出すのは、今から10数年前に通い詰めた昔ながらの名画座です。しか
しその多くは閉館し、今は名残もありません。同じ時期に映画を観ていた人な
らみんな知っている、昔懐かしい名画座を紹介したいと思います。

▽銀座・並木座

 年配の映画ファンならみんな知っている、老舗の名画座です。銀座プランタ
ンの裏あたりにありました。オープンしたのは1953年だそうですが、僕が通
い始めたのはもう平成になってからです。閉館は1998年(平成10年)ですか
ら、僕とこの映画館とのつきあいは10年に満たないものです。僕が通ってい
た頃のこの映画館は、監督特集が定番の番組でした。黒澤明、木下惠介、小津
安二郎、成瀬巳喜男などの主要な作品を、僕はこの映画館で観ています。あと
はどういうわけか推理映画の特集が定期的に組まれて、松本清張原作の「黒い
画集」シリーズの「あるサラリーマンの証言」や「ある遭難」をここで観まし
た。「あるサラリーマンの証言」はいい映画で、後から原作も読みましたが映
画の方が上です。「張込み」や「砂の器」もここで観ていますが、「砂の器」
はそれ以前にテレビかどこかで観ていたかもしれません。

 この映画館で上映されると必ず足を運んだのが、川島雄三の「しとやかな
獣」。名作と言われる「幕末太陽伝」もここで観ましたが、「しとやかな獣」
の方が僕の好みです。登場人物が全員悪党というのがいいのです。他に思い出
の作品というと浦山桐郎の「私が棄てた女」。僕がこの映画館を最後に訪ねた
のは、閉館直前の木下惠介特集だったはずです。ちょうど台風の日で側溝から
は水があふれ出し、地下の劇場につながる階段にざぶざぶ流れ込んでいました。
当然その日の上映は中止。結局この日が、最後の並木座でした。

 ここも建物老朽化というのが閉館の理由とされていましたが、閉館後は新し
いテナントとして飲食店などが入ってビルはそのまま。結局何らかの事情があ
って、映画館が追い出された形になったのでしょう。平日でも館内はいつもほ
どほどの入りでしたし、番組によっては立ち見の客でぎっしり埋まるような映
画館だっただけに、閉館はとても残念に思いました。黒澤・木下・小津・成瀬
・溝口などの名作を2本立てでいつも上映している映画館が銀座にあるという
のが、いかに贅沢なことだったことか……。よそ行きのおしゃれをした年配の
カップル客(老夫婦)も多かったのですが、たぶんこの映画館で懐かしの映画
を観た後、銀ブラを楽しみ、外食でもして帰るのでしょう。

 僕は今でも、銀座には往年の名画をリーズナブルな価格で上映する映画館が
あるべきだと考えています。並木座は天井も低くて、客席も100に満たない小
さな映画館でした。これぐらいの小さな小屋なら、デパートのテナントにでも
入れるでしょう。銀座とその周辺には、東宝・松竹・東映など、日本映画大手
の本社もあるのです。こうした映画会社が協力してくれる形で、古い映画をフ
ィルムで上映する環境があると嬉しいんだけどなぁ……。銀座シネパトスが時
々古い日本映画の特集をやっていますが、並木座のように超定番の監督や作品
だけを飽きることなくグルグル回転させ続けている場所がほしいのです。

▽大井武蔵野館

 大井町にあった映画館。並木座閉館の翌年、1999年に閉館しました。ここ
も閉館直前の何年間かに通っていましたが、その頃は「ジャパニーズ・カルト
ムービー専門館」の様相をていしていました。石井輝男の諸作品を観たのがこ
こですが、他にも東宝のミュージカル映画「嵐を呼ぶ楽団」や「君も出世がで
きる」を観ましたし、クレージー・キャッツの映画もここで観ていたはず。戦
前の時代劇映画なども上映していました。並木座が名作路線だとすると、ここ
は大衆向けのキワモノ路線みたいなところがあって、それがじつによかった。
大井町には毎週のように足を運んでいた時期がありますが、この映画館が閉館
してから、大井町には滅多に足を運ばなくなりました。

 武蔵野興業系の名画座では、自由が丘武蔵野館もマニアックなセレクション
でファンを引き寄せていましたが、僕はそちらにはあまり……。僕が時々足を
運んだのは中野武蔵野ホール。どの映画館も今はありません。

▽新宿昭和館

 新宿の三越裏にあった日本映画専門館ですが、むしろ東映やくざ映画と任侠
映画の専門館といった雰囲気でした。2002年に建物老朽化により閉館。現在
は跡地にK's Cinemaがありますが、こちらはただの単館ミニシアターで昔日
の昭和館の面影はありません。前記した中野武蔵野ホールは一時期「昭和館の
路線を引き継ぐ」と称してやくざ映画や任侠映画に力を入れようとしましたが、
場所柄の問題があって早々に路線変更。新宿昭和館は新宿裏通りの、雑然とし
た盛り場の雰囲気があればこそ、あの路線が成り立っていたような気もします。
僕はこの映画館で「博奕打ち総長賭博」を観ているかな……。他にも何本か観
ていますが、館内の小便くさい便所の臭いなどが、昔ながらの映画館の雰囲気
をぷんぷん漂わせていて味がありました。まさに昭和の映画館。観客も映画フ
ァンの学生などではなく、場外馬券場に出入りするようなおじさんが多かった。
映画館としてどうこうというより、新宿のあの場所を通るといつもやくざ映画
の看板が出ていて……という、風景としての懐かしさを感じます。

▽文芸坐

 池袋にあった名画座です。現在は同じ場所にパチンコ店が作られ、その上階
にテナントとして「新文芸坐」という映画館が入っています。現在は1スクリ
ーンでの営業ですが、かつての「文芸坐」時代は地下劇場の「文芸坐2」や、
演劇も上演する「ル・ピリエ」がありました。文芸坐では封切りからしばらく
たった洋画の2本立て上映(現在の早稲田松竹のような雰囲気)、文芸坐2で
はテーマを決めた作品を日替わり上映していたような記憶があります。旧・文
芸坐が閉館になったのは1997年。僕は最終日最終回の映画を地下の文芸坐2
で観ていた客のひとりだったはずですが、映画館から出てくると、劇場の最後
を惜しむファンたちが人垣となって劇場周辺をぐるりと取り囲み、映画館との
別れを惜しんでいたことを思い出します。映画館の人が出てきて、通行の迷惑
になるので解散してくださいとお願いしていたなぁ……。

 新しくなった新文芸坐には、僕はもうほとんど行っていません。新装オープ
ンしたときにはもうプロになってしまったので、名画座はもちろん映画館にあ
まり足を運ばなくなっていたというのもあります。少し前に時代劇2本立てを
観に久しぶりに行きましたが、場内は以前とは比べものにならないぐらいきれ
いになっていたものの、劇場の醸し出すニオイとでもいうものは昔通り。映画
館というのは運営するスタッフと、お客さんと、街が作るものなのだなぁと思
った次第です。

‥‥‥‥‥‥

 僕が通っていた名画座の多くが、1990年代末に閉館しています。その時点
で一度、名画座文化が途切れたということかもしれません。この頃は単館系の
ミニシアターがたくさんありましたが、それも近年次々に閉館されています。
次回は消えてしまったミニシアターの話でもしましょうかね……。

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◎今週公開の映画

『再会の食卓』 http://bit.ly/emyfzS
『毎日かあさん』 http://bit.ly/i0vPob
『ケータイ刑事 THE MOVIE3』 http://bit.ly/ijU09K

 他の作品は『ウォール・ストリート』『ザ・タウン』『ジーン・ワルツ』な
ど。個人的には『ハイキック・ガール!』でデビューした武田梨奈の第2作
『KG』が気になってます。でも西冬彦が脚本も書いてるんだよな……。

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◎編集後記

 1月になれば仕事が少し楽になって試写にも通えるようになったと思ったの
ですが、手元に試写状がたまるばかりでなかなか消費できないのが心苦しい限
り。そもそもそれほど大量の試写状を受け取っているわけでもないのに。1月
はそれでも劇場と試写を合わせて、1月は現時点で11本の映画を観ました。
2月はもう少し積極的にがんばりたい。

 外出を渋りたくなる理由としては「手元に別の仕事がある」ということの他
に、「寒い」というのがあったりします。なんたる軟弱。でもこの寒さが和ら
げば、次は花粉症のシーズンがやってきて、ますます外出がおっくうに……。

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 映画評サイト「映画瓦版」では試写室や劇場で観た映画1本ずつの感想を掲
載していますが、メルマガでは個々の映画から少し離れて、映画にまつわるさ
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連載し、1つのテーマごとに月1連載になる形式です。(第5週目のコラムに
ついては年4回の掲載となります。)

  ・第1週 いまどきの映画  (最新映画の紹介)
  ・第2週 映画の履歴書   (映画史にまつわるコラム)
  ・第3週 水神森キネマ倶楽部(映画DVDの紹介)
  ・第4週 本棚の映画館   (映画関連本の紹介)
  ・第5週 東京名画座ガイド (映画館案内)

 基本的にすべての映画は「いまこの時」のメディアだと考えているので、映
画史やDVDソフトの話題を取り上げる際にも、常に「いまこの時」の視点を
大切にしてゆくつもりです。

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【発行者について】

服部弘一郎(はっとりこういちろう)

1966年8月3日生まれ。東京都出身。血液型はB型。専門学校桑沢デザイン研
究所を卒業後、グラフィックデザイナーやコピーライターを経て、1997年か
ら映画批評家として活動。95年頃に映画評のホームページ「映画瓦版」を開
設。インターネットの世界では、日本語で読める映画評サイトの草分けだった。
著書に「シネマの宗教美学」など。

  映画瓦版 http://www.eiga-kawaraban.com/
  ブログ  http://hattori.cocolog-nifty.com/
  twitter http://twitter.com/eigakawaraban
  メール  eigakawaraban@gmail.com

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  • 名無しさん2011/02/01

    寒さと、もう飛んでいる花粉に負けずによくがんばってらっしゃいます!