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週刊・映画コラム瓦版

映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。

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映画コラム瓦版 創刊第3号

2010/09/20

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          週刊・映画コラム瓦版 創刊第3号
                             2010/09/20
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映画批評家・服部弘一郎が編集発行する週刊メールマガジンです。映画評サイ
ト「映画瓦版」では読めないオリジナルの映画コラムを毎週お届けします。
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◎映画コラム:水神森キネマ倶楽部

『アメリカ交響楽』
日本で最初にロードショー公開されたアメリカ映画

 1947年3月25日。有楽町スバル座で日本最初のロードショー公開作品とし
て上映されたのが、ワーナー映画『アメリカ交響楽』だ。入場料は25円。当
時の邦画封切館が入場料10円だったのに比べてかなりの高額だったが、映画
は大ヒットしていきなり10日分の切符が売り切れ、その後も9週間のロング
ラン公開となった。この映画は内容云々を別にしても、「日本最初のロードシ
ョー作品」という点だけで映画史に残る作品なのだ。

 原題は「Rhapsody in Blue」。「ラプソディ・イン・ブルー」や「パリの
アメリカ人」「ポーギーとベス」などで知られるアメリカの作曲家、ジョージ
・ガーシュインの伝記映画だ。少年時代のジョージが楽器店のピアノで独習し、
見栄っ張りの母親が兄のために買い込んだピアノをいきなり弾き始めるオープ
ニングの楽しさ。青年になったジョージが直面する、クラシックのピアニスト
になるか、ポピュラーソングの作曲家になるかという青年時代の葛藤。ブロー
ドウェイの興行主ジョージ・ホワイト、ジャズの王様ポール・ホワイトマン、
人気歌手アル・ジョルスン、親友オスカー・レヴァントたちとの出会い。(し
かもこれを本人たちが演じている。)「スワニー」の大当たりで一躍ヒットメ
ーカーになるエピソードをはじめ、劇中で次々に再現されていくガーシュイン
が手掛けた舞台作品の数々。圧巻は「ポーギーとベス」の初演を再現するシー
ンに、初演のキャストであるアン・ブラウンが「サマータイム」を熱唱するシ
ーンだが、ヘイゼル・スコットがガーシュイン・メドレーをピアノ弾き語りで
歌いまくるシーンも見事。

 僕はガーシュインが大好きなので、この時代の伝記映画の常として内容がか
なりインチキだったとしてもこの映画が大好き。かつて銀座和光の裏にあった
銀座文化(現在のシネスイッチ銀座)でこの映画が上映されるたびに、かなら
ず観に行ったほどだ。IMDbによればガーシュインの伝記映画はこれ1本きり。
楽曲の使用許諾が取りにくいという事情もあったのだろうが、それよりこの
『アメリカ交響楽』があまりにもよくできているので、それと比較されてしま
うのが嫌だったのかもしれない。

 映画の中ではガーシュウィンと女性歌手のロマンスが描かれているが、これ
は映画のためのまったくのオリジナル。ガーシュインにはケイ・スウィフトと
いう女流作曲家の恋人がいたのだが、当時はいろいろと差し障りがあって映画
に登場させることが出来なかった。彼女は年上で子持ちの人妻。要するにふた
りは不倫だったのだ。ガーシュウィンは脳腫瘍が原因で1937年に38歳で早世
したが、恋人のケイ・スウィフトは1993年まで生きて95歳で亡くなった。彼
女は1987年に制作された「George Gershwin Remembered」というテレ
ビドキュメンタリーに、しわしわのおばあちゃんになった姿で登場して恋人ジ
ョージとの思い出を語っている。

『アメリカ交響楽』(1945年)
監督:アーヴィング・ラパー 製作:ジェシー・L・ラスキー
出演:ロバート・アルダ、ジョーン・レスリー、アレクシス・スミス
■allcinema http://bit.ly/aQePMT
■IMDb http://www.imdb.com/title/tt0038026/
■Amazon.co.jp http://amzn.to/9TvurN

 『アメリカ交響楽』はワーナー・ブラザース映画の製作だが、アメリカ本国
でも日本でもワーナーからは公式なDVDが発売されていない。現在日本で発
売されているDVDは著作権の切れたパブリック・ドメインのフィルムから作
られたもので、映画冒頭にあるワーナーのロゴが削除されている。これは書店
やディスカウントショップの500円DVDコーナーで手に入れることが出来る。
僕が持っているのも500円DVD。それしかないのだからしょうがない。

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◎今週公開の映画
『メッセージ そして、愛が残る』 http://bit.ly/bxY4ae
『おにいちゃんのハナビ』 http://bit.ly/ceDKeD
『超強台風』 http://bit.ly/cWm4ql
『TSUNAMI ツナミ』 http://bit.ly/bpLnld

 今週末は『超強台風』(中国)と『TSUNAMI ツナミ』(韓国)で、アジ
ア産ディザスタームービーの一騎打ち? ま、公開規模がまるで違うんで、最
初から勝負になんてなりませんけどね。個人的には『超強台風』がお気に入り。

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◎編集後記
 先週の黒澤明についての記事よりは、ずいぶんと楽に書けたなぁ……という
印象。「水神森キネマ倶楽部」は基本的に自分の好きな映画について書くだけ
だから、調べものの必要もないし、楽だし楽しい。こういう調子ですべての原
稿が書ければいいんですけどね。

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 映画評サイト「映画瓦版」では試写室や劇場で観た映画1本ずつの感想を掲
載していますが、メルマガでは個々の映画から少し離れて、映画にまつわるさ
まざまなコラムを掲載していこうと考えています。5つのテーマを週替わりで
連載し、1つのテーマごとに月1連載になる形式です。(第5週目のコラムに
ついては年4回の掲載となります。)

  ・第1週 いまどきの映画  (最新映画の紹介)
  ・第2週 映画の履歴書   (映画史にまつわるコラム)
  ・第3週 水神森キネマ倶楽部(映画DVDの紹介)
  ・第4週 本棚の映画館   (映画関連本の紹介)
  ・第5週 東京名画座ガイド (映画館案内)

 基本的にすべての映画は「いまこの時」のメディアだと考えているので、映
画史やDVDソフトの話題を取り上げる際にも、常に「いまこの時」の視点を
大切にしてゆくつもりです。

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【発行者について】

服部弘一郎(はっとりこういちろう)

1966年8月3日生まれ。東京都出身。血液型はB型。専門学校桑沢デザイン研
究所を卒業後、グラフィックデザイナーやコピーライターを経て、1997年か
ら映画批評家として活動。95年頃に映画評のホームページ「映画瓦版」を開
設。インターネットの世界では、日本語で読める映画評サイトの草分けだった。
著書に「シネマの宗教美学」など。

  映画瓦版 http://www.eiga-kawaraban.com/
  ブログ  http://hattori.cocolog-nifty.com/
  twitter http://twitter.com/eigakawaraban
  メール  eigakawaraban@gmail.com

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創刊日:2000-08-28  
最終発行日:  
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