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週刊・映画コラム瓦版

映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。

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映画コラム瓦版 第020号

2011/01/24

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          週刊・映画コラム瓦版 vol. 20
                             2011/01/24
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映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイ
ト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。
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◎今日が誕生日:ジョン・ベルーシ(John Belushi)

 1949年1月24日生まれ。イリノイ州シカゴ出身。学生時代はフットボール
選手として活躍し、卒業後はシカゴの名門コメディ劇団「セカンド・シティ」
に出演。1975年にNBCで「サタデー・ナイト・ライブ」の放送が始まると、
ビル・マーレイやダイ・エイクロイドらと共にオリジナルメンバーとして番組
に参加しカルト的な人気を博す。映画デビューは1978年の『アニマル・ハウ
ス』。翌年にはスピルバーグの大作コメディ『1941』には主演している。代
表作は1980年の『ブルースブラザーズ』。1982年に薬物の過剰摂取で死亡。
享年33歳。俳優のジェームズ・ベルーシは実弟。

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◎映画コラム:本棚の映画館

古典的な映画理論への一般向け入門書
「映画の理論」岩崎昶(岩波新書)

 今年は本格的に映画理論の基礎を勉強しようと思っている。そのための最初
のテキストとして選んだのが、岩崎昶(いわさき・あきら)の「映画の理論」
だ。岩崎昶(1903-1981)は戦前から精力的に執筆活動をしていた映画批評
家だったが、戦後は独立プロの映画製作者として『真空地帯』(1952)や
『ここに泉あり』(1955)などの作品を手がけている。机上で理屈をこね回
すだけではない、実践的な批評家だったのだ。本書は1956年に発行。著者が
これら2本の映画を製作した直後に書かれたものだと思われる。

 映画理論家の今村太平(1911-1986)は著書「映画理論入門」の中で、
『日本の映画理論の開拓者は岩崎昶である。同氏は社会科学の立場から、映画
を理論づけた人として、世界的にも先駆者といえよう』と紹介している。ただ
し『氏の映画論はまだ大系をもつまでにいたっていない』とも言い、『理論を
あみだすのでなく、海外の理論を紹介し、これにもとづいて啓蒙する型である。
この意味で氏は理論家と言うより啓蒙家とよぶのがふさわしい存在である』と
評している。そう言われてみると、なるほどこの「映画の理論」にも、そうし
た啓蒙家としての面が強く出ているように思う。ここでは20世紀初頭から現
代(本書が書かれた1950年代)までの代表的な映画理論家や映画理論が紹介
されているが、そこでは著者の中にある独自の理論というものがセーブされて
いるように見える。文章の端々から著者なりの「映画評価の基準」は見えてく
るのだが、それを声高に叫ぶことはない。

 「映画の理論」は映画と理論の関わりについて簡単に紹介した後、映画の成
り立ちや初期映画史と共に、コンラット・ランゲ、ヒューゴー・ミュンスター
バーグの素朴な映画論を紹介する。その後『羅生門』(1950)や『逢びき』
(1945)など具体的に映画作品を紹介しながら、舞台劇や文学と映画の違い
について具体的に紹介する。ここからV・O・フリーバーグやヴァシェル・リ
ンゼイ、さらにはカニュードの「第七芸術」という概念、ルイ・デリュックの
「フォトジェニー理論」、レオン・ムーシナックなどを経て、1920年代の純
粋映画の実験、そしてプドフキンやエイゼンシュテインのモンタージュ理論へ
とつながっていく。本書の最後はリアリズムと映画についての問いかけで終わ
る。執筆された時期が半世紀以上前ということもあって、「その後はどうなる
の?」という疑問もあるかもしれない。しかし映画の基本的な表現技法はほと
んどが1950年代には完成してしまっているので、実践的な映画理論としては
この映画に出てくるもので十分なのだ。

 この本から漏れているこれ以降の主な映画理論としては、1950年代にフラ
ンスで創刊された映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」が提唱した作家主義や、
文学批評(文学理論)の方法論を援用した映画批評、記号論による分析などが
あるが、これらは作られた映画をどう分析して論じるかという話になっている。
初期の映画理論が表現技法の進化と二人三脚で映画そのものを刺激していた時
代は終わり、映画製作と映画理論はそれぞれ専業化されて密接な関係性を失っ
てしまっている。映画理論はかつて映画製作をリードし、映画の未来を指し示
す羅針盤のような役目を担っていたのだが、1950年代以降は技術や表現が先
行して、映画理論がそれを後追いする形になったのかもしれない。

 映画製作者でもある岩崎昶の「映画の理論」は、映画理論と映画製作がまだ
親しく手を取り合えると信じられていた時代に書かれた映画理論の解説書だ。
何しろ半世紀以上前に書かれた本だから、今となっては時代を感じさせる記述
や表現が古めかしさを感じさせる部分はもちろんある。(著者の左翼的な立場
がその最たるものかもしれない。)しかし文体そのものに古めかしさはあまり
ないし、難しい漢字が頻発してひっかかることもない。僕はこの本の前にベラ
・バラージュの「映画の理論」を読んだがチンプンカンプンで、今村太平の
「映画理論入門」も文体の硬さに難儀した。それらに比べると、岩崎昶の「映
画の理論」はじつに読みやすい。映画理論に興味のある人が、とりあえず一番
最初に手に取る本としては悪くないと思う。

「映画の理論」 http://amzn.to/fHJBza
 絶版の本なので新品では手に入らないが、アマゾンのマーケットプレイスな
ら1円から入手可能。ただし送料が250円かかる。

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◎今週公開の映画

『ブローン・アパート』 http://bit.ly/huHit8
『ワラライフ!!』 http://bit.ly/f1MMBg

 今週は『GANTZ』や『Red』が売れ筋作品かな。あるいは『白夜行』とか。
でもリバイバル公開される『ポンヌフの恋人』が気になったりしてます。

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◎編集後記

 映画理論にしろ映画史にしろ、ちゃんと勉強するにはノートを作らなければ
と思い、年明けにわざわざそれ用のノートを作りました。でもまだ何も書いて
ません。道具だけ揃えても、実際に行動しなきゃ意味ないっての!

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 映画評サイト「映画瓦版」では試写室や劇場で観た映画1本ずつの感想を掲
載していますが、メルマガでは個々の映画から少し離れて、映画にまつわるさ
まざまなコラムを掲載していこうと考えています。5つのテーマを週替わりで
連載し、1つのテーマごとに月1連載になる形式です。(第5週目のコラムに
ついては年4回の掲載となります。)

  ・第1週 いまどきの映画  (最新映画の紹介)
  ・第2週 映画の履歴書   (映画史にまつわるコラム)
  ・第3週 水神森キネマ倶楽部(映画DVDの紹介)
  ・第4週 本棚の映画館   (映画関連本の紹介)
  ・第5週 東京名画座ガイド (映画館案内)

 基本的にすべての映画は「いまこの時」のメディアだと考えているので、映
画史やDVDソフトの話題を取り上げる際にも、常に「いまこの時」の視点を
大切にしてゆくつもりです。

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【発行者について】

服部弘一郎(はっとりこういちろう)

1966年8月3日生まれ。東京都出身。血液型はB型。専門学校桑沢デザイン研
究所を卒業後、グラフィックデザイナーやコピーライターを経て、1997年か
ら映画批評家として活動。95年頃に映画評のホームページ「映画瓦版」を開
設。インターネットの世界では、日本語で読める映画評サイトの草分けだった。
著書に「シネマの宗教美学」など。

  映画瓦版 http://www.eiga-kawaraban.com/
  ブログ  http://hattori.cocolog-nifty.com/
  twitter http://twitter.com/eigakawaraban
  メール  eigakawaraban@gmail.com

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創刊日:2000-08-28  
最終発行日:  
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