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週刊・映画コラム瓦版

映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。

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映画コラム瓦版 第010号

2010/11/08

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          週刊・映画コラム瓦版 vol. 10
                             2010/11/08
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映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイ
ト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。
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◎映画コラム:映画の履歴書

映画はどこから来てどこに向かうのか?

 映画にはおよそ110年の歴史があるが、それのうち最初の100年ほどは4つ
の段階に区分することができる。それは発展期・黄金期・衰退期・再生期だ。

1.映画の「発展期」は映画が生まれた19世紀末から1920年頃まで。エジソ
ンやリュミエールから、映画産業の中心がアメリカ西海岸のハリウッドになる
までだ。この間に映画は海のものとも山のものともつかない珍奇な発明品から、
世界有数の産業へと発展した。

2.映画の「黄金期」は1920年代から1940年代まで。これはハリウッド映
画の黄金時代だ。チャップリンなどが活躍したサイレント映画の最盛期から、
トーキー革命を経て1930年代には映画技法が完成し、やがて映画はカラーに
なる。映画が一般庶民にとって唯一にして最高の娯楽だった時代だ。

3.だが1950年代の衰退期に入ると、映画はテレビ放送に押されて産業規模
を縮小させて行く。映画人口が減り、それに合わせて映画館の数が減り、映画
スタジオは赤字経営に陥って次々に身売り解体された。映画ビジネスとはまる
で関係のない企業が二束三文でスタジオの株を買い占めて経営権を握り、撮影
スタジオを潰して不動産業者にたたき売った。

4.映画の再生期は1980年代から2000年頃まで。映画学校出身の若い映画
監督たちが次々に現れて映画の世界に新風を招き、映画産業の経営は「ビデ
オ」の登場で救われた。観客動員の落ち込みをビデオ販売でカバーするビジネ
スモデルが確立し、度重なる企業買収で映画スタジオは放送局や出版社などの
メディア産業と強く結びついた「メディア複合体」になる。

 歴史について後からあれこれ言うのは簡単で、上記4区分もすべて映画業界
内部の出来事を後から振り返ったことで見えてくる後知恵や後講釈に過ぎない。
問題は映画がこの後どこに向かうかなのだが、それは歴史を振り返っても「後
知恵」として浮かび上がってくるようなものではない。個々の小さな出来事に
ついては参考になる部分があっても(例えば3D映画普及の行方をトーキー映
画やワイドスクリーンの普及と重ね合わせてみるなど)、より大きな歴史の流
れについてはこれから先20年後、30年後になってから「2000年以降は映画
の○○期」という具合に歴史が確定するのだと思う。

 だがひとつだけ個人的な感想を述べるなら、現在の映画業界は「再生」をほ
ぼ果たした後に、テレビと融合して、それまでの映画とは別の何かに生まれ変
わりつつあるような気がする。ハリウッド映画の人気に陰りが見える一方で、
ハリウッド製のテレビドラマはじつに勢いがある。映画芸術科学アカデミーが
選出するアカデミー賞の授賞式より、テレビ芸術科学アカデミーが選出するエ
ミー賞の方がなにかと話題になるのではないだろうか。かつては「映画俳優」
と「テレビ俳優」の間に純然たる区分があって、それはさながら身分制度のよ
うに確固たるものだったのだが、最近のエミー賞では受賞候補になるような作
品にハリウッドの映画スターがぞろぞろ出演しているではないか。テレビシリ
ーズのために、ハリウッド映画と同等かそれ以上の予算をかける作品も増えて
いる。そもそも最近は映画にしろテレビにしろ、最終的に一番稼ぐのはDVDや
Blu-rayなどのソフト販売によるもの。今は映画よりテレビドラマの方が、ハ
リウッド映像産業の中心になりつつあるように思えてならないのだが……。

 こうした事柄についての回答も、やはり20年後や30年後には一定の結論が
出ているだろう。いずれにしても、僕は映画の将来にそう悲観的なわけじゃな
い。映画の技法がテレビドラマに受け継がれて新しい映像表現メディアとして
発達発展していくのなら、それもまた「映画の一種」ではあるはずなのだ。

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◎今週公開の映画

『ふたたび SWING ME AGAIN』 http://bit.ly/cklJ8a
『ラスト・ソルジャー』 http://bit.ly/9y52jM
『442日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍』 http://bit.ly/d1NMnH

 個人的には『442日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍』がお薦めですが、今
週の目玉は『ゴースト もういちど抱きしめたい』なのかもしれません。20年
前の映画と男女を入れ替えたのがアイデア賞で、松嶋菜々子はデミ・ムーアで
はなくパトリック・スウェイジの役です。パトリック・スウェイジは昨年亡く
なっているんだよなぁ……なんてことを考えると、オリジナル版の『ゴースト
/ニューヨークの幻』はずいぶんと昔の映画に思えるなぁ……。

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◎編集後記

 メルマガもある程度は余裕を持ってはじめたつもりが、最近は「来週分」を
編集しては発行予約しているありさま。せめて2週分ぐらいは先回りしておか
ないと、体調でも崩したときにどうする! ……と、ものすごく久しぶりに
39度の熱を出したので考え込んでしまいました。

 元ライブドア社長のホリエモンこと堀江貴文さんの有料メルマガは、購読料
の売上だけで1億円だとか。僕はその金額そのものよりも、発行するためにプ
ロの編集者を介在させているという点に興味があります。

・電子書籍の優等生「メルマガ」の時代が来る
 --堀江氏が語る個人メディアの試み
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 映画評サイト「映画瓦版」では試写室や劇場で観た映画1本ずつの感想を掲
載していますが、メルマガでは個々の映画から少し離れて、映画にまつわるさ
まざまなコラムを掲載していこうと考えています。5つのテーマを週替わりで
連載し、1つのテーマごとに月1連載になる形式です。(第5週目のコラムに
ついては年4回の掲載となります。)

  ・第1週 いまどきの映画  (最新映画の紹介)
  ・第2週 映画の履歴書   (映画史にまつわるコラム)
  ・第3週 水神森キネマ倶楽部(映画DVDの紹介)
  ・第4週 本棚の映画館   (映画関連本の紹介)
  ・第5週 東京名画座ガイド (映画館案内)

 基本的にすべての映画は「いまこの時」のメディアだと考えているので、映
画史やDVDソフトの話題を取り上げる際にも、常に「いまこの時」の視点を
大切にしてゆくつもりです。

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【発行者について】

服部弘一郎(はっとりこういちろう)

1966年8月3日生まれ。東京都出身。血液型はB型。専門学校桑沢デザイン研
究所を卒業後、グラフィックデザイナーやコピーライターを経て、1997年か
ら映画批評家として活動。95年頃に映画評のホームページ「映画瓦版」を開
設。インターネットの世界では、日本語で読める映画評サイトの草分けだった。
著書に「シネマの宗教美学」など。

  映画瓦版 http://www.eiga-kawaraban.com/
  ブログ  http://hattori.cocolog-nifty.com/
  twitter http://twitter.com/eigakawaraban
  メール  eigakawaraban@gmail.com

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創刊日:2000-08-28  
最終発行日:  
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